第五夜 キャンプに悪魔がやってくる

ガタガタガタ・・・ボクとアリスがワープの出口となるゲートとして抜け出てきたのは、サマーキャンプ場のトイレの便器だった。


「何も便器から便器へワープすることはないだろうがッ!」

帰りは絶対に電車で帰ろうと、今からかたく心に誓っておく!


「予め定められた宇宙の法則があるので、座標は選べないんですよぉ~★」


「本当かよ!」

どうにも信じ難い。まさか騙されてるんじゃないだろうか。

とりあえず、潔癖性なボクはしっかり満遍なく手を洗った。


「コラーっ!手を洗わずに行くんじゃない!一緒に洗うの!」

スタスタと行こうとするアリスの首根っこをふん捕まえると、一緒に手を洗わせた。


「手を洗うのなんて30年振りくらいです☆」


「汚ないな!」


「悪魔は汚れたりしないんですよ~」


まぁそういうものなのかも知れない。確かに綺麗好きな悪魔ってのも聞いたことがない。


「汚れていちいち風呂に入る悪魔なんて想像出来ないもんな。」


「お風呂は大好きですよ♪」


「入るのかよ!」


「魔宮の湯船はプールくらい広いですから楽しいんです☆」


「ウチはウサギ小屋の湯船ですみませんね」


「最初、サタン様のトイレかと思いました★」


「サタン様どんだけケツデカいんだよ!」


「大きくて怖い方ですから~」


ヤバいな。コイツと盟約を結んだら、やっぱりボクは地獄行きなのかなぁ?


2人が手を洗い終わったところに、一般の女性客が入ってきて、黒ゴスロリ姿のアリスとボクを見ると、吃驚して悲鳴を上げた。


「すみません、この子ひとりでトイレ入れないもんで~」

どんだけ甘えっ子だよ!ボクたちは慌ててトイレから逃げ出した。

まったく、せめて女子トイレじゃなく、男子トイレにしてほしかった。




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