第19話 完全なる魔法炉

「ユキは死んでるよ…お前が殺した」

 タケは黙ってユキを見ている。


「魔法炉は…不完全だったんだ。ユキは完全な魔法炉を造りだすために……ゴーレムもゾンビも…その経過で産まれた副産物だったようだな」

「だからといって…許されることではない」

「そうだ…ユキ自身、解っていたのさ…だから託したんだろお前に…」

「俺は……こんなモノ要らなかったよ…ただの友達として、ユキと…それだけでよかったんだ…」

 タケの目には涙が溢れている。


 アキの話では、魔法炉を永久機関として維持するためには、魔法力を秘めた魔石、そして魔法力を引き出せる媒体としての人間を永遠に与え続けなければならない。

 ユキは不死化の研究の限界を悟ったときに、このシナリオを描いた。

 自らの身体を魔石化して魔力を取り込み続け、同時に放出し続ける生物の特性を鉱物の特性を併せ持つ、そんな姿を目指した…何体ものゴーレム・あまたのゾンビはそのための実験に使われた。

 有機物と無機物の合成と調整には魔剣『マジックキャンセラー』が必要であった。

 魔力を封じ込め、且つ、放出する奇跡の魔剣。

 ユキは自身が魔石化するのを待っていたのだ。

 魔石化が徐々に始まると、タケの元を離れ……アキに会いに来たのだそうだ。


 話し終わるとアキは部屋を後にした……。

 タケにユキから預かった手紙を渡して。


 タケは一人残された部屋で、ユキの手紙を読む……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る