第17話 彼氏の話 突撃ラブホレポ3

深夜の難波で謎のおっさんたちに絡まれながら待つこと一時間。

やっと彼氏(胸毛)と合流した私は、ラブホを探すために歩き出した。

ラブホ処女な私は、事前にカップルズとかいうサイトで色々と調べたのだが、なんでもラブホは予約が出来ないところが多いらしい。


できたとしても、別料金をとられたりするそうだ。そして金曜土曜の深夜は非常に混雑する。この日は土曜。片っ端から色々なラブホに入っていたが、どこも満室か、非常に値段の高い部屋しか空いていなかった。


ラブホのフロントには、基本的には人がいない。代わりに部屋の写真と値段が載っているパネルがある。好きな部屋を選んで、ボタンを押すと特定のパネルの電気が落ちるといった仕組みだ。なので、どの部屋が空いているかは一目瞭然である。


歩き続けること数十分。やっと一部屋だけ開いているところをみつけた。しかしお値段四万円。


庶民の私にはまったく理解が出来ないが、部屋にプールがついているらしい。それもうラブホじゃなくてええやん。ていうかそれなら普通に泳いで遊びたいわ。あ、もしかしたら水中でエロ漫画みたいなことをするのかも、それならスク水必須やなぁ……。


などと考え込んでいたら、いつの間にかその部屋も売れた。金持ちってホンマにおるんやなぁ、となんとも言えない気持ちになった。


歩き続けること小一時間。調子に乗ってヒールを履いていた私の足は悲鳴を上げていた。どこも空いていない。バイト先の先輩が言っていた一年中クリスマスなラブホも見当たらない。探そうにもスマホの充電は切れていた。どん詰まりである。


なんかもうラブホとかどうでもよくりかけていたその時、この近辺にもう一つラブホがあることを思い出した。ラブホ街からは少し外れるが、難波に来た時によく目にする建物だ。最後の望みをかけてそこに向かったら、奇跡的に一室だけ開いていた。


サービス料込で12000円。学生にとってはリーズナブルとは言い難い値段だが、この際しょうがない。部屋のボタンを押すと、ガコっと音がして、パネルの電気が完全に消えた。それと同時に、矢印が光りだした。


どうやらこの先にあるエレベーターに乗れということらしい。なるほど便利である。エレベーターに乗り、部屋に向かう。たどりついたのは、私のイメージしていたラブホとは全く違う、綺麗で落ち着いた空間だった。


入口付近には自動精算機があり、現在の値段を確認することができる。なるほど、これなら誰とも顔を合わせなくてすむ……。


と思っていた矢先、胸毛(彼氏)が「電気がつかない」と騒ぎ出した。消したのはお前やないか、おんなじ操作したら着くやろ、と言ったが何度やってもつかないらしい。しょうがないので従業員を呼ぶことにした。


登場したのは金髪のヤンキーっぽい兄ちゃん。「ここゆっくりおさえるんっすよー」というのでその通りにしたら普通についた。別に少しも壊れていなかった。ヤンキーは気まずそうにさっさと去って行った。人と会わないで済むように徹底されているので、この胸毛のせいで無駄に気まずい思いをしてしまった。


気を取り直して、部屋の中を探索することに。巨大なベッドに巨大なテレビ、黒いソファがある。なんとカラオケもついている。


さっそく「♪キョロちゃんでしゅ」を入れたが、深夜のためか音量が小さすぎて何も楽しくない。さっさと切り上げてテレビのリモコンをいじっていると、ホテル専門チャンネル、みたいなのを見つけた。何かと思ってみてみてるとただのAVだった。黙ってテレビを消した。


そういえばまだお風呂を見ていない。ラブホのお風呂ってなんか汚そうやなぁ、と思いながら入ってみると、これもことのほか綺麗だった。アメニティも充実している。髭剃り液なんか五種類くらいある。髭剃りほうだいである。


歩き続けて汗だくだったので、さっそく入浴することにした。シャンプーは普通にボトルに入っていたのだが、昔まとめサイトか何かで「ラブホのシャンプーの中におしっこを入れる奴がいる」というレスを見たことがあるので戦慄した。普通に入っていなかった。


浴槽は人2人がなんとか入れるくらいの大きさ。そしてテレビもある。さっそく電源を入れると、やはり大音量でAVが流れ出したので無言で切った。結局その日はなにもせずに帰った。何しに行ったんだろう。


つづかない

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こうじ君 秋山 魚 @osakanafurby

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