女神

女神①


----------------------------- 



 ごめん。


 本当にごめん。


 何度謝っても足りない。



 ごめん。 


 

 本当にありがとう。


 

 小山田。



 今度は、僕がお前を救う番だ。



 だから、もう少しまっていてくれ。


----------------------------- 




 ズブッ!



 ソレは乱暴に引き抜かれる。



 キリトのあどけない顔に冷たい微笑。



 白銀の切っ先が鮮血に染まる。



 俺、腰から脇腹にかけ貫かれて血がばしゃばしゃ。




 小さなキリト。



 その手には、小さな体には持て余すほどに長い剣。





 「マジかよ…」



 意思とは関係なく、体がその場に崩れ落ちる。



 


 『これでお終いよ、イレギュラー』




 キリトの口からその声はあざ笑い、キリトの腕を使って剣を振り下ろした!



 

 ガキィイイン!



 俺の首めがけて振り下ろされた剣が、その寸前で黒い翼に阻まれる!



 

 『何ヲシテイル!!』



 精霊ほどの大きさしかないレヴィが、血塗れた切っ先を全力で阻みながら固まったように動けない烏合の衆に激を飛ばす!




 「キリト! コージ!!」



 ようやく反応したガリィちゃんが、床をける!




 『下衆…が』





 バチン!




 「み"ぎゃあ!?」


 『グッツ!?』



 キリトは、突っ込んできたガリィちゃんを剣で防ぎ同時にレヴィを魔法障壁ではじき床に叩きつける!



 『ふん、邪魔を…』



 構え直される白銀の剣。



 キリトは、俺に止めを刺そうと振りかぶるが______。




 『おや…これは…』



 その視線のに映り込んだ弾き飛ばした漆黒の羽。


 ようやく気がつたというように振り上げたキリトの小さな手が止まり、剣を下すと床に這いつくばるレヴィに伸びる。


   


 『放セッツ!』



 レヴィは身をよじるが、なにやら抵抗できないのか小さな手のひらに捕らわれた。




 『闇の精霊獣…貴女の悪運もこれまでですよ…』



 にぃっと、笑みを浮かべたキリトはレヴィをつかんだまま、口を大きく開けて運ぶ!



 


 まさか!




 今すぐ止めないといけないのに、俺の意識が霞んでいく______不味いこのままじゃ…!



 

 シュパアアアアン!




 その時、まるで鞭で肉を叩くような音がして俺の朦朧とする視界に手の平を抑えるキリトの姿が映り込む!



 

 『ぐっ! 貴様ぁ!』



 

 キリトが憎らし気に視線送った先には、キリちゃん。



 その手には黒い触手のようなものを這わせ、レヴィを優しくからめとる。




 ぱくぱく! 


  ぱくぱくぱく!



 キリちゃんは、レヴィをシーツの懐に押し込みながら何やら怒鳴るように口を動かし腕の触手をキリトに向けて放つ!



 カキィン!


  ガキィン!



 キリトは、迫る触手を手に持っていた白銀の剣で弾き飛ばす!



 『くっ! 完全体であれば!』



 動きにくいとばかりに眉間に皺を寄せたキリトは、一本また一本とうねる触手を狩り飛ばしながら舌打ちをする。



 

 ぱくぱく!



 また、キリちゃんが口を動かすと迫りくる触手がまるで網のように広がり一機にキリトを包囲した!



 

 『おのれ_____!?』



 俺の手が、キリトの足首を掴む。



 『な!? まさか、誘導_____』



 「…キリトからでてけ…クソババァ…!」



 朦朧とする意識の中、俺は脳内のアーカイブからありったけのコードをキリトに流し込むが血液の大半が流れだしているせいで集中力が続かずババァの排除が出来ない!





 『がっ っぐ!』



 それでも、身動きがほとんど取れなくなったキリトは俺を忌々し気に睨みつけかろうじて動く手で剣を突き立てようと震える手で狙いを定め________。



 

 ふわり。



 俺の視線の横を横切る白い布。



 キリちゃんの短い腕が、俺に気を取られていたキリトを抱きしめる。



 ただそれだけ。



 別に攻撃とかそう言うんじゃない!



 マジか…自殺行為じゃねーか!?



 兎に角、この行為に動揺したらしいキリトの隙をついてコード……くっそ…不味い…意識っ…!



