(20)クリスマスプレゼント

 クリスマスの朝。

 何やら四角く大きな板のようなものを抱えてみづきさんはやってきた。

「それってクリスマスプレゼント?」

 訊くと浮かない顔をして頷く。

 ――確かみづきさんがお願いしたクリスマスプレゼントってDSだったと思うのだけど、

「朝起きたらこれが枕元にあったのだ」

 みづきさんが差し出したのは、

「……図鑑、だね」

 子ども向けの昆虫図鑑。

 すっかりしょげきった顔をして、みづきさんはぼそぼそと言った。

「DSをお願いしていたのに、女官長のちょうがサンタさんにそうだ。ゲームなどを買い与えるのではなく図鑑に、と」

「あー…… ね」

 ぼくも経験あるなあ……。

 ゲームソフトを頼んだのに、枕元に置いてあったのは文房具とか辞書とかさ。

 ていうか、サンタさんにのか、女官長さん……。

「まあ、サンタさんはまた来年もきっと来るからさ、今度はお願いしたものを貰えるように、頑張ろう? ね?」

「……そうだな」


 女官長さんの目の黒いうちは何となく無理そうな気がするけど、というのは伏せて、ぼくはみづきさんの頭を撫でた。

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