第8話

「はーい。じゃあ、男子も女子も着替えて。プールサイドに集合ね。見学の人は、連絡帳見せに来ること。いい?」

 担任の畑山(はたけやま)先生が、ざわついてる教室で、大声で言った。ちなみに、年齢を聞いたところ、視線で瞬殺されたらしい。との、もっぱらのウワサ。先生だけど、女性は女性だ。

『はーい』

 さすがプール初日。朝から半べそレベルに暑いのも手伝って、大半の子は喜んでる。うんざりした表情なのは、体育って言うか水泳が苦手な、私みたいな子だけ。

 はー。と、ため息ついて。私はプールバッグ片手に、更衣室に向かおうとした。んだけど。

 蒼佑が、椅子に座ったまま。そこに波が話しかけようとしてるのが、目の端っこに入ったの。

(見学。かな)

 私も気になって、蒼佑の席に向かう。

「大丈夫? じゃないよね……」

 顔色が悪い蒼佑は、おびえる小動物のような目で、私を見た。

「うん。『絶対にサボるのは許さない』、って……」

 蒼佑のご両親は、厚生なんとか省のえらーい人。そんな人から言われてたら、お気楽な私だって、顔が青ざめてくると思う。

「書いてもらってない?」

「うん……」

 連絡帳に欠席する理由と、サインがなければ。基本、授業は抜けられない。

「急に、おなかがいたた、なことにしちゃう?」

 私は言ったけど、

「バレたら」

「そっか。そうだね」

提案を引っ込めた。

「行くよ。プール」

 言葉は力強かったけど、蒼佑、今にも倒れそう。波と私は、できるだけ力になろうって。目で語ってうなずき合った。

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