 

 っ…寒い…。



 呼吸が浅くなり、ただえさえ悪い視力が眼鏡越しに霞む。



 

 「ぅ ぁ? きりちゃ…こっじ…?」



 キリちゃんに抱き付かれた腕から、顔面を蒼白にしたキリトが血だまりに倒れる俺と自分の手にした剣を見比べ息を飲む。




 ああ、キリト。



 お前は悪くない。



 「ぁ ぁああああ! やだっ! こっじ! うわあああああん!」



 キリトの体が発効し、その衝撃で抱きしめていたキリちゃんが弾き飛ばされる!





 「き  りと…!」



 まばゆい光。


 背中に白銀の翼をもつ少年。



 その姿は、精霊の国でみた『勇者』。


 

 「こっじ! ごめんなさい! ごめんなさい!」



 キリトは、手にしていた剣を放り出し広がる血をかき集めて俺に戻そうとするがそれは無理な話だ。



 「…おちつけ 力 おさえろ…また あのババァに____」


 「うわあああああん!」



 ダメだ聞いてねぇ。



 弾き飛ばされたキリちゃんが、体勢を立て直し触手を放つが光のシールドのようなもので弾かれる!



 『魔王! アレハ完全体ダ! 今ノ貴様デハ太刀打チ出来ナイ!』



 身に着けたシーツの懐から、まだダメージの抜けきらないレヴィがもぞもぞと動きキリちゃんの胸のあたりに触れた。



 困惑するキリちゃんが、『ぱくぱく?』と覗き込む。



 『…使エ…女神ノ思惑ニ嵌ル位ナラ…クレテヤル!』



 レヴィがそういうと、シーツの懐がまばゆく紫に輝く!

  

 


 まっ!


 待て!



 ばかやろっ…!



 虫の息の俺は、それを制止する事は出来ない!



 紫の光が全てキリちゃんに吸収されていく…。




 ビキッ。


   ビチャ!



 ふわりと浮かび上がったキリちゃんの背中から、シーツを突き破って黒い触手が飛び出しまるで巨大な蜘蛛の足のように広がる!



 「ぁ ぅ キリちゃ…?」


  

 俺の血にまみれたキリトが、怯えたようにキリちゃんを見上げる。



 無感情なキリちゃん目。


 それが、無機質に俺達をとらえた!



 メキャメキャ…。



 次の瞬間、薄気味悪い音をたてキリちゃんの背中から生える巨大な蜘蛛の足がキリトと俺めがけて振り下ろされる!



 

 「だめええええ!」



 気が付いたガリィちゃんが、迫りくる蜘蛛の足の前に飛び出しソレを受け止めた!



 狂戦士モード。



 俺の首筋が異常に発熱する。



 「キリちゃん! め! こんなの め! だよ!!」



 ガリィちゃんは、狂戦士の力を全開にしているが理性は保たれている。



 流石、比嘉の『婚姻呪』俺がコントロールを握っている限りガリィちゃんは暴走しない…けど…。




 「かはっ! げほっ! げほっ!」


 「コージ!!」



 息がキツイ…頭がぼーっとする…。


 


 【出血多量バイタル低下、早急に対処して下さい】 



 左目が軋んで、脳裏に耳障りな機械音が無機質に現実を突きつける。



 「こっじ…やだ…やだよ…」


 

 キリトの涙…頬に落ちる…。



 ああ、拭ってやりたくても霞んで見えねぇ…。



 「コージ! こーじいいいいい!」



 ガリィちゃんが絶叫も、遠くに聞こえる。


 ガリィちゃんは、キリちゃんの蜘蛛の足を放り出したが次々と攻撃が迫り抑えるのに精一杯で身動きが取れない。




 「ぼくが…ぼくが…」



 キリトの体が小刻みに震えながら立ち上が______ガッシ!



 「こっじ…!」



 俺は、キリトの足首を捕まえて首を微かに振る。



 「…ぼくにしかできないことなんだ」



 キリトは立ち上がって、俺の手を振り払いガリィちゃんの横を通り過ぎてキリちゃんの前に立つ。




 「ぐすっ…行こう これはぼくらがなんとかしなきゃいけないんだ!」




 キリトの翼が輝き、キリちゃんの触手が広がる!



 まばゆい光。


 漆黒の闇。



 二つが交じり合い、スパークする!




