才能とは

 「才能」……都合のいい言葉だ。

 何かあれば、その一言で片付けられてしまう。その才能の下に、どれ程の努力が積み上げられていても、周囲からはその一言の評価で終わってしまう。


 しかし世の中には、確かに「才能」に恵まれた人がいる事も事実だ。

 そして小説における才能を上げるとするならば、


「これは今までにないアイデアだ、と周囲に思わせる事が出来る才」


だろう。

 こう言うと、まるでひがみややっかみと取られるかもしれないが、実際はそうじゃない。

 何故なら、今考えられている殆どの作品は、もうすでに既出している物のオマージュに他ならないと考えるからだ。


「そんな事は無い!俺の作品は完全オリジナルだ!」


 恐らくそうだろう。それを否定はしない。

 しかし世に「本」と呼べる、文字を書き連ねた書物が出回って、一体何千年経っていると思う?一体世界中で何億、何十億、いや、何兆冊の書物が既出していると思うんだ?

 その中に、今現在出ている作品と類似した物が無いと言い切れるか?

 そして作者は、その作品、またはその系列作品を目にした事が無いと言い切れるか?


 もっと範囲を縮めても良い。

 子供の頃に読んだ小説、見たマンガ、アニメ、それらが心の中に残っていないと言えるのか?影響を全く受けていないと?

 自らの作品に、その影響が多少なりとも受けていないと言い切れるのか?


 そんな作者は、きっと稀有だ。

 元々、小説を書こうとした時点で、小説と言う物を知っていると言う事になり、以前に小説を見たと言っている事になるのだから。


「いや、俺が読んだジャンルと、今のジャンルは違う!」


 確かにそうかもしれない。そして、その設定や世界観は、オリジナリティーにあふれているかもしれない。

 ならばストーリーは?展開は?キャラの話し方や、掛け合いは?

 自分が書いている時に、何故かそのシーンが浮かんでこなかったか?

 それは良く考えれば、いつかどこかで見た、記憶に残るシーンでは無かったか?


 別に俺は、それが悪いと言っているんじゃない。

 著作権に引っ掛からなければ、きっとそれはオリジナル作品だ。

 勿論、他の作者に迷惑をかける様な事は論外だが。


 俺が言いたいのは、そう言った「正真正銘、完全なるオリジナル作品」を作り出す事は難しい中で、如何にそれを見た人間が「おお!これは新しい」と思う様な作品に仕上げる事が出来るか、と言う事だ。

 それが出来ても、文章力、構成力、執筆力等、他に必要な要素はゴマンとある。

 だが、まずその着眼点を持っているかどうかが


「周囲に新しいと、面白いと思わせる才」


なのだと、俺は思う。

 奇抜で、突飛で、非常識であれば良いと言う物では無い。

 作品として間違いなく仕上げる事が出来、世に出して恥ずかしくないと言う範囲で仕上げる前提であるが。


 その才能があれば、普通に出来上がった作品であったとしても、周囲の関心を惹く事は間違いないな。

 勿論、それが売れるかどうかはまた別の才が必要になるのだが。


 ―――しかし、一口に才能と言っても、一体幾つ取り揃えればいいんだろうな。


 

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