第24話 ▼大地
二〇十一年三月十二日午後十二時
なんだ、またあの夢か。何度も何度も繰り返し見る。真帆は疲れのせいか篠田の運転するジープの助手席で数時間ごとに転寝した。自分があまりにもイヤなヤツすぎて、嫌いになってしまう。私は、正義の味方のつもりなのに。ずっとずっと、そうやって生きてきた。自分の中に悪の成分なんかない。……誰も助けられなかったけども。それにしても、変だね。自分があのマリス・ヴェスタって女なら、マリスが出てこないシーンは一体誰の記憶だ? まぁいいや、どうせ夢なんだから。
夢の中で出て来たラグナロック。確か、北欧神話に伝わる神と巨人たちの最終戦争の伝説のはずだ。それが一万年前に起こった世界最終戦争の名称なのだろうか。周辺国家に版図を広げたアトランティス帝国。南北アメリカ大陸も植民地にしている。それが、停戦中だったヘラスへと宣戦布告した。
「そんな昔に世界大戦があったのか。一万年経っても人間のやっている事は同じなのか。しかしそれだけじゃない。何だかシャフトって、日本の幕末の徳川幕府みたいだし、戦争はアフガン・イラク戦争、いいや、太平洋戦争みたいだな」
色々なものを連想する。皇帝が処刑され、生き残った王党派が復讐を果たすために姫の元に集っていく。これってアトランティスの忠臣蔵である。このまま夢の続きが見られるならば、一万年前の赤穂浪士達が都で見事本懐を遂げるまでを見届けたい。そうすれば、今の自分にずいぶんと励みになるのに。
一人でいた真帆は、救助に来た自衛官・篠田と出会った。それが災害後に会った初めての生きた人間だった。真帆が上陸した神江は地震と津波による原発第一の事故で、放射能に汚染され、自衛隊は全て撤退していた。篠田は連絡の行き違いで取り残されていた。だがそのお陰で真帆と会ったのである。
真帆は、篠田とジープで移動しながら「あきらめないで」と声をかけ続け、多くの人を援けた。幸いにして篠田がガイガーカウンターを持っていたお陰で、原発の放射能と風向きを計算しながら原発サバイバーの二人はゲリラ的に脱出劇を演じていた。
「無線がつながった。ただし、部隊ではない。この近くでアマチュア無線を発している人が助けを求めている」
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