第9話

 勇者は再びギルド兼酒場兼(以下略)に突入する。多くの冒険者たちが勇者の行く手を阻もうと入口に殺到するが、よけてやり過ごす。


「まるで某VRMMOものの……」


「俊敏さ」


 そう言っている二人は再び屋外に押し出されてしまった。


「厄介者がいなくなった」


「こっちに勝手口があったのじゃ」


 裏手の交換所側の入り口からタイムラグなしで入ってくる二人。


「先程、妾を『厄介者』と愚弄する発言があったのじゃが」


 拳を握りしめ、勇者から目を逸らす。


「もっと勇者に嫌がらせをするぞ、おーっ! なのじゃ」


「そうですっ!」


 司祭の抱きつき攻撃。勇者は反射的に避けた。


「それにしても、すぐ裏口から入ってきたよな」


「瞬間移動と針の投擲とうてきは得意ですの、お姉様っ!」


「声がおばちゃんっぽくなってないか?」


「お姉様を同居という二十四時間監視下に置いてハートフルheartfulディズdaysを満喫するのですっ!」


 目が……いつもと同じである。


 周囲の旅慣れた猛者どもが勇者一行に好奇の目を向ける。


「とりあえず、手続きを……って、どうすればいいの?」


「妾も来たのは初めてじゃ」


 勇者は近くにいる、職員とおぼしき女性に声を掛ける。


「あのー、ちょっとよろしいですか?」


「ここは冒険者ギルドです」


「ごめんください、手続きはどうすれば?」


「ここは冒険者ギルドです」


 ――職員は通り一遍のセリフを返すだけ。


「埒があかないわ。わたくしが聞いてきますっ!」


 というなり司祭は片っ端から冒険者に声を掛ける。


「武器や防具は持ってるだけじゃダメよ。装備しなきゃ」


「終わるときには王女さまに謁見してパスワードをもらわないと」


「改行したあとにもう一度改行して空白行をとると、格段に読みやすくなりますわ」


「一部のワープロソフトのオートインデントの関係で行頭の一文字空けが消える場合があるの。気をつけてね」


「一話あたりの文字数は多くても2000字程度がいいわ。長すぎるとPVプレビュー数が増えないばかりか、しおり機能が使えず読者の不満がたまるのよ」


「書いたデバイス以外でも自分の小説を読んでみて。機種によって印象が大きく違うから」


 冒険だけでなく、Web小説の初心者への忠告を次々と聞き出す司祭。


「勇者さま、わかりましたっ! まずは1番の窓口に並ぶようですっ!」

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