 ガリィちゃんが、巻き込まれまいと俺を守るように抱きしめ目を閉じた。





 ぐにゃり。




 それは、爆発では無かった。



 次の瞬間。







 



 『やぁ! 久しぶり!』



 聞き覚えのあるのんきな声がにこにこ迎える。



 『今まで順調だったのに、ラスボス一歩手前で瀕死とか…クソワロタw』



 またお前か…。


 

 『いやん! 冷たい! もっとさほらないの? 『会いたかった』とか『愛してる』とか『大好き』とかないの~?』



 無ぇな!



 つか、てめぇが何者だ?


 比嘉や霧香さんの事なにか知っているのか?


 それとも、女神の回し者か?




 『女神? やだなぁ~ぼくちゃんは君だけの味方だよ!』



 

 奴が俺の体に触ったのが分かった!



 『…全快まではサービス出来ないけどこれで許してね★ じゃ! いってら!』





 ぐにゃ。










 「コージ! 起きて! おきてよぉおおお!」



 激しく体を揺すられて、俺は目を覚ました。



 「っ…が ガリィ…?」


 「!! よっよかた! コージ!!」



 ガリィちゃんが、俺を抱きしめる。



 頭の中がぐちゃぐちゃだ…吐き気がする…あっ。



 俺はキリトに刺された腰のあたりをさする…消えてる。



 傷が治ってる…?



 いや…今はそんな事かまっていられない!



 俺は、ガリィちゃんの腕の中からあたりを見回す。



 そこに広がるのは、暗く淀んだ空間。



 音も光も無く只、混沌と渦巻く時が堪えず繰り返されるだけの何も生み出す事無い『無』。



 ただし、そこは『魔王』のいたあの空間ではない。



 問題は、此処がついさっきまでの大司教の間…この世界の住人たちが住まう場所であったという事だ!



 一体なにがあったんだ??


 

 「コージ! どうしよう! キリトとキリちゃんが…!」



 俺を抱きしめていたガリィちゃんが、涙目になりながら空中を指さ______ドゴオオオオオオン!!!



 ソレは、いきなり上空から地面に叩きつけられ追いかける白き光がふわりと降り立つ!




 「うっ、ぐすっ…やだよ…こんなことしたいくない! にげて! にげてよぉ!!」




 涙ぐむ『勇者』。



 が、その言葉とは裏腹に手にした白銀の切っ先がふらふらと起き上がる黒く禍々しい触手の塊の薙ぎ払い大きな傷をつける!



 「ごめっ! うわぁぁぁぁ!! どうしよう!!! たすけて! だれかたすけて!」



 黒い返り血を浴び、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらも『勇者』に切り裂く剣を止める事は出来ない。



 操られてる…!




 『ふふふ、貴方がどんなに抗っても『理』を変える事は出来ないのよ? 分かったでしょ?』



 空間に溶け込むような声。



 ふわりと舞い降りる白銀髪、赤い目、美しい六枚の翼。



 宙に舞う体に這わせた白く優雅な布が、まるでそこにだけ重力を感じさせない。



 時と時空を司る女神クロノスは、白銀の長い髪と六枚の翼をしならせ地べたに這い蹲る『ゴミ』に目をやった。



 その赤い瞳に映るのは、傷つきボロ雑巾のようになった俺とガリィちゃん…ソレを目の当たりにし圧倒的な力を前に立ちすくむメイヤ、リーフベル、カランカの姿。



 「なにが…『理』だ…そんなの、てめぇの都合じゃねぇかよ…」




 どうにか起き上がろうとした眼前に女神クロノスが一瞬にて移動し、俺の髪を無造作に掴みそのまま持ち上げた!



 「あ"くっ…!」


 『これは、私の世界…ユグドラシルなんかに滅ぼさせたりしな____!!』




 微笑を浮かべていたクロノスの顔が急に強張る_____何だ?



