388文字の世界「祖母の英断」
「節子さん、おはよう!」
「おはよう節子さん!」
文庫本から顔をあげると、クラスメイト二人がいた。
特に親しいわけではないが、最近やたらと話しかけてくる。
理由は至極単純、私をからかうためだ。
私の名前は林節子。いや真理子ではない。
祖母がつけてくれたこの古典的な名前を、私自身は割りと気に入っている。
節度の節、話の筋、道理としての筋。
ぴんと伸ばす背の筋、節分の豆は好き。
とはいえ某太郎君よろしく、この手の名前はいじられやすいのもまた事実である。
目の前の二人はいかにも現代っ子といった感じで、髪を染めて毛先を巻き、薄く化粧もしている。
黒髪で眼鏡の私は名前を差し引いてもダサく、いじるにはかっこうの標的なのだろう。
とはいえ私は少しも傷ついたりしない。
むしろこの名をつけてくれた祖母に感謝してもしきれない思いになる。
「おはよう、山口
今日も私は笑顔で挨拶する。
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