第39話 メイシア達のユーリを探すための考査
「また負けましたぁぁぁっ!!」
お小遣いを少しだけ投資して賭けてみようとしたらまた負けました。思ったよりもロボット関連の会社は儲けがでないみたいです。アンドロイドの開発とか大変ですしね。いえ、設備が悪いだけでしょうか?
「メール?」
考え事をしていると、着信音が響いたので携帯端末を確認します。相手はディーナちゃんのようで、緊急の呼び出しみたいです。すぐにログインする時間を指定して送信します。相手からも了解という返事がきたので、今の間にトイレに行ってパジャマに着替えます。ベッドには汗などを吸収するマットを引いてから寝転がり、ログインの時間を指定します。時間を指定すると接続機械の左端にカウントダウンが表示されます。
それから軽く情報収集のためにインターネットを調べていくと、新しいイベントの告示がでていました。そちらを確認してみると、おそらく緊急の呼び出し内容がわかりました。
詳しい情報を調べていると、竜族、巨人族、人族など様々な人やモンスターが金竜であるユーリを狙っています。まだユーリの情報はばれてはいないようですが、掲示板にはちらほら少し前に金髪の竜族の少女をみたという目撃情報がでてきています。ただ、そちらはすでにゲーム内で数ヶ月経っているので自機的におかしいのでは?
とかいう感じで正体には辿り着いていません。こちらは素直に良かったと思います。ユーリがどう行動するかわかりませんが、どのようになるか不明ですし。
【指定された時間の100秒前になりました。音声によるカウントダウンを開始します。キャンセルする場合は停止命令をお出しください】
目を瞑って待っていると音声による自動接続が開始されました。
【
その言葉と同時に私の意識は失いました。
※※※
意識が覚醒すると同時にアクアリードにある宿屋の天井が視界に映ります。どうやら、ちゃんとログインできたようですので、身体を起こします。
周りをみると、私と同じようにベッドにディーナとアナスタシアの二人がログインしてきた。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはよ~」
3人で挨拶した後、不思議に思って周りを探すけれど、そこには本来いるはずの子がいない。
「アイちゃんがいませんね。どこにいったのでしょうか?」
「わかんない。ログインしたら、もういないみたいだし」
「もしかして、お兄様のところに向かったのでしょうか? メイシアさんならどうなっているのかわからないんじゃないですか?」
「母親だから、いけるかもしないね」
「確認します」
アイちゃんのステータスを確認すると、すでに活動状態になっていました。
名前:アイリ
種族:竜族
関係:娘
位置:イベント中のため表示不可
備考:呼び出し不可
彼女の現在位置は表示不可。これはユーリとまったく同じ状態ということなので、運営側の関与していますね。アイちゃんがどうなっているかはわかりませんけど、言ってしまえば彼女の親権はユーリが基準になるのは無理がありません。
「所在地は不明です。イベントのためですね」
「やっぱり……」
「それで緊急事態ということでしたが、それはこの金竜争奪戦ですよね?」
「そうだよ。私達もいきなり告知されて驚いたよ」
「お兄様に連絡を取ってみたら、途中で切れてしまいました。おそらく、イベントに参加したのでしょう」
「向こうから連絡はないのですか?」
「連絡は全て遮断されています。おそらく、ログアウトしてリアルで連絡を取れば問題はないと思います」
確かにいくら運営とはいえ、リアルで禁止させることは無理です。なのでリアルで連絡を取るのはできますね。
「なるほど、それで手段はありますか?」
「一応、書き置きを残しておきました」
「夕食時には一緒になるからどちらにせよ、情報は入ってくるよ。それで問題はこれからの行動なんですけど……イベントに参加するよね?」
「お二人の意見は……」
「当然、参加します」
「わかりました。私も参加させてもらいますね。ユーリもアイちゃんも心配ですからね」
「ありがとう。それじゃあ、これからの話をしようか♪」
楽しそうに満面の笑みで私に抱き着いてくるアナちゃん。彼女達はなにかとんでもないことをしでかすつもりみたいです。
「では現在の状況を説明します。まずはお兄様……いえ、このイベント中はお姉様としましょう。お姉様の現在の居場所はある程度予測できます」
ディーナことディーちゃんが説明をしだすと、テーブルの上に腕輪を置きました。その腕輪から光が溢れて光る板を作り出しました。そこには無数のモンスターの行動が映されています。これらを考査することでユーリのことがわかります。
「ユーリはモンスターから狙われています。それも生息地域を超えて移動していると、イベント情報に書かれていました。つまり、モンスターが向かう先に彼等の狙いであるユーリがいるということです」