 『な…に?』



 クロノスの腹を貫く黒い触手。



 振り返ったクロノスが信じられないと言う表情を浮かべる。


 ズルリと触手が引き抜かれると、クロノスの胴には向こう側まで見える大きな風穴があいていた。




 そのまま、クロノスが崩れ落ちる。



 すると、それにあわせて『勇者』がカランと剣を手放した。

 




 「ぐっす…もうヤダ…たたくのいたいよ…も、やめよ…ねぇ」




 『勇者』は瞳から大粒の涙を流し、まるで弾けた黒いスライムみたいになった『魔王』に縋り付く。



 

 ぐちゃ…ぐちゃ…。



 縋りついた場所に、『キリちゃん』の顔が形成され『キリト』を見上げて微笑む。




 …ぱくぱ_____ぱくぱく。



 

 声を発っせない口が動くと、凄まじい魔力が放たれ空間に亀裂をつくる…そこには懐かしい混沌の闇が見えた。




 「いやだよ…おねがい…いかないでっ…ぼくも、ぼくもいっしょに」


 



 まさか…!



 「駄目だ! 行くな! 戻れ! キリト! キリちゃん!!」



 俺は叫び、駆け寄ろうとしたが急激な目眩と足がもつれその場に倒れ込む!



 「ごめんね」




 キリトはそう言うと、キリちゃんの手を握った。




 「ぼくにしかできないことなんだ」

 



 ぱくぱく! ぱくぱくぱく!



 その言葉に、キリちゃんの口が『そんな! だめだよ!』と激しく動く!




 「だいじょうぶ、ずっといっしょだよ! もうさみしくないからなかないで…」



 そっと、キリトがキリちゃんの流した涙を指でふき取る。




 すると、キリちゃんの体はキリトの姿を模して『人』の形をとって起き上がり二人は手をつないで混沌の亀裂の前に立った。




 「ま…待て! 行くな…い______」



 ギシッ…ジジジジ…。



 左目が軋む…何か見える…?



 なんだ…!


 

 こんな時に!!




 「っつ…!?」


 

 目の中に軋みと共に何が過る…気のせいかと思ったが違う!



 重なる。


 滲む。



 良く知る二人の後ろ姿が。



 今のキリトとキリちゃんは、ちょうど俺がこの世界に来たときと同じ位の姿だから?



 違う!



 なんで?



 おかしい…!



 どうしてこんなモノが見えるんだ!?




 「比嘉…霧香さっ…?」



 俺の左目に写るもの、それは手をつなぐ仲睦まじい姉弟。



 振り向いた二人。



 微笑む顔が重なった。



 あ。



 俺は這いつくばった状態で情けなく手を伸ばす。




 二人は混沌の狭間に足を踏み込もうと________。








 『させない』






 白い閃光が二人に向かって飛んでいく!



 キリちゃんは、キリトを混沌の中へ押し込んだ!




 ぱくぱく!




 混沌中へ落ちていくキリトの口が動く___『まってる』。




 閃光を避けたキリちゃんは、落ちていた剣を握った。



 白銀の刃がが漆黒にそまると同時に、握ったキリちゃんの手がジュッジュウと焼け爛れ始める!





 『貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』



 クロノスの六枚の白い羽が白銀の刃となってキリちゃんに向って迫る!


 白銀の雨のように降り注ぐ羽に体を切り裂かれながら、キリちゃんはクロノス目掛けて直進し_____!




 『な__!?』




 ズパン!



 クロノスの首が宙を舞う。




 それと同時に剣を握るキリちゃんの腕が肩口から砕け散り、司令塔を失たクロノスの体が糸の切れた人形のようにカクカクと地面に崩れ落ちた!




 「キリ…!」



 俺は、地面に倒れるキリちゃんに這いより抱き起す!



 「おい! しっかりしろ! キリ…」

 

 

 抱き起す俺に、ぱくぱくと力なく口が動き伝える…『キリトのところへいかせて』。



 どくどくと肩口から流れ出す漆黒の闇。



 すっかり弱り、虫の息で懇願する苦悶の顔に俺は見覚えがあった。



 それはあの日、霧香さんの高校の前で比嘉が浮かべたあの表情だ。




 ぱくぱく…ぱく…。



 徐々にその瞳から生気が失われていく…。



 俺は、ふらつきながらキリちゃんの体を持ち上げた…何てことだろう…恐ろしく軽い。 



 すぐ傍には空間を切り裂いたような混沌の狭間。




 首を無くしたクロノスの死体は、まるで光の粒のようにさらさらと崩れて始めている。



 俺は、その死体をまたぎキリちゃんを狭間の前に連れていく。



 「これでいいのか…?」



 もはや焦点の合わない瞳が頷くように瞬きして、口を動かす。





 『ありがとう』





 俺は、混沌の狭間にその体を放す。



 あっけなく混沌に沈み、辺りが眩い光に包まれる。




 なんだよコレ…!



