329文字の世界「合唱」

その日、登校時間になっても男の子が家から出てこなかった。

仲間に頼んで窓から確認してもらったところ、男の子は風邪で寝込んでいるようだという。

昨日までは元気だったのに。どういうものかは知らないが、季節的に五月病というものだろうか。

仲間の一人が、なんとかして元気になってもらおうと言い出した。反論する者はいなかった。

様々な案が出されたが、最終的には歌を送ることになった。

それが自分達にできる唯一のことであったし、雨の日なのも都合がよかった。


いくぞ?せーのっ!


ゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコゲコゲコ、ゲコゲコクワックワックワッ、ゲゲゴゲコゲコゲロゲロゲロゲロゲロゲロ───


窓の下で一斉に喉を震わせると、男の子は跳ね起きベッドから転がり落ちた。


よかった、元気になってくれた。

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