「そうです。インターネットに接続して複数の情報を纏めて集積し、解析しました。モンスターは間違いなく、迷いの密林に向かって進軍しています」
ディーちゃんが手に持った棒で画面を叩くと今、私達がいるアクアリードとその周辺地域の地図が表示されます。おそらく、これが前にお願いされたマップだと思います。ちなみに精巧な物ほど凄く高いのですが、この地図は機人族が精密に仕上げた物なので80000Gしていたと思います。ダンジョンでのイベントで得たお金がほぼ消えてしまいましたし。
「この辺りの地形はご存知の通り、迷いの密林を中心として構成されています。その迷いの密林を囲うようにして4つの街があります。アナ」
「ここ、水の街アクアリード。そして土の街アースリード、風の街スカイリード、火の街フレイムリードだよね」
北がアクアリード、東がスカイリード、西がアースリード、南がフレイムリードとなっています。これらの街は最初から解放されていて、自由に行き来ができます。それと4つの属性しかなく、光や闇の精霊が作った街も必ずあると思われていて、今も探索が行われています。迷いの密林そのものが光の精霊が作った物かもしれませんけどね。光学迷彩的な奴とか。
「はい。各街は各属性の精霊が作り出した場所であり、それぞれに対応する魔法や技を覚えやすく、またレベルも上げやすくなっています。また現在中立地帯である各街は竜族によって実質制圧されています」
「それってかなりまずいですよね?」
「はい。このことから人族や魔族、神族は抗議を発表しておりますが、竜族は声明として金竜の保護ができしだい解除すると仰っており、抗議を跳ねのけています」
「それって通るんですか?」
「神族と魔族は通ったみたいだよ。魔王や神王が中立地帯で行方不明になり、敵対種族やモンスターが動いているのに行動を起こさないのか? お前達の忠誠心はその程度なのか? と言われたら……黙るしかないよね」
「あははは……」
否定すればそれすなわち叛逆とはいかないまでも、非国民の烙印を押される可能性もあるわけですしね。でも、金竜の保護を理由に両種族も軍を送ろうとすると思いますが、魔族と神族はできないですね。
両軍が入れば戦いが行われて迷いの密林は混沌状態となり、ユーリがどうなったとしても収集はつけられません。おそらく、その後に起こるのは泥沼の戦争でしょう。それに一方が軍を派遣したら、相手側が自分達の場所に攻めてきたらそれこそいただけません。竜族はおそらく自らの領土の大半を捨ててでもユーリの確保に動いているのでしょう。
「わかりました。巨人やそれに与するプレイヤーの方々と戦いつつユーリを探すのですね。わかりやすくていいです」
「おお、珍しく好戦的だね」
「ちょっと嫌なことがあったので……八つ当たりがてらやらせていただきます」
「畏まりました。話を戻しますよ」
「「は~い」」
「現在、掲示板に乗っているモンスターの目撃情報などから動きを予測すると、お姉様は現在はアクアリードとアースリードの境目から中央部に向けて移動していると思われます」
ユーリの行動を赤い矢印で表示されましたが、それがいろんな方向に向かっています。モンスターから逃げているとしたら、色々となっとくできるのですが、それでも曲がりくねっています。
「これってもしかして、お姉ちゃん迷子?」
「まあ、街に来たこともありませんし……場所なんてわからないかと思いますよ?」
「最新の情報ではないのでなんとも言えませんが……」
「じゃあ、とりあえずはここで情報収集ですね」
「はい。セーフティーエリアがある中州ですね」
川の間にある橋が沢山かかっている場所にはセーフティーエリアがあります。セーフティーエリアには必然的にプレイヤーが集まりますので、情報収集には丁度いいです。といっても、この中州も結構大きいのでセーフティーエリア以外に戦う場所は多いです。
「あっ、思いだしたけど、お姉ちゃんなら空も飛べるし迷うとかおかしくないかな?」
「飛べると思っているんですか?」
「え? 飛べるよね?」
「私は知りませんが……」
「現在、迷いの密林全域に竜族の方々が血眼になって制空権を確保し、探索を行っていますよ」
「うん、無理だね」
「無理ですね」
これはどうしようもないです。しかし、ユーリが空を飛べるのなら今度連れていってもらうのもいいかもしれません。空を飛んでみたいですし。
「各自、準備が出来次第集合して迷いの密林へと向かいます。いいですね?」
「構いませんよ。消耗品の買い出しは必要ですが、それぐらいです」
「わかりました。それでは今から30分後に集合です」
「「はい!」」
アイちゃんはユーリの下にいるでしょうし、私達はユーリを探すだけです。ユーリには色々と相談したいことがありますが、今は仕方ありません。
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