「育児、楽しんでね(^_-)☆」

 楽しめるのに越したことはありませんが、たとえ楽しめていなくともよろしいかと……。お世話が普通にできているようなら、気に病む必要はありません。こういう説も聞いたことがありますよ?


普通にできる << 上手にできる << 楽しんでできる


 楽しめるというのは、いわば達人の域というわけです。んなもん目指せるかい!って話ですよ。下手でも楽しめている人がいるとすれば、その人はそれこそ才能のある人なんじゃないですかね。楽しめればどんどんやるし、どんどんやれば上達も早いですもんね。


 世の中には「ほら、育児ってやり方ひとつでこんなに楽しくなる♪」みたいな読み物もあまたあると思います。でも、ほんっとうに凹んでいて元気がないときや、どん底で鬱々と悩んでいるときには、あまり読まないほうがよろしいかと思われます。


 「頑張って楽しむ」とか「楽しむ努力をする」とか、何かヘンじゃないですか(笑)。楽しいことって頑張らなくても楽しいですもん。周りからすれば、一生懸命に頑張っているように見えても、自分は夢中になっているだけで決して辛いわけじゃない。心から楽しんでいるときって、そんな感じだと思うのです。


 まあ、勉強や習い事なんかだと「楽しいと思えるようになるまで頑張る」ってことがあるかもしれません。ピアノなんて、ある程度練習を重ねてからでないと、好きな曲が弾けないし。語学だって、会話を楽しめるようになるまで長いですよね。


さて、それでは育児にその必要があるでしょうか? そもそも、頑張ったら楽しくなるのかしら? 楽しむための努力ってなんでしょう? 育児本を読んで勉強する? ママ友づくりを頑張ってみる? どれもこれも的外れな気がしますよね。


 大切なことは、育児を楽しむことではなく、母親自身が自分にとって楽しい時間をもつことです。育児って、ちょっと特殊ではあるけどやっぱり仕事だと思うのですよ。だから、楽しめなくてもおかしくない。おもしろくなくても仕方がない。だって、仕事なんだもの。


誰だって得意な作業と不得意な作業があるものです。仕事には向き不向きがある。だから、育児だってそうなのです。「営業、楽しんでね☆」とか「経理、楽しんでね♪」なーんて普通言いませんよね(苦笑)。


 努力や工夫をするのであれば、育児を楽しむためでなく、自分にとって楽しい時間をすごすためにしましょうよ。例えば――録画したBLアニメを(え?)ゆっくり堪能するための時間を確保する!そのために、子どもを早く寝かしつける工夫をする!とか(笑)。


 育児を楽しめない=子どもへの愛情がない、というのは間違いです。大変なもんは大変。苦手なもんは苦手なんですよ。残念ながら、愛情が困難を打ち消してくれるわけじゃないんですよね。そして、困難を感じているからといって、愛情が不足していることにはならないし、まして子どもへの気持ちが偽りなわけがありません。


愛情と困難が常に並立しているのが育児であり、そのジレンマに世のマジメな母親たちは苦しめられてしまう。そんな気がしてなりません。


 「育児楽しんでね」というバカみてぇに高い要求は、完全に男社会の都合ですよ。女性がニコニコ~キラキラ~っと育児を一手に引き受けてくれれば、男性は気楽ですからね。「女房は好きでやってんだから」と、堂々と飲みにいけるってもんです。


 そうそう、まえにこんなことがあったんです。友人のお子さんの幼稚園が仏教系の幼稚園で。しかも、子どもの持ち物は手作り推奨というハードなところでしてね(汗)。御数珠を入れる数珠袋とか要るんですよ!それで、友人は好きでもない裁縫を頑張ってチクチクやっていたそうなんです。そうしたら、大変な思いをして作業している妻に向かって夫がこう言ったのだとか――。


「それも母の喜びでしょ」


私、よその旦那様なのに思わずぶっ飛ばしに行こうかと思いましたよ、ええ。つまりまあ、こういうことなんですよね。そりゃあね、母親は子どものために頑張りますよ。でもね、子どもへの愛情があるからって、嫌いな裁縫が楽しくなるわきゃないんですよ。んなこと、あたりまえだっつーの! あらやだ、私ったらもうまたこんな乱暴な言い方をして……(苦笑)。


 子どもとの時間をめいっぱい楽しめてなくとも、普通につきあってあげていればそれで偉い。安全な環境を整えて、必要な見守りさえできていればOKなんじゃないですかね。たとえ――「子どもの相手、ちょい面倒だなぁ。だるいなぁ」と心の中で思っていたとしても、です。


 育児楽しまなきゃと追い詰められてカリカリするより、自分の時間を作りましょうよ? 大好きな深夜アニメを見れば元気が出て(え?)、子どもにだってちょっと優しくなれるかも。人間、楽しみが待っていると思えば頑張れたりするじゃないですか。


 楽しむべきは、育児という作業ではなく自身の人生です。子どもの人生がかえがえのないものであるように、母親自身の人生もまたかえがえのないものです。決して粗末にされていいものなどではないのですから――。


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