第17話 仮面の男と黒い翼

「攻撃、仕掛けます! 続いて」

キッドさんは、僕らを加勢と受け入れてくれたようで、指示を続ける。

「分かりました」

「了解です」

「よそに被害なんざ、もうださせねえ」


「はっ!」

キッドさんの魔弾が煙を切り裂きながら、仮面に吸い込まれていく。

「ちまちまとなんだ。こんなもので倒せると思っているのか、ここのバカは」

痛くも痒くもないというふうに、片手で魔弾を握りつぶして見せた。

その眼光は、殺意に煌めいている。


「くらえ」

僕は、その腕を斬り落としにかかる。しかし、容易に避けられ、返しの刃も、力任せな横薙ぎに勢いをそがれた。

「援護のつもりなのか」


僕は、剣で威嚇しながら退く。あいつの追撃が来ませんように。

「お前らはなぜ、村を破壊する?」

レフトの問いに、敵は僕への追撃をやめた。


ナイス、レフト。


「住人の家を破壊して、何がしたいんだ?」

「人は、奪う。奪って、食らって、壊して生きる」


キッドさんと、ローさんは、じりじりと仮面を包囲する。


「大昔から、われらが奪われてきたものを、奪い返す。我らの計画を邪魔するというのなら、ここで殺してやる!」

バラバラと、全方位に放たれた敵の魔弾。レフトの叫びが聞こえていた。

「あいつ、味方にまで放っていやがる!」

あがる炎の柱を避け、反対側で戦うキッドさんが見えた。

「視たことない戦い方だ」

その大剣に吸い込まれていくような、魔弾。いや、魔弾に大剣を当てているようだが、爆発しない。


ここまでくれば、敵に僕の姿は見えていないはずだ。

片手には、仮面の男が引きずっていた鉄球。敵の魔弾が、近くをかすめた。


「今だ」


高めた速度を解き放つと、一瞬鈍くなった鉄球だったが、爆風を受けた直後からが早かった。

「サイコパワーもコントロールできている」

軌道上に現れる建造物。

「計算通りだっ」

握ったこぶしは、その一撃を確信したからだった。

「いっけえええーーーー!!!」

建物によって軌道をずらされた鉄球は、レフトに誘導された襲撃者の、そのスカした仮面の裏に重い一撃を見舞う。


包囲網の外へはじき出された仮面の男。


敵の軍勢は、一部はじりじりと後ずさっている。「スター」本隊の勝利だ。


「ボスから撤退命令だってよぉ、息子様ぁ……あ、のびてるね」

まのびした声が降ってきた。

「飛んでるっ……!?」

「黒い翼……」

空に穴が開いたような黒い翼を持っている者が、仮面の男の側に舞い降りた。こいつは、半分じゃない仮面だ。

加勢か……?僕たちは、仮面の男にさえ苦戦していたんだ。勝てる見込みなんて……。


「あっ、おれ“息子様”をお迎えに来ただけだから」

はあ?戦わないといっているのか?


「息子様ぁ、ボスの命令はぁ、機能停止にすればいいだけでしたよねぇ?」

襲撃者は、抱えられて空へ去った。敵の軍勢もいつの間にやら消えている。

「勝った……のか……?」

「第三隊長……これからどうするんだ?もう、スターにはいられないだろ」


「もちろん、考えているわ。次のキッドも」

ローさんの問いに、キッドさんは答えながら歩みだした。

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