5-教育実習と社会人になるということ


勉強も実習も必死になった。教員を目指す者は必ず経験する教育実習。

たった3週間だったけど、この実習で大きな思い出ができた。


でも、実習に行く前は見た目とかどうしていこうか悩んでいた。いつもなにか気合を入れるときは短髪にしてからいくけど、子どもたちはどんな反応をするのかとかいろいろ気になってしょうがなかった。それに、実習とか就活が始まると必ずフォーマルな恰好をしなきゃいけない。これにも悩んだ。メンズ用で揃えたいけど、話したら男じゃないとわかるし、履歴書みたらわかるし、相手はどう反応するのかなと。結局、どっちも揃えた。その時によって変えよることにした。就活は、ネクタイ締めず、メンズ用スーツで活動した。実習もスーツが必要なときは同じ格好だった。結局、実習にはいつも通りの自分で行くことにした。


それでも、子どもたちはそんなこと気にせず接してくれた。でも、案の定保護者からは男の先生かと思ったといわれた。でも、僕にとっては別に失礼なことでもなんでもなかったし、むしろ嬉しいことだった。実習も僕らしくやらせてもらって感謝している。


そんな中、クラスの一人の生徒がある時から、心を開いてくれるようになっていた。その生徒の話を聞いてあげることで、その子のためになっていたようだった。あとから知ったことだけど、その子はそれまで先生を信用できなかったといっていた。でも、僕と出会って一緒に過ごしたことで、その子は夢を見つけることができたと言ってくれた。

「将来は体育の先生になります。先生のおかげです。」

生徒からのそんな言葉は願ってもない言葉だった。たった3週間の実習だったのに。その子のおかげで僕もなお教員への思いは強くなった。


実習後の行事にも卒業式にも顔を出させてもらった。毎回、心が打たれた。その生徒たちも今じゃ大学生だ。その子は途中迷ったみたいだけど、それでもやっぱり教員になりたいと今でも夢に向かって頑張っている。今でも、僕の心の励みになっている。そして、成人式には顔を出してほしいと連絡してくれた。そんな風に今でも慕ってくれる子どもたちの成長は今でも楽しみで仕方ない。いつかその子たちと杯を酌み交わせるときがきたら、嬉しい。だから、僕も今こうして胸をはって会えるように前を向いている。

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