第20話 真の王

『タケ 魔法炉はキミに託す。

 多くの犠牲のもとに完成した魔法炉だ、魔石を流し続ければ半永久的に魔法力を放ち続けるはずだ。

 僕を刺したことは気にしないでほしい。

 こうなることを望んだのは僕自身だ。

 なにより、僕は余りに多くの人の命を奪い過ぎた。

 魔法炉は良い方向へ使えば、かならず人類の宝となり得るものだ。

 僕はそう信じて、研究を重ね、実験を繰り返した。

 どこかで…罪の意識が薄れていくのを感じていたよ。

 悪人だから…罪人だから…そう言い聞かせながら…でも、たぶん違うな。

 僕のような中途半端な才能を持つものが、いかに辛いことか?解るかい?

 村でも…城でも…僕は、何も出来ないままだった。

 いっそ何の力もないほうが幸せだったように思う。

 そうすれば、タケ、キミと一緒に村で暮らせたのかも。


 キミは、多くの犠牲のうえで、僕たちの屍の上に立て。

 それが…僕を殺したキミの罪だ。


 そして…魔法炉を正しく使ってくれ。

 真の王になれ。』


 手紙にはそう書かれていた。


「バカが…真の王?俺が?……自分で目指せなかったのかよ…一緒に目指せなかったのかよ…バカが!」

(頭ばっかりで考えるから……でも…お前が、俺の最高の友達だったよ…ユキ)



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