アメリカンなダイナーで巨大ハンバーガーを食らう

今日はあそこだ。

今日はあそこに行こう。

最近ある動画にはまっている。

それは陽気なアメリカ人が、

アメリカのダイナー、、、

ダイナーとは大衆食堂のアメリカ版だと思ってくれればいい。

そのダイナーを廻って様々な料理を紹介する動画なのだが。

これがまたうまそうな料理がテンポよくガシガシと出てくるのだ。

そんな事を新潟駅に向かいながら思い出すと共に、

ちょうど見るからにアメリカンテイストな店があった事を、

思い出したのだ。

場所は新潟駅万代口を出て左に向かい、

しばらくして右。

全面ガラス張りのダイニングバーの隣にその店はある。

ちなみに全面ガラス張りのダイニングバー。

以前にいった事がある店だ。

ここのオリーブは風味豊かでとてもおいしかった。


しかし用があるのはその隣の店だ。

看板は英語の筆記体で書かれていてぶっちゃけ読めない

入り口にはアメリカンな雰囲気を醸し出す

様々な装飾品が置かれている

このガソリンスタンドみたいな奴、まだ使えるのだろうか

こっちはコーラの自販機だ、コイン投入口に金を入れてみたいが

それで何も起こらなかったら恥ずかしいな、、、


店内は空いていて、楽に座れそうだ。

引き戸を開けて中に入る。

中はまさに動画で見たダイナーの世界。

いや、、、動画にはこんなおしゃれな店は出てこなかったな。

動画にはもっと雑多な感じの場所が多かった。

店内の壁と言う壁にはポスターだったり、

車のナンバーだったりがくっついている。

うん、こんなおしゃれじゃない。

だけどこの日本でアメリカを味わうには、

少々装飾過多なぐらいがちょうどいいのかもしれない。

「すいません、一人なんですけど」


そう言うとすぐに右側にあるカウンター席に案内してくれた。


店内は奥行があり左側にはテーブル席が奥まで並んでいる。

だがそれ以上に興味深いのはジュークボックスだ。

これにもお金を入れてみたい、、、

だけど動かなかったら嫌だし、

わざわざこれ使ってもいいですか、なんて聞くのも野暮だ。

僕はちらちらとジュークボックスを気にしながらカウンター席に着くと、

さっメニューを見渡した


「すいませんビール一つ、バドワイザーで」


アメリカンな気分を味わうならここはやっぱりバドワイザー。


僕は更にメニューを見渡してつまみとメインになる食べ物を選ぶ


「すいません、オリーブとスモークサーモン、それとこの〇〇バーガー、一つ」


オリーブとスモークサーモンがアメリカンか否かは疑問だが、

それは置いておこう。

ともかくこの店の名前がついたバーガーは間違いなくアメリカンだろう。


早速ビールが届いたのでまずは一口。

細かい事だがコースターはハイネケンだ

かっこつけてバドワイザーにしたがビールなら何でもうまいな

うまいと思っているとまずはオリーブが届いた


僕はオリーブの身が好きだ

こんな塩の塊みたいな物を幾つも食べる事に背徳感を覚えるのも好きだし、その後の独特の風味も好きだ。


それらを脳内で期待してオリーブを頬張った。


!!


し、しおからくない、、、

しかもオリーブの風味も薄い、、、

2つ、3つと口に放り込むがやっぱり同じだ。

水っぽくて風味も薄い。

どうやらこの店でのオリーブの扱いは僕の望む形ではなかったようだ。

しょぼんとしている所にスモークサーモンが届いた。

皿にサーモンとサニーレタスが盛り付けていて恐らくビネガーだろう、ドレッシングがかかっている。

見た目はまさにスモークサーモン。

味は、、、これまたスモークサーモン。

薄味のオリーブに比べるとしっかりとした塩味と煙の風味を

感じる。スモークサーモンを頼んだのは当たりだったな。


オリーブを放り込んでしょぼんとし、スモークサーモンを噛みしめほっこりする。

それをしばらく続けていると、

ビールが無くなったのでお代わりを頼んだ。


入り口の扉が開いて4人ほどのグループ客が店内に入ってくる。

いやーおしゃれな店だねなんて会話しているのを聞いていると、他人事ながらこそばゆい気持ちになってくる。

オシャレ?オシャレな店なのか?

アメリカンがコンセプトな食堂ではあるけど、

それはあくまでコンセプトであって、

アメリカンな食堂としてオシャレだと言っている訳ではなくて、

様々な飲み屋、食堂が連なるここ新潟でこうしたコンセプトの店がある事がオシャレであると言う事なのだろうか?


ひとりでうんうんと頭を捻っていると、

待望のバーガーが届いた。

このバーガーいい値段するなぁと思ってはいたが、出てきたのは、素晴らしいボリュームの品だった。

まず付け合せにフライドポテトが付いているのだが、これの量がすでに2~3人で食べてもしばらく持つであろう量がある。

そしてハンバーガー。

こっちは手で持って食べる事は絶対に考慮されていない。

巨大なパンズにレタス、手ごねだろう不格好な形のハンバーグ、

その上にベーコン、マッシュルーム、アボカドが載っていて

そうして本来具を挟むはずのパンズは中の具材を見せる為だろう、立てかけるように添えてある。


無理やり手で持とうなんて露にも思えない。

僕はテーブルに用意されていたケチャップとマスタード(これまたアメリカンな容器に入っていて雰囲気抜群)を両手に持つとぴゅるぴゅるぴゅるとフライドポテトにかけ始めた。

一通りケチャップとマスタードをかけ終えた僕は、

フォークとナイフを持ってまずはフライドポテト一本を一口で頬張る。

いたって普通のフライドポテト。奇を衒えないが故に安心して口に運べる味だ。


そうしていよいよバーガー。

なのだが。

大きすぎてどう食べ進めればいいのか、皆目見当はつかない。

店内を見渡すが先ほどテーブル席に座った人達の所にはまだ何も届いていないし、

カウンター席には僕一人。

とりあえずパンを一口頬張って、そのままハンバーグをフォークで押さえ、ナイフで一口大の大きさに切る。

そうしてフォークで肉、アボカド、マッシュルームにベーコンを突き刺して、

一気に頬張る!


これはケイジャンソースと言うのだろうか。

独特のソースの味にアボカドが溶けていき、マッシュルームがそれを引き立てる。

これだけで一つの料理のようなのに、これらがすべてハンバーグを引き立てる前座なのがすごい。

ベーコンの塩気がまじり、肉汁が群を成して口の中を蹂躙していく。



―――目を瞑ると、まぶたの裏に浮かぶのは、

いけどもいけども何もない荒野が続くルート66。

そこでなんだかごっついアメ車を横に金髪美女を侍らせて、すっとばす僕。

そんな何もない道を延々と走っていると地平線の果てに

豆粒が現れる。

その豆粒は少しづつ大きくなって行きそして正体が分かる。

クルクルと回転する看板が目印のダイナーだ。

僕たちは車から降りると、そのダイナーでハンバーガーを頼むんだ。

そうして具材がぼろぼろこぼれるのも気にせず美女とハンバーガーをシェアするんだ。



・・・実際はナイフとフォークで肉を切り分けながら、

少しづつ口に運ぶ僕。

隣には誰も居ない。

しかも量が多い。

特にポテトの量が多い。

店構えもアメリカン。ボリュームもアメリカン。これぞアメリカン。


なんとか食べ終えて、会計を済ませて店を出る僕。

胃の中でポテトが暴れているような感覚に襲われながら

駅前を放浪する僕であった。





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