第9話

 女子更衣室にて。私は一旦、蒼佑のことを忘れて、いろんな意味で絶望モードに入った。

「はあ~あ」

 知れず、ため息が出る。隣のロッカーを開けてる波が、

「どうしたの?」

「いあいあ。ブラ率高くなったなあって、改めて」

「そっちかい」

「だよ」

 Tシャツ脱ぐのが、急に恥ずかしくなってきた。この場だと、フロント二重のキャミとか。お子さまを主張してるだけのような気がする。――考えすぎ?

 考えすぎ。と、出来の良くない頭が結論を下したので、やっぱりあきらめは早い私は、さささっと水着に着替えた。ちらっと、隣の波を見る。

 ――無いわ~。

 いや、胸があるのが無いわ~、なのね? 回りくどく考えつつ、自らの水着姿を、見られる範囲で見てみる。

 ――無いわ~。これは無いわ~。

 ぺったんこ。くびれてない。オマケとしておしりちっちゃい。もっかいため息が出る。

(蒼佑も。いつかはきっと、女の子の身体になりたいんだよね?)

 乏しい知識で問いかけ。だろうなあ、たぶんだけどね。

 更衣室ではなんにも答えが出せそうにないので。せめて授業には遅れないようにと、今日もまた波に引っ張られるように、プールサイドへ急いだ。そう。今は私のことなんかじゃなくて、蒼佑のことだよ、うん。

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