勘違い男子【H】の場合
最後の彼氏
この春、ヒナも高校3年生になった。
男運の悪さは相変わらず。
その後もヒナから好きになったことは無いらしく「告白されてもすぐに振られる」と自信をなくしていた時期もあったが、元来ポジティブなため今では開き直っているようにも見える。
ただ、告白されると相手を好きになる性格も変わらないようで……。
兄であり父親である兄2人としては、まだまだ頭を悩ませている───。
◇◆◇◆
──チリリン♪
「いらっしゃい、ま せ」
可愛らしい笑顔で出迎えた女性店員が思わず動揺で声を詰まらせる。
同時に、土曜の午後3時、カフェ店内の9割を占める女性客の視線が入口の2人の男性に一点集中した。
「ヒナ、どこかな?」
「捜すのはヒナタだけじゃないぞ」
「わかってるよ」
ちょうどお店の中心にあるテーブルに通されたキョウスケとアオイは、周りからの熱い視線も特に気にすることなくヒナタと〝ある人物〟を捜していた。
・
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『ヒナ、最近カフェのバイトはどう?』
『ん~覚えることありすぎて大変だけど楽しいよ。お兄ちゃん達も来てくれればいいのに』
『今のヒナのシフトだと仕事と重なってなかなか……ね、兄貴?』
『そうだな』
『ま、誰かにイジめられてたりしたら飛んでいくけどさ』
『ふふ、みんないい人だよ。オーナーは頼れるおじさまって感じだし、チーフは美人でカッコいいし、先輩も可愛くて丁寧に教えてくれるし、優しい彼氏もいるし、あと───』
『待て』
『彼氏?! できたのか?!』
『? うん。言ってなかったっけ』
『聞いてない』
『お店の先輩で、このまえ告白されて付き合うことになったの。アオイお兄ちゃんと同い年だよ』
『お店の』
『先輩……』
『そう。お店には内緒だけど、こっそりシフト合わせたりしてるんだー』
『………………ヒナタ、次の出勤はいつだ?』
・
・
・
「お兄ちゃん! 来てくれたんだ」
オーダーを済ませたころ、奥の方にいたヒナタが2人に気付き最高の笑顔で駆け寄ってくる。
ストライプのベレー帽に太めのタイとサロンエプロンのユニフォームは、ヒナタの可愛さをより一層引き立たせていた。
キョウスケとアオイの顔も思わずほころぶ。
しかし、今日はヒナタのユニフォーム姿だけを見に来たわけではない。
「ヒナ、ちなみに彼はどの人?」
「いるんだろう?」
少し頬を赤らめながら教えてくれたのは、今まさに爽やかな笑顔で接客をしている男性だった。
「内緒だからね」と念を押してからヒナタもすぐに接客に戻っていく。
頼んだコーヒーをすすりながら、無表情のキョウスケがアオイに目線だけを向けた。
「…アオイ、どうだ?」
「うーん、アウト」
「理由は」
「遊んでそうな顔してるでしょ、どう見ても」
接客と言えばそうなのだろうが、女性客と楽しく話している彼を2人の視線が追いかける。
時折女性客からこっそり受け取っている小さな紙は、彼女たちの連絡先などではないと信じたい。
「……恐らく今回もお前の勘は的中だな」
「はぁ……。いつになったらヒナに誠実な王子様が現れるのかな」
◇◆◇◆
「あれって、ヒナちゃんのお兄さんなんだって?」
「あ、ハヤト君。そうなの様子見に来てくれたみたいで」
「さっきから視線を感じるんだけど……」
「ハヤト君と付き合ってること言ってあるからかも」
「そうなんだ。でも本当、2人とも整った顔してるよな。特に左の人はヒナちゃんに似てて綺麗だし」
「アオイお兄ちゃん? かっこいいだけじゃなくてすごく優しいんだよ」
「ふ~ん。アオイ、サンね」
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