トカゲ怪人さん、進捗どうですか。

momoyama

序【トカゲ怪人さん、進捗駄目です】

「残念だったな、アレグライダー! この女は俺に倒される運命なのだっ!」



 採掘場で、トカゲの頭と人の胴体を持つ奇怪な生き物が笑う。彼は世界征服を目論む秘密結社、ヤバノーキの最新科学が生み出したトカゲ怪人である。体格は大柄だ。

 

「やめろっ、トカゲ怪人! サキに手を出すな!」

「サキちゃんを人質にされちゃ、こっちは何もできないよっ」


 トカゲ怪人と対峙するのは、顔面をヘルメットで隠したドギツイ色彩のスーツを着る者達。彼らは世界の平和のために戦う三人組の戦隊ヒーロー、アレグライダーだ。

 力強さと筋肉感を強調したデザインの真っ赤なヒーロースーツを着て、力強く叫ぶ男がレドグライダー。スタイリッシュな青いヒーロースーツを着て、やや慌てた声を発する男がブルグライダーだ。どちらも格闘技術は高く、怪人であれば一人で戦えるだけの能力を持っている。

 ……だが彼らは普段のような強さを発揮できない。トカゲ怪人の隣に、縄で縛られた人質がいたからだ。


「ごめんなさい、二人とも。私のせいでこんな事に……」


 人質はアレグライダーの紅一点、サキグライダーだった。紫色の可愛いスーツを着ているため、サキと呼ばれている。彼女だけ色の部分が日本語だが、これは「パーグライダー」とか「プルグライダー」とかいう変な名称になるのを避けるための処置である。

 戦隊のムードメーカーであるサキが捕えられている状況。それだけでアレグライダーの戦意を割くのには充分だった。


「グヘヘ、さぁ嬢ちゃん。アレグライダー達に遺言を言わせてやるよっ!」


 トカゲ怪人はニタニタと、サキグライダーのバイザーをのぞき込みながら喋る。サキを絶望させ、アレグライダーの精神に揺さぶりを与える為の演出なのだろう。「かわいい顔を見せたい」と言う制作者の意図で、サキグライダーだけが表情の見える透明バイザーヘルメットにしていた点も、トカゲ怪人の有利に働いた。


「……いいえ。それより貴方に聞きたいことがあります」


 しかしサキはしっかりとした表情でトカゲ怪人と向き合う。遺言などより、トカゲ怪人に物申したい事がある。そんな感情が透けて見える。


「へっ、いいぜ。冥土の土産に何でも答えてやらぁ!」


 トカゲ怪人は更に顔を歪ませて笑う。サキからの質問を、これから起こる最悪なイベントの余興にする気であった。


 そして、トカゲ怪人の許可を得たサキグライダーは……その質問を彼にぶつけた。



「同人誌の方、進捗どうですか?」



「ぎゃあああああっ!?」


 その一言と共に、トカゲ怪人は爆裂消散! 爆音と共に消え去ったのであったっ!





「え、なんで爆発したの!?」


 トカゲ怪人の爆音と共に、採掘場にはレドのツッコミも響き渡った。

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