第8話 三人の王子の闘い


高宮くんにキスしないかと言われてしまった私。


確かに私は高宮くんが好き。


だけど


「た、高宮くん!キスは両思い同士でしなきゃだめだよ!」


「両思い同士?」


「う、うん!高宮くんが私の漫画制作に協力したい気持ちは嬉しいけど、そこまでして貰うのは申し訳ないよ!」


「俺は気にしない」


「わ、私自身もファーストキスは両思いの人とって考えだから!」


「えっ・・・」


「高宮くん?」


「胸が痛い・・・」


「だ、大丈夫?」


「悪かった、桜木」


「だ、大丈夫だよ!」


「そうか。キスは特別なものなのか」


「高宮くん?」


何かしゅんとしてる!?


「おい、押すな!」


「いやぁ!!」


えっ?


「綾ちゃん!姫島くん!?」


綾ちゃんと姫島くんが木の陰から現れた。


「ストーカー?」


「違うわよ!部活の部長として活動をちゃんと見てたのよ!」


「お、俺は綾斗の付き合いで仕方なく!」


二人に全部見られてたんだ!


恥ずかしい!!


「つーか、陸斗。さっき桜木に迫ってただろ?あぁ?」


「結斗、顔が怖い」


「カピバラ系男子の陸斗だからって油断しすぎてたわ、あたしも!」


「つーか、てめぇ何胸おさえてんだよ?」


「さっきからずっと胸が痛むんだ」


「あら、陸斗もまさかみっちゃんを・・・?」


「綾斗?俺が何だ?」


「鈍い子には教えないわよ。さ、帰りましょ!」


どうしよう。


まだドキドキが治まらない。


キスしようなんて言われたから。



『大好きなんだ』


『私のイラスト?ありがとう、高宮くん』


『桜木の事・・・大好きなんだ』


『へ!?』


『桜木、キスしたい』


『た、た、高宮くん!?』


『桜木・・・』


高宮くんの顔が近付いて・・・


「蜜葉ちゃーん!起きてー!」


翌朝、お母さんの声で私は目覚める。


夢!?


リアルすぎるよ!!


えっと、眼鏡・・・


あっ!


そっか、コンタクトにしたんだった。


高宮くん、眼鏡を外した姿褒めてくれたから。


今日はコンタクトで初登校です。


「みっちゃん、おはよう!学校でもコンタクトにしたのね!プリティ!」


学校に着くと、早速綾ちゃんが褒めてくれた。


「あ、ありがとう」


「さ、桜木!?」


姫島くんは私を見て驚く。


「姫島くん?」


「も、萌え・・・」


「萌え?」


「おはよ」


あっ!


「高宮くん、おはよう・・・」


「桜木、おはよう。やっぱ良いな。眼鏡無し」


あ、あんな夢見たから意識しちゃうよ!


「蜜葉ちゃん、おはよう!!めちゃくちゃ可愛い!」


「あ、優里香ちゃん!おはよう」


「ね、ね!昼休み!デートの感想聞かせて!昨日のLINEだけじゃ物足りないよー!」


「う、うん!」


なんか、色んな人に見られてるような?


眼鏡してないから変なのかなぁ。


「お前ら、三者面談のプリント!必ず親御さんに渡せよー?」


ホームルームが始まると、担任の先生が三者面談のプリントを配布した。


校外学習が終わった後の週から始まるのかぁ。


「あと、三者面談で使うから進路希望調査票を今週末までに出すこと!」


進路希望調査票・・・。


漫画家志望とはいえ、高校卒業後アルバイトしながら漫画家を目指すつもりはない。


お母さんも辛いだろうし。


大学に行くか、専門に行くか。


悩む所だ。


まだ一年生だからってあんまり考えてなかったなぁ、進路について。


皆はどうするんだろ?


ん?


綾ちゃん・・・?


