第50話『言葉の骨』

意地悪は小骨が多く

はんなりは腰がやわらかい


頑固は前屈が苦手で

真実はいつだって骨太


絶望の骨は黒く、ひしゃげ

花魁(おいらん)は全身とろけて溶かす技がある


爆音はとがり

風はたおやかにしなり

月の骨は金色に響く


妄想の頭蓋は肥大化して軋み

聖女の鎖骨をなめれば濃密な背徳感


夢は七つに割れて拾えず

死は乾いて悲しいほど軽い


愛の骨は死してなお人肌にあたたかく

嫉妬はトゲつき

イジメはイバラつきで

自分まで痛い


空の背骨は虹となり

宇宙の背骨は天の川


やがて誰もが笑顔で骨抜きにされ

土に還る


言葉の骨よ

僕という骨よ

灰となって

世界に優しく降りしきれ

世界に優しく降り積もれ


言葉の骨たちよ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きしむ世界詩 うたがわ きしみ(詩河 軋) @kishimi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