第49話 忍とコア、会話する

あれからにけんメンバーと文化祭の出し物としてダンジョン攻略を映像化するかを話し合いあっという間に時間が過ぎてしまいましたが有意義な話し合いができたのは嬉しい限りでした。話し合いの結果、今回の文化祭としてダンジョン攻略の映像とダンジョンでのドロップアイテムを展示しようという話にまとまりました。会長だけは反対していましたが、私達全員の意見には逆らえず渋々了承していました。この国は民主主義ですから仕方ないのです。戦争は数なのですよお兄様。


ダンジョン攻略のパーティは会長以外のメンバー全員、つまり私とくのいちプレイヤーの芹菜ちゃん、深淵の魔王、ジ・アビスこと深淵ちゃん、無口系少女のアカリちゃんの4人でダンジョンに向かう予定です。会長は危険だから参加はしたくないと言っていましたがフォローはすると言ってくれました。会長はなんだかんだでいつも協力してくれるので助かっています。


訳で早速先輩さんに水晶玉についての確認とダンジョンの場所を知らないか聞く為に先輩さんの自宅へ向かうことにしました。にけんメンバーはダンジョン攻略の準備をするとそれぞれ別れていますので先輩さんのところに行くのは私だけです。帰りは小姫ちゃんと途中まで一緒でしたがダンジョンのことを知ると小姫ちゃんが心配するので寄り道することを告げてさよならしておきました。


「先輩さんはいるでしょうか。」


先程携帯に連絡した時は出なかったので今日は移動販売もないので出かけてしまっているのかもしれませんが、明日に回すという選択肢は存在しません。実はこの前からあの水晶玉が気になって気になって気になってしかたなかったのですから。大事なことなので3回言ってみました。先輩さんが教えてくれるのを待っていましたが当の先輩さんはその話題を振ることはありませんでした。私も先輩さんが言ってくれるのを待つつもりでしたが、一切言ってくれなかったのでこの機会に教えてもらうつもりです。


あの時水晶玉は確かに飛んでいましたのは間違いないです。こんな面白いことを隠し続けようなんていくら先輩さんでも許されませんからね。


そんなこを考えながら歩いていると先輩さんが住んでいるアパートが見えてきました。何度か仕事の機材の出し入れで訪れたことがありますので初めてではありませんが相変わらず年季が入っている外見ですね。先輩さんは安いからそれでいいとは言ってはましたが私もその通りだと思います。何事も中身が大切だというわけなのですよ。


インターホンなんて洒落たものはありませんのでコンコン、と部屋のドアを叩きます。先輩さんがいるなら何かしら反応はあるはずです。ドアの向こうではガサゴソと音がするので先輩さんはいるのでしょう。


『はい。何か御用でしょうか?』


先輩さんだと思って待っていたところに返ってきたのは可愛らしい女の子の声でした。

おや、おかしいですね。先輩さんは一人暮らしだったはずです。…はっ!もしやこれはもしや同衾ではないでしょうか。私に内緒であんなことやそんなことをしていたなんてなんて!「ククッおい、体は正直だな。しっかり反応してるじゃないか。」「そ、そんなことないもん…こ、これは…違っ…!」とか先輩さんはしているのでしょうかなんてうらやま…ゲフンゲフン、けしからんです。私もご一緒したいくらいです。


『あ、あのー…どうかされましたか?』


おや、少しボーッとしてしまったようですね。ドアの向こうで困惑しているようです。


「…失礼しました。少し考え事をしてしまったみたいでもう大丈夫です。ところでこちらは先…九条さんのお宅ですよね?いらっしゃいますか?」


『すみません。今はマス…九条さんはいないんですよ。私は留守番で残っているだけなので…。』


「そうでしたか。残念です。では少しお部屋で待たせてもらえないでしょうか?」


先輩さんは留守でしたがまた出直すという選択肢はありません。この熱いパトスは止められないのですよ。それに先輩の同衾さんがとっても気になりますし、ね。ですがこの同衾さんは予想外だったようで少し動揺したような回答が返ってきました。


『え?す、すみません。部屋には知らない人間を入れるなと言われていますので…』


「大丈夫です。私は先輩さ…九条さんのところで働いているバイトなので知らない人間ではないですから。」


『バ、バイトさんですか…?』


おっと、私としたことが名乗るのをすっかり忘れてしまいました。先輩さんに同衾さんがいることに少なからず動揺してしまったようです。まだまだ功夫が足りませんね。ここは芹菜ちゃんの修行に混ぜてもらわないといけないかもしれません。


「はい。波瀬忍と申します。」


『え、と?は、波瀬…忍…さん?』


同衾さんは震えたような声で私の名前を問い返してきたのでよく聞き取れなかったのでしょう。なのではっきりと答えて上げるのが優しさというものですね。


「はい。波瀬忍です。」


『……い…ぃぃぃぃぃぃいいいいやぁあぁぁああああああっ!マ、ママママママスター!あの波瀬忍さんが波瀬忍さんがとうとうやってきちゃったじゃないですかぁぁあぁああっ!ど、どうしましょう、どうしましょう!マスターは留守ですし…うぅ…どうすれば誤魔化せるんですか!?こうなったらク、クロさん助けてくだ…あぁっ!?逃げないでくださいクロさーーーーんっ!』


…どうやら私は先輩さんに物申す必要があるようですね。私のことをどういうふうに伝えていたか問い詰める必要がありそうです。必要なら触手で絡めとるのも辞さないですよ?同衾さんはすっかり混乱してしまっているようですね。同衾さんの他にもクロさんという方もいるようじゃないですね。先輩さんx同衾さんxクロさんの〇Pですか。攻めはやっぱり先輩さんでしょう。クロさんの性別が分かりませんが男の子だと攻めも受けもできて尚良しですよ。フフ腐…。


とはいえ、このまま騒がれてしまうのも困ります。何より近所迷惑になってしまいますからね。ここは落ち着いてもらいましょう。


「すみません。落ち着いてください。」


『そう言ってまたじっと見つめるつもりですね!私は飛んでなんかいませんよ!た、ただの水晶玉なんですからぁぁぁぁあああっ!』


落ち着いてもらうように声をかけたのですが、逆効果のようで更に混乱してしまったようです。しきりに私は飛んでいない、動いていないと叫んでだりブツブツと呟いてしまいました。むむ、これは心配です

。由々しき事態です。


ですので鞄から一つのカギを取り出しガチャリと音をさせてドアを開けるとそこには


『あ、あぁっ!?な、なんで入って来てるんですかぁぁぁぁあああっ!?』


「なぜって合鍵持ってますから。」


『ほ、ホントこの人もういやぁぁあぁぁぁぁぁああああっ!』


「嫌なのは最初ですから安心してください。フフフ…ウフフフフ腐……」


そこにいたのは水晶玉がプカプカ浮かんでピカピカと光輝いていました。おやおや、同衾さんではなく水晶玉さんだったようですね?水晶玉さんがショックを受けたようにポトリと落ちて震えてしまってしまいました。これも由々しき事態です。しっかりと話を聞かないといけないですね。それはもう水晶玉さんの震えが止まるまでじっくりゆっくりと、です。もちろん先輩さんはこの後に問い詰めますのでご安心ください。では水晶玉さん?知ってることを話してもらいましょうか。嫌なら触手の刑ですから、おやそんなに震えなくてもいいんですよ。大丈夫です。後から気持ちよくなれること請け合いですから、ね?


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何やらうちの部屋にダンジョンができたんだが 招けネコ @manekeneko

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