助けて!

第2話助けて! 

森野さんは、学校にいるときみたいに、冷たくて誰も近付けないオーラを発している。


「なに?」


ちょっと怖いその言い方にひるんでしまう。


絶対この人、私の事キライだ…。



ふと、森野さんの視線が私から外れた。


視線を追うように、振り返ると、ヤツが立っている。


大きく肩で息をしながら、ヤツはゆっくり歩いてこっちに近づいてきた。


「おねがい!助けて!」


「どうしたの?」


「追われてるの!」


「警察に?!」


何か悪い事をしたのかと森野さんは、聞いてきた。


やっぱりそうなるよなあ…。


「違うの!アイツは警察だけど悪いヤツなの!」


意味がわからない…。解ってもらうには、どうすればいいの?!


「まったく、何で逃げるんだ?」


ヤツがもっともらしい事を言いながら近づいてきた…。


「ゴメンあんまり意味がわからないんだけど?」


私もそう思う。誰が見ても、絶対私があやしい…。


「つまり、アイツが悪いヤツで、アナタが追われてるの?」


「そう!」


「でも、アイツは警察官だよ?それに…」


「それに?」


「悪いヤツはたいてい追われるもんだよ?」


もっともだ。そして、追うのが警察官だ。


「でも、そうなの!」


もう泣きそうだ…。目がじわっとなるのがわかった…。


「お願い!信じて!」


ガシ!


ヤツだ!後ろから、肩を掴まれた…。


「ちょっと来て貰うよ!」


唸るような低い声でヤツは言った…。



もうダメだ…。殺される…。



身体中がガクガクと震えた。


「ちょっと待って。」


森野さんはそう言った瞬間!



ドカッ!



森野さんの鞄がヤツの顔をオモイッキリひっぱたいた!



「乗って!」


森野さんはパッと自転車に飛び乗ると、そう言った。


私も夢中で自転車に飛び乗る。


ヤツは倒れている。


ヨタヨタと自転車は走り出した。


「コノヤローー!」


この世の物とは思えないくらい暗く歪んだ声が響いた。


身体中に鳥肌が立つのがわかる。


ようやく、自転車がスピードにのり始めた。


助かった!さすがに自転車には追い付けまい!


ホッとしたその時…。



パーン!!!



銃!?撃ってきた!?



森野さんは自転車を止めて振り返った。



イヤ!止めちゃダメだろ!?



森野さんは凄い眼差しで警察官を見ていた。



「なるほど」



なるほど?って言った?



「アイツは悪いヤツだ!」



全て理解した、と森野さんは言うと、前に向き直った。



「掴まって!行くよ!」



自転車が凄いスピードで加速し始めた。


ギューーン!



信じられないスピードで自転車は加速していく。



「待てー!」



雄叫びを上げるヤツの声もすっかり遠のいてしまった。


それにしても、なんだ?このスピードは?!


両手を回した森野さんのウエストは、私なんかより全然細い。


足も、モデルみたいに細くて嫉妬するぐらいだ。


どこから、こんなパワーがでて来るんだ?



自転車は、グングン夜の街を突き進んで行く。



顔に当たる風が凄くキモチイイ!



やっと落ち着いてきた頭で、私は考えていた。



”森野さんに悪いことしたなあ”



こんな事に巻き込んじゃったっていうのもそいだけど…。



学校とかで意地悪な事イッパイしたのに…。



安心したら今度は違う意味で泣きそうになった…。


あっという間に駅前にでた。


ひとまず、ここまで来れば、人も多いし安心だ。


森野さんと私は、ひとまず自転車から降りた。


「ありがとう。ゴメンね」


「いえ」


素っ気なく返事を返すと森野さんはジッと私の目を除き込んできた。


パッチリとした大きな目は、マバタキをすると長いマツゲがばさばさと動く。


黒目が大きいこの目に見られると言葉がでない…。


この取っ付きにくさがクラスのみんなの反感を買ったんだ。


私だって、みんなに混じって、笑っていた。


そんな私を森野さんは助けてくれたんだ…。


「何があったの?」


急に言われてドキッとした。


「え?!何がって?」


「追われてたんでしょ?悪いヤツに」


「ああ!そうなんだよ」


私は、森野さんに自分がみた一部始終を教えた。


森野さんは身動きもしないで、黙って聞いていた。


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