綾ちゃんは暗い顔をしていた。


「進路希望調査票か。一年生だから未定で終わらして良いかな」


「俺はもう決まっている」


「ああ、陸斗は声優の専門学校だっけか。俺は大学進学かなぁ。ラノベ作家志望とはいえ、賞でもとらないと仕事にできないし」


休み時間になると、皆で進路について話をする。


「桜木は?」


「わ、私は考え中」


私は姫島くんに聞かれると、答える。


「ま、まだ一年生だしな」


綾ちゃん・・・さっきから黙り込んでるなぁ。


「綾ちゃん、どうしたの?」


「三者面談。父が来るとは思えないなぁって。父はあたしを一家の恥と思っているから」


「えっ?お母さんは・・・?」


「あたしが小さい時に病でね。今は継母がいるわ。ま、あたしを嫌ってるから彼女も来ないでしょうね」


「綾ちゃんはお父さんに来て欲しい?」


「あたしは父からしたら失敗作だからね。三者面談に来たところであたしの進路なんてどうでも良いって言って終わりに決まっているわ。だから、あたしも別に良いの」


だけど、綾ちゃんは寂しそう。


「ったく!綾斗の親父はクソだな。綾斗を見放すとか」


「綾斗、すごい奴。失敗作なんかじゃない」


「ありがとう、ユイユイ!陸斗」


綾ちゃんはすごく辛いんだろうな。


「蜜葉ちゃん、良いなぁ!高宮くんと幸せな時間を過ごせたんだ!」


「う、うん!」


昼休みになると、私は優里香ちゃんにデートの話をした。


「あたしも桜小路とデートしたいな」


「誘ってみたらどうかな?」


「誘う前に毒舌が出ちゃう・・・」


「ありゃりゃ」


「だから、蜜葉ちゃんに御願いがあるの」


「御願い?」


「校外学習!桜小路とあたしを同じ班にしてくれない?」


「あ、そっか。遊園地着いたらクラス関係無しに班作って行動できるんだよね」


「そう。あたしが桜小路誘えるとは思わないからさ。御願い!」


「わ、分かった!」


「ありがとう!蜜葉ちゃん」


優里香ちゃんも恋してるなぁ。



「は?俺が高宮陸斗達と同じ班に?」


「う、うん。た、高宮くん同じ班になりたいらしくて」


私はB組に行き、桜小路くんに頼みに行った。


ごめん、高宮くん!!


「なるほど。あいつ、遊園地でも俺と決闘がしたいのか。よかろう。そういえば、君は高宮達とよくいるな」


「あ、はい!桜木蜜葉です。高宮くん達とは部活も同じで」


「ほぉ。どうだ?このプリンス・桜小路雅の親衛隊にしてやっても良いぞ?」


「それは遠慮しとくね!」


「ガーン!!」


とりあえず、何とか同じ班になれた!


良かった!!


「みっちゃん、ネーム進んでるじゃない!」


「う、うん!高宮くんとのデートがあったからかな」


「陸斗パワーね」


放課後になると、私達は部活へ。


今日は部誌用のネームが順調に描き進む!!


「今月中には完成しそうね。よし、そろそろ次の企画を発表しようかしら」


「綾ちゃん、次の企画って?」


「シチュエーションドラマCDを作るのよ!!そして、コミケで販売!あたしのサークルのスペースに置くわ」


「シチュエーションドラマCD・・・」


「そ!陸斗の力を発揮させる為にね」


「ついに俺の時代が来たか」


「ドラマCDが成功したら、乙女ゲーム!ふふっ。コミケに嵐を巻き起こそうじゃないの」


「楽しそう!」


すごい!


コミケに私達皆で作った作品を出せたら!


「さ、頑張りましょ!皆!」


今まではずっと1人で作品を作ってきた。


でも、皆で一つの作品を作るって良いなぁ。



「蜜葉ちゃん、ありがとう!!桜小路と同じ班にしてくれて」


「どういたしまして!お互いアプローチ頑張ろうね」


校外学習当日になると、私達はバスで遊園地へ向かう。


私は優里香ちゃんの隣だ。


「はぁ、早く桜小路に会いたいなぁ」


「優里香ちゃんはいつから桜小路くんが好きなの?」


「小学校の時からだよ?あたし、昔っから髪短くてボーイッシュでさ。ある日ね、珍しくスカート履いて学校行ったの。そしたら男子にめちゃくちゃからかわれて泣いて。でも、あいつが庇ってくれたの。冴島だって女の子だ、今日の冴島可愛いだろって」


「素敵!!桜小路くん、優しいね」


「うん。今は残念なイケメンになってるけど、あたしにとって桜小路はずっとヒーローかな」


良いなぁ、そういうの。


「やっぱり泣いてる時、助けられると意識しちゃうよね!私も高宮くんに助けられて好きになったから」


「ね!めちゃくちゃキュンキュンするよねー!」


優里香ちゃんと恋バナするの楽しいな。


私の恋も優里香ちゃんの恋も上手く行きますように!


