戸惑い、苦しみ、生き抜いてしまった、斎藤一の物語

寡黙。左利き。無敵の剣。多重間者。
巷に溢れる「斎藤一」のイメージをあますところなく盛り込んで、それでいてハッとさせれる「斎藤一」像を見せつけてくれる。
他にも「伊東甲子太郎」「松平容保」等々、新撰組に関わる面々を、美しい文章で描かれた物語です。


個人的には、多重間者としての「斎藤一」像を新しく見た気分。ものすごい大物が親分として出てきてくれました。

その彼が「色気が駄々漏れ」と言った以降、涙が止まらなくなっちゃった。
人を斬ること、欺くこと、己の道を貫くこと、あらゆる面において悩みが底抜けしてしまった斎藤一の苦しみが、胸を押してくるから。
最後、ズルいなぁ。あんな言われたら、立ち直れない。
史実を知る私たちは「斎藤一」の行く末を知っているけれど、この物語の斎藤一にも救いが訪れてほしいと祈ります。



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