知らぬ→ギルドとか、個性に欠けてるよな!

 「ほんでじゃ、ギルドに連れて行こうとおみょう」

 「おみょう? 誰を?」

 「うみゅ、思う………と言った。カナタをにゃ」

 「にゃ? カナタって俺?」

 「しつこいぞ、顔もキモい! にやけりゅなっ!!」


 「読者も飽きるぞ」とか言いながら、テーブルクロスを振り回すメレディス。この年頃は素直過ぎるから恐いぜ、キモいとか言われた日には、卒倒そっとうしかねないね。今言われたけど。卒倒しようかな。


 「言いたいだけじゃりょ、そっちょ――むぐっ」


 噛んでるしよォ、幼女神ようがみさまのお言葉をまともに聞けた事なんか無い気もするが、勘違いだと自己完結じこかんけつしておこう。

つか読者って何? オレハシラナイネ。ナンダロウネ。


 「100V行った位で調子に乗りゅな。作家気取りしてても、十話で百ビューと言う現実は変えられんじょ」

 「お前もう黙れよ!? つか、ギルドから離れすぎだろ!?」


 三千里は離れたと思う。母を訪ねないと辿たどり着けない所まで来てるよ。

 メレディスはわざと話を逸らしたらしく、それまで切っていた爪を片付けながらもしょもしょと喋り出した。そこまでして現実を突き付けたかったのか。いや、誰とは言わないけどな。


 「ギルドは、ここから南に行った街にありゅ」


 捨てるのがもったいない程に宝石然ほうせきぜんとした爪のひとつひとつが、大口を開けたゴミ箱の中へと吸い込まれていく。今更ながら、帰宅した俺達は食後、旅の話から伸びた未来について意見を交わしていた。

 まあ、本当は一方的にギルドを紹介されて、木こりを目指すと宣言した本人の意見はなみを越す引力に呑み込まれていっただけなんだけどな。


 「何が木こりじゃ、カナタの意見がしっかりしとったりゃ、受け入れてもいと考えておったのに」

 「へっ、木こりが俺の限界だからな」

 「一生鉄のおのでも振っとれ」


 皮肉ひにくに皮肉が被さった所で、メレディスから詳細が話された。


 「記憶の代わりとして、カナタには【知識】を残しておいたかりゃの。

 ――分かると思うが、ギルドとはっ。世の冒険者が集い、互いに切磋琢磨せっさたくみゃする場所の事じゃ。個人に見合った仕事クエストを探し、個人に見合った仲間をつくろう。

 言わば社会の縮図でありゅから、適応力ゼロのお主にはぴったりじゃの。

 生活費も稼げるし、高額な狩猟クエストを達成たっしぇいすれば趣味にちゅかう金も手に入る。正にカナタ向けの職業じゃと思うぞ」


 分かりやすいな、と正直に思った。お言葉噛み噛みで聞きにくいけど。

 要するに、俺に合ってんのな、冒険者とやらが。


 「あにょジャッカ・ロープ一匹でも、我含むメレディス家の1日の食品がまかなえるんじゃ。ひのき棒があれば安全じゃし、防具も直ぐに買い揃えられりゅじゃろう。プクク」


 無邪気を絵に描くと、こんな顔になりそうな位可愛らしい笑顔を散布いたメレディスだったが、こいつは知らない。


 「あのさ、メレディス」

 「にゃんじゃ、カナタ」


 察しが効かない心中を怪しく思ったのか、正面から俺と向き合うメレディス。


 「俺がダンジョンに潜った理由は、分かってるよな?」

 「我の服を買うためじゃ。実にカナタらしいの」

 「んじゃあ、俺がクエストを受けて、金持ちになったら、どうなると思う?」


 当たり前だが、メレディスに服を買ったりはしない。私欲に走り、みにくく汚れた【人間】に成り下がるのがオチだろう。

 無論、こいつも分かっていた。考え込む間さえ要らないといった様子で、


 「その時は、我がカナタを殺す。自覚していりゅ内は安全にゃ筈にゃが」


 また一コ上の反応を見せてくれた。本当に殺せるんだろうな、仲が良いと思ってる俺でも。問答無用で。

 だから俺は、全力でその一コ下を攻めた。


 「じゃあ、最強の木の実拾いでも始めようかな」

 「ひのき棒の持ち腐れじゃにゃ」

 「にゃーにゃーばっかり言ってるよな、メレディス」

 「しょうがにゃい――っ!? もうっ、五月蝿うるさいっ!!」


 頭をぽかぽか叩かれる。微妙な心地よさを感じたんだけど、Mに目覚めた訳じゃあない事を分かって欲しい。俺はロリコンじゃねえし、Mでもないぜ。

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