「高宮陸斗!今日こそ貴様に勝つ!」


「桜小路くんだ。同じ班なんだね」


「貴様の女から聞いた。貴様が俺と勝負したがっていると」


「そんな話したっけ」


「忘れやがったのか!?」


遊園地に着くと、私達は班に分かれて行動する。


「さ、桜小路!」


「げっ!冴島も同じ班!?」


「げっ!とは何よ!あたし、蜜葉ちゃんの友達なんだし、当たり前でしょ?」


「ふん。面倒な奴が来たもんだ」


「あたしもあんたと同じ班なんて御免だ!」


わっ!優里香ちゃん、今絶対めちゃくちゃ落ち込んでる!


やっぱりなかなか素直になれないんだなぁ。


「ねぇねぇ、見て見て!可愛いケモミミカチューシャが売ってるー!」


私は綾ちゃんに呼ばれ、カチューシャを売ってるワゴンへ。


「この遊園地のキャラクターの耳のカチューシャなんだね」


「はい、みっちゃんはうさ耳」


「へ?」


私は綾ちゃんにうさ耳をつけられる。


「きゃああ!可愛いわ、みっちゃん!」


「うさ耳桜木だと!?萌え」


姫島くんはスマホで私の写真を撮る。


「ひ、姫島くん?」


「ら、ラノベの資料用だ!」


「桜木、うさ耳似合う」


「あ、高宮くんありがとう!って!高宮くんもカチューシャつけてる!?」


「カピバラのキャラの耳があったから」


違和感無さすぎる!


「可愛いね、高宮くん」


「あ、ありがとう・・・」


高宮くん?


顔が赤くなったような?


「まずはジェットコースターからだな」


「め、めちゃくちゃ速くない!?」


「みっちゃん、これ日本一激しいジェットコースターらしいわよ」


「ひっ!」


マジですか!


まず、私達はジェットコースターの列に並ぶ。


「桜木、マジで大丈夫かよ?めちゃくちゃ顔青ざめてる」


「だ、大丈夫!遊園地久々だから」


姫島くんに心配されてる!


「桜木、手貸せよ」


「へ?」


姫島くんは私の手を握る。


「こ、こうすれば落ち着くか?」


「ひ、姫島くん!?」


「こ、琴莉がビビってる時いつもこうしてやると安心するみたいだからよ。暫くこうしててやる」


「あ、ありがとう・・・」


「痛っ!陸斗、何故頬をつねる!?」


「なんか、結斗にムカついた」


「あら、同感ね。陸斗。後でお仕置きしましょう!抜け駆けの罰として」


「なんなんだよ、お前ら!」


なんか別の意味でドキドキする気がするよ!


「うっ。結構やばいな、あの速度」


「結構速かったね?高宮くん」


「大丈夫ー?陸斗、みっちゃん」


「貧弱コンビめ」


私と高宮くんはジェットコースターに乗ると、ぐったりする。


綾ちゃんと姫島くんは大丈夫なんだ。


「た、高宮陸斗ー!次こそ勝負できるアトラクション行くぞ!」


「ちょっと桜小路!あんた、ふらふらじゃないの!」


「うっせ。高宮陸斗に今日こそ俺は・・・うっ・・・気持ち悪」


桜小路くんなんか今にも倒れそう!


「そうだ、ゆーちゃん!みゃーちゃんの介抱よろしく!」


「へ?あ、綾斗!?」


「膝枕してあげたら楽になるんじゃない?」


「ひ、膝枕・・・」


「はい、ゆーちゃんはベンチに座って・・・みゃーちゃんはゆーちゃんの膝を枕にして寝て?」


「す、すまないな。橘。くそ!勝負はお預けか」


綾ちゃんの指示通り、桜小路くんは優里香ちゃんの膝を枕にして寝る。


「さ、さ、桜小路!?」


「さ、あたし達は行きましょうか」


綾ちゃん、ナイス!!


でも、羨ましいな。


優里香ちゃん。


私も高宮くんに膝枕してあげたいな・・・。


「良いなぁ」


「桜木、寝たいのか?俺の膝を枕にしても・・・」


「だ、大丈夫!」


高宮くんに言われ、私はそう返した。


それはそれで幸せだけど、逆の方が良いかな!


「みっちゃん!はい、みっちゃんもちょっと辛いでしょ?お水」


「あ、ありがとう!綾ちゃん」


私は綾ちゃんから水を受け取り、飲む。


「それ、綾斗の飲みかけじゃん」


私が飲むと、姫島くんが言う。


えっ!


