(6)異境の風習

 みづきさんと買い物に出かけた。

 帰る頃にはすっかり日が暮れて、大通りには明かりが点る。

 ショーウィンドウはどこもかしこも早々にクリスマスな飾り付けで、傍らのみづきさんはそれらを見ながら黙って歩いていた。

 ぼくは落ち着かない気持ちでそんなみづきさんをちらりちらりと見る――だってみづきさん、市杵嶋姫命という日本の神様に仕える女官候補だし、クリスマスのイルミネーションなんてきっと不愉快以外の何物でもないんじゃあないのかなって――

「おい、仙太郎」

「え、あ、はい」

 突然、声を掛けられてびくっと肩を震わせる。

 振り向いたみづきさんは、眉間に皺を寄せていて、殊更に低くトーンを落とした声で言った。

「DSが欲しいんだが、サンタさんにはどうやって連絡を付ければよいのだ?」

 ……誰だよ。宗像三女神の一柱、市杵嶋姫命が寵愛する女官候補に異境の風習吹きこんだのは。

「え、と、ぼ、ぼくが電話しとくよ」


 これでいいのかわからないけれど、とりあえず今日も平和みたいです。

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