第21話 追走の追憶

次の日。よく晴れた日だった。雲一つない晴天が広がっている。

 肌を炙られながら比空と登校していると作延好道の背中が前方に見えた。

「たまには一緒に行きなよ」比空はそう言って一人で駆け出す。

「おい。比空と一緒に行くって言ってんだろ」

「こんなに生徒がいっぱいいるんだから大丈夫だって」

 比空はそう笑って作延に近づく。作延は比空から声をかけられると振り返って奥苗を見た。奥苗は片手を挙げて挨拶する。

 作延は立ち止まって奥苗を待った。

「比空さんにたまにはどうぞって言われたよ」作延は微笑んだ。

「おう」奥苗は短く言って作延と並んで歩く。

「比空さんは優しくていい子だよね」

「そうだな」

「比空さんと一緒にいることって大変じゃないのかな?」

 逡巡する。確かに比空と一緒にいると面倒なことに多く遭遇する気がした。

「そうかもしれねーな」

「それでも奥苗が一緒にいるってことは、それほど比空さんが魅力的なんだろうね」

 作延は小さく笑った。

「……どうなんだろうな」

 黙って歩を進める。無言の間が続く。

「なあ」奥苗が口を開く。「七王国のパンツ、あと切られてないのはTバックだけなんだが、作延はどう思う?」

「その犯行を防げなかったら、もう犯人を見つけるのは難しいだろうね」

「そういうことじゃねーよ。Tバックって見つけるのむずいと思わねーか? だってそんなの履いてる高校生いねーだろ」

「ああ、そういう意味か。確かにそうだね」

「プールの授業ももうすぐ終わるし、もう犯人もやめたんじゃねーかと考えてな」

 奥苗と比空は他のクラスがプールの授業中、できる限り更衣室を監視しているが、今まで不審者が現れる気配はなかった。

「いや、犯人は絶対にやり遂げると思うよ」

 作延は妙に自信が籠もった声で言った。

「ここまでやり遂げたんだ。最後の一枚まで、自分の手でやり遂げると僕は思う。まあ、その前に僕らは捕まえなきゃいけないんだけどね」

「……そうだな」

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