第6話 変化

 朝日が射し込む。ああ、良かった。ぐっすり眠れた。ちなみにマウス来襲時には無線機だけではなく家に設置された警報機も鳴るので寝過ごすなんてことはない。



「おはよう」

「おはー」

「はよう」

 皆んなそれぞれの挨拶を交わす。

「おはよう」

 南が俺を見て言った。よな? だよな?

「おはよう」

 通り過ぎていく南に声を掛ける。おうむ返しの返事のようだが南は俺に微笑み返した。

 すっかり固まってるとまた、健太郎がやってきた。心配してるのか、茶化したいだけなのか。

「薫! おはよう!」

 完全に首を腕でホールドされた。こいつ何気に訓練所で鍛えてるんだよな。必要以上に。

「南がおはよう! ってお前またチャンスなのに。やる気があるのか? え?」

 やる気ってなんのだよ。ああ、もう南に聞こえるって。声がデカイよ、健太郎。

「健太郎、声デカイ!」

「いいじゃんかよ。それもまたチャンスだって」

「お前、完全に遊んでるだろ?」



 と、そこに




 警報が鳴り響く。



ウー。ウー。




 嘘だろまた? こんなに頻度が激しいのは珍しい。いや、初めてだ。

 二日目もっていうのはあったけど三日続けてってのは世界中でもいつの時代でも聞かない。昨夜も念のためやめてくれって気持ちで寝てたが、昨日戦闘終了の合図で当分は訓練所通いになると思っていた。



 とにかく、そのまま校庭へと健太郎と走って行く。



『敵機、接近中! 正規戦闘員、直ちに戦闘機に搭乗してください。戦闘員は配置についてください。繰り返します。敵機、接近中! 正規戦闘員、直ちに戦闘機に搭乗してください。戦闘員は配置についてください』



 放送が流れてる。



「すごい。珍しいね」

 南がまた声をかけてくれた。

「ああ。初めてだな」

 あ、すんなり話が出来た。戦闘の方に神経が向いていたからだ。


「なんかの、変化かな?」

「変化?」


 変化なのか? 百五十年前のマウスの攻撃から地球上から戦闘が消えた日は一日もない。だから平和にはなっていない。でも、もう街はほとんど攻撃されてはいない。いわばこう着状態だ。こんな状態を抜け出す為なのか?


「わからない。でも、なんかいつもと違うって不安で」


「大丈夫だよ。昨日も数が多くても他の部隊と合同でできたんだし。大丈夫だよ」


 本当は不安だったが、こう言うしかない。南にも、自分にも。


 校庭についた。雲が多くなってきた。これは降るな。厄介だな。相手はコンピュータ、こっちは人間、視界の不利は圧倒的だ。目に頼らずレーダーか。苦手だな。


 そっと南を見ると不安げにヘルメットをかぶっている。目があったので笑って手を振る。そう俺らには選択肢はない。戦闘に行くしかない。

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