四天王の中で最弱と言われましても

お茶の。つづく

第一章

プロローグ

 勇者達がモンスターを蹴散らして最深部へと到達する。

 俺はかなり焦っていた。

 予算をぎりぎりまで使って、堅牢な拠点を造り、強めのモンスターも配置したにも関わらず、勇者達は俺の前に姿を現したからだ。

 しかしここで逃げるわけにもいかず、俺は覚悟を決めて勇者達の前に立った。


「俺は魔王軍四天王が一人、ネクロマンサー不死のガスト。ここが貴様等の死に場所になるのだ!」


 俺のセリフに震えあがる勇者達。

 の、はずなのだが、実はこの勇者達とは過去二回戦闘を行っている。

 ちなみに戦闘結果は俺の大敗。

 なので、俺の姿を見ても、勇者達は驚くこともなければ恐れることも無い。


「不死のガスト! そろそろ本当の姿を見せても良いんじゃないの!」

「ククク、貴様等如きこの姿のままでも十分よ」


 女勇者の言葉に対して、俺はもっともらしいセリフを口にするが、勇者達が言うような本当の姿なんてものは無く、見た目はエルフと大差はない。魔族に多い尖った耳に黄色い瞳のただのナイスガイだ。

 しかしこうでも言っておかないと、勇者達になめられてしまうから仕方なく言っている。


「さぁ、我が下僕のアンデッド達よ。この愚か者共を冥府の道連れにしてやるのだ!」


 俺が呪文を唱えると、床からぼこぼことゾンビやグールが現れる。

 アンデッド達は、低い呻き声を上げながら勇者達を取り囲む。

 勇者達は武器を構えてアンデッド達と戦い始めた。


 数分後、俺の召喚したアンデッド部隊は全滅。

 残るは俺一人になってしまった。

 いやだなぁ。戦いたくないなぁ。

 心の中でそう呟いても、もう遅い。

 勇者達はアンデッドをけし掛けた俺に怒りを覚えて、襲い掛かってきた。


「不死のガスト覚悟!」

「ちょっと待って、話し合おう!」


 俺の叫びは勇者達には届くことは無かった。

 勇者の仲間達の攻撃が次々と俺を襲う。


 最初は魔法使いの攻撃魔法だった。

 俺をアンデッド系の魔族だと思い込んでる魔法使いは、炎の魔法で俺の体を焼いた。 熱くて死ぬかと思った。


 次に聖職者が、光の攻撃魔法を唱え俺の体は、激しい光に包まれた。

 聖なる光で浄化したと思った。


 続けざまに剣士が俺の体を切り裂いた。

 痛みでショック死したと思った。


 最後に勇者の剣が俺の胸を貫いた。

 これはさすがに死んだと思った。


 その後も勇者達の攻撃は、休むことなく続き立っていられなくなった俺は、その場で膝をつく。

 俺の魔力供給がなくなると、拠点が崩れるシステムが作動し、地鳴りと共に部屋全体が揺れ始めた。


「ぐはぁ! しかし、ただでは死なぬ……もうすぐこの砦は崩れ落ちる。貴様等も道連れだ……はっはっはっは……がくっ」

「待て! まだ死ぬな! お前には聞きたいことがまだ――!」

「助けに来たぞ勇者! ここは危険ださぁ俺に捕まれ!」


 勇者達の声が聞こえなくなり俺の意識は無くなっていった。

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