間話としての、僕の夢の話

   当時、僕は高校一年生だった。

   血気多感なお年頃だったし、おそらく多くの人がそうであったと思う。

   僕も無論その一人だ。多くのことに関心と興味を示し、それを誰にも気づかれ

  ぬようこっそりと生活していた。

   そんな僕は、時々夢を見た。

   もちろん、時々、という表現は間違っている。僕は記憶にないだけで、多くの

  夢を睡眠中に見ている。だけれど、そんなもの内容を覚えていなければ見てい

  ないも同然だ。

   だから、「時々」であっている。

   そんな僕がよく見た夢は、とにかく声を上げなければいけない状況に追い詰め

  られる夢だ。僕は強盗や警察だとか、あとは知り合いだとかに、とにかく追い詰

  められてしまう。身体的な拘束にあっていて、逃げ出すことは出来ない。で、す

  ぐさま大声をあげてSOSを誰かしらに伝えなければならないのだが、思うよう

  に声が出すことができない。そのことに気づき、驚いた僕は、必死に声をだそう

  ともがき苦しむ。

   そして大抵、リアルな人体が発声してしまい、自分の声にびっくりして起きて

  しまう、というのが僕の大体の朝の目覚め方だ。



   おそらく、「声」というのは僕の象徴であるのだ。僕は声のボリュームだとか

  を自分自身が存在できる唯一の武器であると考えているのだ。きっとそうに違い

  ない。


  それに気づいたのは、もっと後の話だったのだが。


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