彼女が落とした夏

黒旗 木久

プロローグ

僕ら四人は、幼馴染だ。

今日は5月27日。いつものように四人で集まって学校に行く。

夏も近いので、空はうざったい程晴れ晴れしている。

いつもの場所に着いた。なんだかんだ言ってやっぱり僕が一番だ。

そこに、いかにもアホみたいな声が響く。

「ハ-ルカくん!おやおやぁ?寝癖がついておるぞぉ~」

この能天気なやつがナツナ。海野 夏菜。

今日もあいかわらず機嫌がいいようだ。

「ちょ、重い重い!」

背中にのしかかってくる。本当はちょっとドキッとしたなんて死んでも言えない

「おはよ...ちょっと何?そういうカンケイなわけ?!もーナツナったら早く教えなさいよー!邪魔しちゃったカンジ?」

この早とちりしてるやつがフユハ。雪川 冬波。

こいつも幼馴染。

「ちげーよ...朝っぱらから勘弁してくれ...」

「なんかうるさいと思ったらやっぱりお前らか」

最後に、四人組の母ちゃん的存在アキト。紅葉 秋人。

こいつがいなかったらやっていけないって程のしっかりもの。

「ぐっどもーにんぐ!アキトくん!」

「あ、おは~」

「早く学校行くぞーまた遅刻したいのか」

「いやアキトが一番遅かったじゃん...」

なんやかんやで、僕たち四人はそれなりの青春(?)を送っていた。


学校についてからも、変わらずグダグダとすごした。

僕はいい友達に恵まれている。いつも友達がそばにいて、幸せものだな、と思う。楽しいし。

でも、たまにふと、生きているのがつまらなくなる。

このまま卒業して、就職して、家庭ができて...なんだか、普通すぎてつまらないと思う。

そんなくだらないことを僕はずっとかんがえながら生きている。


放課後、ナツナと二人っきりで帰ることになってしまった。アキトとフユハは、先に帰りやがった。

たまにあの二人はこういうことをしくんでくる。止めて欲しい。

二人のにやけ顔が簡単に想像できる。

今にも心臓が飛び出しそうだ。二人っきりはやっぱりなれない。

彼女にこの心臓の音が聞こえてないかと心配になる

なにか話さなくちゃ...

そう思っていると、彼女が通行人とぶつかってしまった。

その衝撃で彼女のかばんの中身が出てしまった。

謝りながら通行人は去っていった。

せめて拾ってくれてもいいじゃないか、と思いながらも僕は拾おうとする。

ひとつのノートに目が留まった。綺麗な字で、日記と書いてある。拾おうとしたら、彼女が焦ったようにその「日記」をばっと、かばんの中にしまった。

「え...」

驚きを隠せず、僕は声を漏らす。

「あ...に、日記ってホラ、あんまり読まれたくないじゃん?」

彼女は笑いながらそういったが、それにしても少し不自然だったと思う。

心配と同時に、恥ずかしい話だけど僕にも見られたくないのか、とちょっとショックだった。


別れ道までは、さっきのことにはいっさい関係のない、他愛もない話をした。


今思えば、このときからもっと気にしておくべきだったんだ。

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彼女が落とした夏 黒旗 木久 @miyu03290427

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