16 メイドのアルバイト・富士山・道案内①

【メイドのアルバイト】


「五月様、わたくしアルバイトをいたしたいと思います」

 メイドさん、突然の宣言です。


「ほー。で、どんなバイトだ?」

「お友達が働いております、婦人服店です」

「お前がメイド服以外を着るの?」

「へっ?」

 そういえば、メイド服以外のメイドさんを見たことがありません。


「だいたい店員さんは、自社商品着てるだろ?」

「はっ!」

「着るのか?」

「いえ……断ってまいります……」

 え? あっさり?


「どうせサイズも合わん……」

 あー、まー。




【富士山】


 五月先生、郵便受けに入れられていた旅行のパンフレットを眺めています。

「温泉か、いいなぁ」

「せめて、今夜は銭湯にでも行ってみましょうか?」

「銭湯ねぇ」


「壁いっぱいに富士山の絵が描いてある」

「今時そんな銭湯あるか?」

 五月先生、どこかにはあるでしょう。


「五月様、富士山に登ったことございますか?」

「話が変わったな。登ったことない」

「わたくし富士山キライです!」

「え、なんで?」


「遠目ならよいのです。日本人ですし……」

「ふむ」

「近くで見てご覧なさいまし、大っきすぎて怖いです!」

「お前小ちゃいからな」

 先生、富士山の前では大差ないかと……。




【道案内①】


 買い物帰りのメイドさんです。

 商店街を抜けたところで、おばあさんがメモを片手にキョロキョロしてます。

 どうやら、道に迷ってしまったようです。


「あのちょっと、ここへはどう行ったらいいのでしょう?」

 メイドさん、声をかけられました。

「大きなお荷物、持って差し上げます。一緒に参りましょう」


 てくてく、てくてく……。

 メイドさん、メモの地図を頼りにおばあさんを案内しました。

「ここでございますよ」

「どうもありがとうございました」


「で、ここはどこ?」

 メイドさん、今度は自分が迷子です。 

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