6-就活
実習を終えて、教員採用試験を受けた。
それまで、彼女に支えられながら必死に勉強してきた。全く自信はなかったけど、その努力が実を結んだ。発表当日、インターネットで確認した。
受験番号と確認して・・・あった!
1次試験合格。まさかの結果に僕は舞い上がった。まだ、2次試験はあったけど、すごく嬉しくて努力のかいがあったと思えた。それまで、採用試験のために対策してくれた教授たちにも、報告した。みんな信じられないといった顔で、ものすごく驚いて、喜んでくれた。なぜそんなに教授たちが喜んでくれたかというと、その大学で現役で1次試験に受かったのは、僕が初めてだったからだそうだ。
でも、問題は2次試験だ。2次試験は面接がある。ぼくはどういうスタンスでいくのか迷った。女性らしくしていくのが普通か。それともいつも通りいくべきか。今思えば、いやでも合格することだけを考えたら、女性らしくしていくべきだっただろう。でも、僕はいつも通りのスタンスでいくことにした。短髪、メンズスーツ、ノーネクタイ。教育者としては不合格だと思う。それじゃ子どもたちが混乱するだろう。そのとき思っていたのは、女性らしくしていって、あとから実は違います。僕はこういう人間なのでとカミングアウトするのはずるい気がして、いつも通りで臨むことにした。それが、原因かはわからないが、不合格。でも、少なからず影響はしていると思う。
試験が終わって僕は燃え尽き症候群になっていた。もうそれから就活するなんて考えられなかった。試験に落ちた人ならほとんど考えると思うけど、講師になろうと考えていた。でも、周りのすすめもあって就活がどんなものなのか、経験するのも大事だと思い何社か受けてみた。教員になったときに少しでも役に立てばと思ってのことだった。でも、やっぱり試験のときと同じで、企業側からしたら、採用するにできないと思うし、なんとも扱いにくかったと思う。やっぱり世間では、GIDに対する理解は低いし、偏見の目でみられることが大半であることを突き付けられた。大学生活の中で、周りがGIDの人たちばかりで、僕の感覚も世間一般とは離れてしまっていたからだなと思った。その環境に染まっていた僕は、外に出てしまったら、そのギャップを埋めることができなかった。
結局、僕は卒業後、講師になるのはやめた。母の一言がきっかけだった。
「教員畑しかしらない教員になってほしくない」
僕はこの言葉に共感し、一旦就職することにした。ただ、会社員になるのも釈然としなかったし、なにかやりたいことはないか考えることにした。
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