 俺は…俺は…!



 何も______。




 「わあああああああああああああああああ!!!」




 光が過ぎ去った後、俺の絶叫だけが淀んだ空間に残された。







◆◆◆






どれくらいそうしていただろう。




 「コージ…」



 叫ぶだけ叫んで、放心状態の俺にガリィちゃんがそっと寄り添う。



 「コージ…ごめんね…ガリィ止めようとしたけど…なにも出来なかった…」



 満身創痍の体。



 俺が気を失っている間、ガリィちゃんなりに何とかしようとしたんだな…。




 「…! コージ?」



 俺は全力でガリィちゃんを抱きしめる!




 「ガリィちゃ、おれ アイツらを苦しめた…救えな かった! 自分勝手な思い込みでっ あんなつらい思いさせて! こんなのあのクソババァとなにもかわんねぇっ!!」



 しがみつき、情けなく泣き喚いて怒鳴り散らす俺を拒む事無くガリィちゃんはその背中をそっとさする。




 「コージ…コージはガリィを助けてくれた…お兄ちゃんを救ってくれたよ…」



 「そんなの もしかしたら おれ 俺がここに来なけれ レンブランだって!」



 嗚咽を漏らす俺の背中をさするてが、とんとんとあやすように軽く叩く。




 「この世界に来てくれてありがとう…ガリィはどんな時でも諦めないコージが大好きだよ」



 ゴロゴロと咽喉がなって、涙に濡れたあつい頬がすりっとする。




 ああ…そうだ…。



 俺が諦めたら…全てが終わる…。 





 「…ありがと、ガリィちゃん」




 俺はガリィちゃんの腕から離れ、顔をあげる。



 きっと、鼻水に泣きはらした今の顔は俺史上最高に情けない事だろう。




 「行くの?」



 振り返り、かなり不安定になった混沌の狭間を睨む俺にガリィちゃんが聞く。




 「ああ、ほかの皆を頼む!」



 「うん! 早く帰ってきてね!」




 ガリィちゃんの声を背に、俺は混沌の歪に飛び込んだ!






◆◆◆






 あら、懐かしい。



 荒れ狂う亜空間を、ゲロ撒きながら錐揉み状態でスカイダイブ!



 強いて例えるなら、ドラム式洗濯機の中に突っ込まれ回転しながらジェットコースターに乗せられ3Dシアターでド迫力のスターヲーズが早送りで流されているようなそんな感じ。




 もーーーーー!



 俺、絶叫系苦手だっつてんでしょおおおお!!



 もーやーーーーーー!



 今回はしがみ付く物(比嘉)がいないから、よけいに錐揉れてるのー吐くーもう吐けないーーー!



 でも、流石に今まで散々高いところから落ちまくって来たからね!



 結構冷静よ俺!



 俺は両手足を広げなんとかバランスを取って、あたりを見回す。



 凄まじく荒れ狂う嵐のような空間。


 音。


 異世界とと思われる断片的な映像。


 時折、砕けた建物の残骸なんてとんでくるけどそれは俺の体を通り抜けていく…実体はない…ホログラフみたいなものだろうか?


 


 訳の分からない空間。


 なんでこんなモノが存在するのか、きっと今の俺になら分かるかもしれない。




 「…さて…遊んでる場合じゃねっ…!」



 俺は、左目のコードモードを発動させる。



 すると、荒れ狂う空間は全て1と0の集合体にすべて変換されて俺の脳に情報を映す。



 そうして見ると、混沌に思えた荒ぶる空間も全てが計算しつくされたように規則だ正しく1と0の羅列で構成されていることが分かる。



 ああ、レンブランにも見せてやりたかった…きっと狂喜乱舞しただろうに。



 

 少し間だけ目を閉じる。




 さぁ。



 始めよう。 

 



 俺は見開くと同時に、今まで封印していた範囲までコードモードを全開にした!



 ここならどんなにどエロになっても誰もいねぇ!


 遠慮なんかしねぇかんな!!



 コード解析。



 空間全域。



 俺は探す。



 何を?



 それは全てを束ねる場所。



 答えだ。


 


 知りたいんだ!



 

 助けなきゃ…アイツらを…!



 もしも、予想が確かなら救えるのは俺だけなんだ…!

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