「うふっ。間接キスね」


「あ、あ、綾ちゃん!?」


「綾斗の奴、許さんな。そうだ、陸斗。お前も辛いだろ?ほれ、お茶」


「結斗と間接キス・・・」


「何で嫌そうな顔してペットボトル見つめてんだよ!陸斗!」


び、びっくりした。


綾ちゃんもいきなりドキッとさせてくるなぁ。


というか、今日の創作研究部の皆様子がおかしい?


「綾斗には負けねぇ」


「僕がみっちゃんの一番だ」


「なんか今日の綾斗と結斗ムカつく・・・」


なんかギスギスしているような気がしているけど、気のせいかな?


「桜木、一緒に乗ろ?コーヒーカップ」


「陸斗、てめぇ!」


なんか高宮くんも前に比べて距離が近く感じる。



「高宮くん、回しすぎだよ!ハンドル!」


「め、目が回る・・・」


「うぅっ。辛い!」


私は高宮くんとコーヒーカップに乗る。


ジェットコースターに引き続き、酔っちゃうなぁ。


だけど


「みっちゃん!メリーゴーランド乗ろう!」


「綾ちゃん」


「げっ!綾斗が抜け駆けしやがった」


コーヒーカップの後はメリーゴーランドかぁ。


また回っちゃうのね。


「みっちゃん!」


あ、綾ちゃんもう馬に乗ってる!


「さぁ、お手をどうぞ。プリンセス」


綾ちゃんは私に手を差し伸べる。


「ぷ、プリンセス!?」


私は綾ちゃんの手を取り、馬に乗る。


あれ、メリーゴーランドって二人乗りするもんだっけ?


「おとぎ話の中に迷い込んだみたいだね」


綾ちゃんは私の腰に手を回す。


綾ちゃん!?


後ろから抱きしめられてる感じだよ、これじゃあ。


「あ、綾ちゃん?」


「今は僕が王子でみっちゃんが姫みたいだね」


今迄は綾ちゃんって女子感覚で見てたけど、なんか今はドキドキする!!


「みっちゃんかーわいい」


っ・・・


綾ちゃんはいきなり私の髪にキスをした。


「蜜葉ちゃん、桜小路復活したよー!って!何でそんなぐったりしてるの!?」


メリーゴーランドから降りると、私は桜小路くんと優里香ちゃんと合流する。


はぁ、ドキドキしすぎて大変だった。


優里香ちゃん達と合流すると、私達はレストランで昼食をとる事に。


「桜小路くん、にんじん嫌い?」


「ふん。な、何を言う?高宮陸斗。俺様はグルメなんだ。味付けが気にくわないだけだ!」


「でも、中学の給食でもにんじん残してたような」


「ふん。俺様は庶民の貴様と違って安っぽい食材は口に合わないんだ。ははは!」


にんじん嫌いなんだな、桜小路くん。


「俺が食べてあげる、桜小路くん」


「あら、優しいわね!陸斗は」


「桜小路くんの力になれるなら嬉しい」


「ふん。た、高宮陸斗に助けられたくなんかないね!」


やっぱり仲良いな、高宮くんと桜小路くん。



「さて、ついに来たわね!お化け屋敷!」


昼食をとると、私達はお化け屋敷へ。


めちゃくちゃ怖そう。


ホラーゲームに出てきそうなお屋敷だし。


「さ、桜小路!あたしと一緒に入りなさい」


優里香ちゃんが桜小路くんに言う。


「は?何でお前と?」


「こ、怖いけど入りたいのよ。せっかく来たんだし!」


「なんだよ、それ」


「お、男なら女のあたしを守りなさいよ・・・」


優里香ちゃんは涙目で桜小路くんに言う。


「なっ!?わ、分かったよ」


桜小路くん、顔真っ赤だ。


お?良い感じかも。


「さ、一番手はゆーちゃんとみゃーちゃんで!」


優里香ちゃん達は先にお化け屋敷へ。


「さて、問題はここからね」


「そうだな。ついに決闘する時が来やがったな」


「綾斗と結斗は親友だけど、今は敵」


なんかいきなり三人の雰囲気が不穏に・・・


「誰がみっちゃんとお化け屋敷を回るか」


「ふん。てめぇらなんかに負けねぇよ?」


「俺も負けない!」


「あの、皆で入ろ?」


「みっちゃん!だめよ!こういうのは男女二人がお約束!」


「そうだぞ、桜木。クリエイターの俺たちが萌えるシチュエーションを作らないでどうする」


なんか、怒られた!?


「さ、僕も本気出さないとね」


「全力でやってやんよ」


「お前らにはなんか負けたくない」


何をする気?


