第4話

「何、授業中で寝てんだよ。しかも、数学で寝るとか勇気あり過ぎだろ」


食堂でA定食を食べながら、こうたから説教を受ける。


「うるさいなー。アタシだって、寝たくて寝たいわけではないんだよ? こうた君」


「そんな先生っぽく偉そうに言われても困るんだよ。困らせた分ってことで、慰謝料としてミニトマト貰いまーす」


「あああ!」


本当に取りやがったコイツ!


「主役のトンカツを食べなかっただけ、マシだろ」


「アタシはトマトが好きなの! くそー! トマトの仇だ! 勝負しなさい!」


「勝負?」


「そう! 来週の中間テストで勝負よ! 総合点数で勝ったら飲み物おごる!」


「飲み物か……。いいだろう、受けて立つ!」


ふっ、勉強しているフリして、グラビア見ているヤツが、成績が中の上のアタシに勝てるわけがない。


さて、どんな飲み物をおごってもらおうかな〜?


▷▷▷▷


一週間後


「なんでよ!?」


アタシは叫んだ。いきなりの大声に、周りの皆は振り向き、こうたも「静かに」と人差し指を自分の鼻にあてる。


別に注目されたいわけでもないので、アタシは黙って席についた。


しかし、黙ってるわけにもいかなかった。


先ほど、すべてのテストが返され、どちらが点数が上なのかを比べた。


アタシは負けるわけにはいかなかったので、珍しく毎晩勉強し、実際にいつも以上の結果が出た。


テストと同時に返された紙には、それぞれ科目の点数、順位、総合点数と総合順位が載っており、アタシの順位は中の上から上の下まで上がっていた。(点数は恥ずかしくて公開できないが……)


しかし、こいつは、アタシの自己ベストを楽々上回り、全科目含めても現代文での誤字で二点しか減点されなかったのだ……。


総合順位、各科目の順位全てが一位であったのだ。


アタシが叫んだため、「なんだなんだ?」と来た野次馬がその紙を見ると、驚愕と賞賛の言葉があいつを包んだ。


しかし、アタシだけは「怨み・妬み・嫉み」の念を鋭い目つきで送りつけてやった。


「なんだよ? そんなに俺に負けたのが悔しいのかよ?」


「悔しいに決まってんじゃん! 小学生の頃に、勉強するフリして漫画読んでたやつに負けるなんて!」


すると、一瞬で、その場の空気が凍りついた。


いきなりの空気の変化に気づき、アタシはこうたの顔を見る。


こうたの顔は喜怒哀楽いかなる表情もなく、まさに「無」であった。


震えた唇で、こうたは聞いた。


「な、なんで知ってんだよ? そんなこと?」


しまった! こいつには時間旅行タイムリープのことは言っていない!


というか……言ったところで、引かれそうで怖い……。


アタシは「だって、アンタみたいなタイプは、だいたいそういうことしてるかなと思ったんだよ」と言い訳しといた。


こうたも「お前、そんなこと分かるのかよ……。人のこと分からないやつだと思ってたよ」と納得して……ついでに、酷いこと言いやがった!


それは置いておくと、こうたの発言からして、アタシが時間旅行タイムリープをしていたことが証明された。


しかし、なんで時間旅行タイムリープの度にこうたに出会うんだ?


やっぱり、こうたと関わったことが原因なのかな?


そういう風に考え込んでいたら、肩を叩かれた。


振り向くと、こうたが立ちながら、さっきの凍りついた表情が吹き飛ばされ、ニヤニヤしていた。


一体、どうしたんだ?


こうたは言った。上から目線で。腹立つ顔で。


「忘れてないかぁ? 飲み物奢ってくれよぉ」


あっ、すっかり忘れてた……。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る