『時空ワルツ』

新庄直行

第零話(自称)時の王子様?

 急に呼ばれた気がして目が覚めた。すると目の前には、タキシードを着た見知らぬ美男子がいた。風貌が若かれし頃のジョニー・デップさんに似た彼に「誰なの?」と問いかけると私と同い年ぐらいの彼は自らを「時の王子様です」と言い私のことを"お嬢さん" と呼んだ。そして私は彼にそっと手を引かれた。

 彼が自分の部屋のドアを開けると、そこは全く違う空間になっていた。普段は、廊下なのにこんなことあり得るの?と私は不思議に思った。白い空間に大きな円形のアナログ時計がいくつも並んで浮かんでいる。その時計は針とふち、数字が藍色で文字盤がなく、白い空間が文字盤の役割を果たしていた。全ての時計が世話しなく、回っている。

「ここは、どこなの?」と尋ねると、彼は「ここは、時空間です」と答え「一緒に踊りませんか?」と誘ってきた。しかし私は着なり着のままにこの彼が言う"時空間"に来た為、何も用意をしていなかった。しかし彼は「既に用意は出来ていますよ」と私にそっと語りかけた。私は自分の姿を見る。すると、驚いたことにパジャマだったはずが綺麗な水玉模様のドレスに代わっていた。そして、何処どこからとなく彼は透明な靴を出し、私に履かせてくれた。その靴は驚いた事に私の足にぴったりのサイズだった。"まるでシンデレラの物語のよう"と私は思った。

 いよいよ、二人だけの舞踏会ぶとうかいが始まる。どこからとなく、ワルツの曲が流れ始める。私は踊れないのに何故か体が覚えているかのように踊れる。時空間である白い空間が四季折々の風景に替わっていく。そして、あっという間に時間は過ぎていった。曲が終わると共に二人だけの舞踏会は終わった。空間が白い空間に戻る。最後に彼は「また、いつの日か会えるといいですね」言った。お互いに手を振る中、私はドアをそっと閉じた―。

 私は窓から入る太陽の眩しい光で目を覚ました。起きて自分の姿を見ても、あの綺麗なドレスと靴はなくパジャマ姿のままだった。"あれは夢だったのか"と私ははかなく思った。いつものように学校生活が始まる。これから、思わぬ出会いがある事も知らずに…。

                  了

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『時空ワルツ』 新庄直行 @Shin__Nao

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