「じゃんけんぽんっ!」


三人はじゃんけんを始めた。


「やったぜ。俺が勝ったぜ。てめぇらが抜け駆けしまくるから神様は俺を選んだようだな!」


勝ったのは姫島くんだった。


「仕方ない。あたしは陸斗とペアね」


「勝負だから仕方ないな」


何で皆、あんな怖い顔してじゃんけんしてたんだろ?


「結構暗いな・・・。桜木、大丈夫か?」


「う、うん」


かなり怖そう。


前から優里香ちゃんの悲鳴がめちゃくちゃ聞こえるし。


早く出たいなぁ。


だけど


「きゃっ!」


「桜木?」


上から唐傘お化けが落ちてきて私は驚く。


「子供騙しな仕掛けだ」


「ひ、姫島くん!び、びっくりした!」


「桜木、唐傘お化け見ただけで涙目かよ!?」


「だ、だって!上からわぁって!」


「琴莉みたいな奴だな」


だけど


「ひっ!姫島くん!壁から手が!手が!」


「桜木、それ作り物だぞ?」


「も、もう!びっくりした!」


「さっきから小さい子用かってくらい幼稚な仕掛けしかないぞ?桜木」


「真っ暗だし、薄気味悪い日本家屋だし、BGM大きいし!全てが無理だよぉ!」


「そ、そうか」


それに


さっきから


「わっ!足掴まれた!」


「ひゃっ!横からいきなり出てきた!!」


お化け役の人が私ばかり狙ってるような?


「姫島くんのとこ全然お化け来ないね?」


「俺が怖いんだろ」


姫島くん、見た目ガラ悪いもんね。


「ん?なんだろ?この井戸」


「やけにリアルだな」


「な、なんか声聞こえない!?」


「そうか?」


すると


いきなり着物を着た女のお化けが井戸から飛び出してきた。


「きゃあああ!!」


気付いたら私は姫島くんに抱きついていた。


「さ、さ、桜木?」


「怖い・・・怖いよぉ・・・」


「大丈夫だ。お化けなんて俺がやっつけてやるからよ」


姫島くんは私の頭を撫でる。


はっ!


「ご、ごめん!」


私ってば怖いからって姫島くんに何を!?


「別にそのままでも俺は良かったけど」


「えっ?」


「さ、桜木が安心できるなら抱きしめてやるよ」


っ!?


「ひ、姫島くんって優しいね」


「言っとくけど、桜木以外にはこんな事させない」


「えっ?」


「俺の腕掴まっとけ」


「わ、悪いよ!」


「良いから」


「ご、ごめんね?」


私は姫島くんの腕に自分の腕を絡ませる。


「わっ!また出た!」


「落ち着けよ、桜木」


姫島くんって本当に優しい。


さすがお兄ちゃんだなぁ。



「姫島くん、ありがとう。助かりました」


「落ち着いたか?」


「うん。もう平気!!」


「良かった」


「さ、ラストは観覧車ね!」


お化け屋敷を出ると、私達は観覧車へ。


「次こそは負けない」


「僕がみっちゃんと乗るんだ」


「ふん。また俺が勝ってやるよ」


またバトってる?


「あの!私は皆で乗りたいかな」


「みっちゃん?」


「最後だし!皆で景色見て終わりたいなぁって。だめ?」


「みっちゃんがそう言うなら・・・」


「休戦だな、陸斗、綾斗」


「早く乗ろう、桜木」


私達は観覧車に乗り込む。


優里香ちゃんは桜小路くんと乗れたみたい。


良かった!


「4人だと狭いわね」


「すげぇ熱苦しいぞ、綾斗!」


「桜木、すごい。さっきのジェットコースター見える」


「本当だ!」


夕焼けがすごく綺麗。


「皆でこの景色が見られて良かったなぁ」


「本当ね!見て、さっきのメリーゴーランドが見えるわよ!」


「お、お化け屋敷もあるじゃねぇか」


皆は景色を見て楽しむ。


「・・・また、皆で行きたいね」


「みっちゃん・・・」


「今度はお化け屋敷皆で回りたいな」


「そうだな。皆で、か・・・」


「このままでいられるのかしらね」


姫島くん?


綾ちゃん?


二人は暗い表情をしている。


「綾斗、結斗。どうした?」


「なーんでもないわよ!また行きたいわね」


「だな。今度は夜のパレードまでいようぜ」


ずっと皆で仲良くしていたいな。


私、きっと今日皆で見た観覧車から見た景色、忘れないと思う。


一瞬、一瞬の時間を大事にしていたいんだ。



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