第21話笑わない少女と聖女

王都ストレガ。ストレイナ王国の首都にして、古代アル=レギルス文明時代の遺跡を利用して造られた大都市である。


北に大国であるレシュトーラナ王国があり、その間にクリトフ連合都市国家を挟んではいるが、その大国の影響は大きく。

三方も他国、東からモルサル、ザハトーマ、エスカダルに囲まれているストレイナ王国。

目だった産業はなく、さりとて貧乏というほどでもない。

大国でもなく、小国というほどでもない目立たない王国であった。


建国から300年ほどそこそこの歴史を誇る国だが、王都自体は近年、といっても100ほどは前であるが、に遷都されている。


その理由こそが、神話時代E2Oにて造られ、古代アル=レギルス文明時代にも利用された無限のエネルギーを生み出す機関。 聖霊炉ル・ファーネスだった。

前に古代文明が滅んだ理由が所説ある話はしたと思う。

その中で災害説が一定以上からの評価を学者から得ている理由の一端がここ、王都ストレガだ。


遷都前にも街はあったが、小規模でしかなかった。

ちなみに、王都の三重城壁の内輪部はその当時の名残である。

王都の規模が大きくなる毎に城壁を造った結果が三重城壁となったのである。


しかしおよそ100年前この小都市で、現在魔法学園がある建物の地下から聖霊炉ル・ファーネスがあることが発見された。

これによりここが古代遺跡である事が分かったのだ。

地上部分はその魔法学園の部分のみが残っていて、それ以外の部分は土で覆われていた。

そのため発見が遅れたのだ。


歴史学者はこぞって災害説を振りかざした。 曰く災害によって古代都市が飲み込まれたのだと。

この街の側にかつて山があった痕跡が見られる。それが災害によって崩れ街が埋もれた。

これこそがその証拠であると。


そういったお偉い歴史学者の説はともかく、それを知った当時の王はすぐさま遷都を決意したという。

そして、その聖霊炉ル・ファーネスの恩恵によりストレイナ王国は、中堅規模の国として発展を遂げた。

無尽蔵のエネルギーによって大量の魔道具の稼働を可能にし、それによって人々の暮らしは利便性が増しさらに発展する。

正の連鎖と言えばいいのだろうか? それによって潤沢な資金が生まれ、その資金力でクリトフ連合都市国家や三方の国との同盟を結ぶことに成功した。


しかし、今から20数年前、現国王マジフ二世の即位から10年も立たない内に聖霊炉ル・ファーネスがその機能を停止した。


停止してすぐエネルギーがなくなる訳ではなかったのは幸運であったのか。

現在では残っているエネルギーを主要な施設の稼働のみに留めているが、試算ではもう4~5年も待たずエネルギーは無くなるだろうと言われていた。


遺跡によろ様々な恩恵と、それに寄った強気な外交。このままではそいういった他国にない利点を失う。そうなれば、強烈なしっぺ返しを喰らうだろう。

旨味がある今の内が狙い時であるのだから。


新世歴1104年、マジフ二世の即位から28年経った時のことである。





王都ストレガは、現在お祭り騒ぎで賑わっていた。

突然降って沸いたニュースに国民の表情は明るい。昼間から仕事中の男達は浴びるように酒を飲み、その妻達もそれを止める様子もない。

ニュースが発表されてより3日、連日屋台が立ち並び、それに当て込んで王都にやってくる商人の数も増え続けている。

旅芸人もここが稼ぎ時と大広場は順番待ちの芸人が多数見られるという不思議な現象もおきている。

老若男女、王都に生きる皆が浮かれ、騒いでいた。


誰かが音頭を取る。これはこのお祭り騒ぎの王都のいたるところで見られることだった。


「皆! 飲めや! 歌えや! ストレイナ王国万歳! マジフ陛下万歳! そして称えよう! 我らの新しく生まれた希望の名を!」


その声にあちこちから声が上がる。


「「「ストレイナ王国万歳! マジフ陛下万歳!」」」


そしてその名を呼ぶ時、彼らの声はひときわ大きく、そして歓喜に満ちている。

称えしその名は……





「「「我らの希望! 聖女ジョリーナ様万歳!!!」」」


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