第24話 僕は泣かないよ

 僕はアンリさんという常識人がいることを忘れていた。

 確かに前にはドラゴンとかいうだまし討ちをされたものの、常識人の感覚に近い。

 異世界にいるものの、僕たちの世界にいた子の人であれば、芽衣子という頭のおかしい幼なじみの陰謀や酒に狂った酔いどれエルフのルディアを止める。

 さらに現れたニューフェイスの厄介者たちを押しとどめるにはこの着物を崩したような恰好をした妖艶ながらも大人の女性であるアンリさんしかいない。


「ちなみに、私はまだ3回変身することができる」


 まあ、嘘としか言えないヲタワードとか、ゲームしたいとか。ぐーたらとか。そういうのはやめてほしいけど。

 中2病設定の塊のくせして、残念なところとかは目をつむって、そのやたら私を頼ってくれオーラを僕に出すのはやめてくれませんか。

 とても残念臭が漂って、不安しかありません。

 けれども、この人だけは何とかしてくれる。まさに僕にとっての女神なのです。


「さて、ここにとても臆病者で人形遊びが大好きで少し根暗だが、とても淫乱いきった魔女を名乗るクソガキがいると聞いたのだが」


 うん、誰だ。この酷い噂を流したのは。確実に人形で血祭りにあげてやる。

 ボコボコにしつつ、僕をかたどった石像の前で正座をさせて、「私は酷い噂を流した愚か者です」というプラカードを持たせてやる。

 絶対にだ。

 というか、この候補の一番は芽衣子しかいない。

 あいつ、捕まえてからさっき考えたことを実行してやるからな。


「うん、ミズキよ。どうして、君はそんなに可愛い顔をしているのに、怖い顔をするのだ。しかも、今にでも血の涙を流しながら誰かを襲いそうな顔をして。しかも、それは般若にしか見えないのは私の気のせいであってほしいのだが」

「恐らくそれは本当なのだと思います。僕はこれから芽衣子を捕まえて、血祭りにしてきます。ああ、ルディアでも変わりはしません。あの女の場合はまずは簀巻きにしてもかまわないでしょう。そして、酒断ちを強制します。とりあえず、1週間ほどやらせれば真人間に戻るでしょう」

「う、うん。私は何も言わないよ。それよりも、まず、村の入り口にいる女性が困っているぞ」


 そこには茶色い髪の犬耳の女性がいて、どこか困っていそうな感じがしていた。居心地が悪いというか、何というか、気まずそうな感じがしている。

 茶色いレザーアーマーに背負い袋をもって、腰にはよく手入れのされた剣を佩いている。

 割と身軽そうないでたちに動きに隙が無い。騎士という風体ではないので冒険者と言ったところだろうか。


「もう終わったのか」

 コホンと彼女は咳払いをして、アンリさんを見やる。

「そうだな。とりあえず、済まなかった。で、その残念な魔女をどうしにきたんだ」

「もちろん成敗しにきたのだが、どうも事情があるらしいな。そこのすごい顔をした魔女らしき人物が物凄い顔で私を見ている。何というか、哀れというかなんというか」

「ああ、そうだな。泣きそうな今にも崩れ落ちそうな顔で辛そうな顔をしている。まあ、いろいろ事情があるんだ。察しろということはしなくてもいい。苦労としているんだよ」


 え、そんなに僕心配されそうな顔をしているの。

 確かに色々と変な噂やら町興しの道具にされたりと大変な目には合ってきているけど、強く生きようとは思っているんだよ。でも、あいつらが僕の周りで悲しいことをするから、ああ、そうだ。殺るしかないのかもしれない。


「精神が不安定になっているのもあるのかもしれない。だが、元気を出せ。そこの年若き魔女よ。苦労はしない方がいいよな」

「そんなに僕同情されそうな顔してますか。何か、肩叩かないでください。いやいや、その顔も何かもう生暖かい目とか。余計に辛くなるわいっ!」

「ああ。すまない。しかし、そのような顔をされると気まずくなってな」

「もういいです。で、ここに来た魔女がどういう人が分かったのであれば、帰ってくださいませんか。流石に僕だって、厄介事はもう勘弁なので。筋肉オカマだけでもう僕としては心労がたまって、胃が痛くなりそうなんです」

 あとは芽衣子をどう料理するかも考えなくてはならないんだけど。


「な、筋肉オカマ? それはアデライドか、アドンとかいうものではないか?」

「知っているんですか! なら、何とかしてほしいんです!」

「うーん、そうだな。何とかしたいのはやまやまなのだが、強くてな。幼馴染としては恥ずかしいものなのでやめてもらいたいとは思うのだが」


 ということらしい。幼馴染ねえ。しかも、同じ冒険者となる。

 何か、色々あったのかなあ。


「おや、ザザさん。こんなところにどうして?」

「ルディア! お前こそ、何でこんなところに。しかも、何だ酒臭い臭いは! 王都の才媛だったエルフが何でこんなところで飲んだくれている!」

「ああ、もうぐちゃぐちゃだよ」


 それは僕が言いたいセリフです。わけがわからないよ。

 とりあえず、何というか、ルディアが才媛だったとかいうドウデモイイ設定とかはまあ、いいけど。正直、どうでもね。


「とりあえず、一つずつ整理していかないか?」

 アンリさんの提案に一同は乗ったほうが良いのだろう。じゃないと、情報が整理できなさそうな気がする。






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我が村の魔女っ娘女神様(男の子) 阿房饅頭 @ahomax

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