第2話 ゲームの世界でのトラブル




 ゲームにログインしたので目を開ける。すると神殿の中みたいな感じがする場所が目に入った。周りを見ると大理石で作られた石の柱などで西洋風の神殿が作られているようだ。背後からは水音が聞こえて来るので背後を見ると噴水の前にボクは立っていたようで、水面に写る人の姿が見える。


「え? ナニコレ。珍百景?」


 水面に写るその人は光を受けて光り輝く金糸のような長い髪の毛をしていて、その綺麗な髪の毛がさらさらと風に揺れる。整った顔立ちに綺麗な翡翠のような大きな瞳。どう見ても美少女だ。


「っ!?」


 嫌な予感がしてアソコを調べてみる。無かった。つるぺたでストーンだった。


「運営っ、運営っ!」

「どうしたんだ?」

「大丈夫?」


 辺りを見渡して頭をぶんぶん振って探していると、心配したのか男性と女性が声をかけてくれる。


「あ、あの、ないんです! あそこが!」

「おいおい」

「女なら当然でしょ……何を言って……」

「ボク、男です!」

「うそ、だろ……」

「ありえない……」

「嘘じゃないから! 良く間違われるけど!」

「と、とりあえずGMコールじゃね?」

「そうね」

「GMコール?」

「こうやってメニューを開いてみて? あ、こうね」


 わからなかったら、お姉さんが手をとってやってくれた。すると、目の前にメニューが開いた。メニューにはステータス、アイテム、装備、スキルなどが書かれている。


「そこの下の方にゲームマスターを呼び出すGMコールってあるはずだ」

「はい。あ、これですね」

「そうそう。とりあえず、症状について書いて送るの。そうすれば向こうから連絡が直ぐに来るから」

「βの時は直通が有ったんだが、碌でもない事で直ぐ呼んだり、運営を妨害する奴がいたから変わったんだよ」

「対策としてメール対応になるのは仕方ないわね」

「それはそうですね」


 ゲームマスターさんの人数にも限りがあるんだろうし、対応できる人は限られているはずだし。


「まあ、緊急性があると判断されたら、直ぐに連絡が来るだろ」

「あっ、来ました」

「早っ!?」


 話している間にメールの着信音が響いたので、開いてみるといきなり魔法陣が展開された。そこから運営の人であろう、白衣の男性が現れた。


「申し訳ない! おそらくこちらのトラブルだと思われるのだが、一度ログアウトして身体のデータを読み込ませてくれ。その時、身体の隅々まで触ってくれ。その、問題の部分も触ってくれ」

「わかりました」


 直にログアウトして言われた通りにする。



 ※※※



 もう一度ログインすると、運営の人が誰かと連絡していた。


「終わったようだから、そちらで精査してくれ。あっ、少し待ってくれないか。今、精査させているので……」

「ええ、大丈夫です」

「それまで……君達はかの……彼の知り合いか?」

「いや、困ってたようなので助けただけだ」

「ええ」

「そうか。ありがとう。ああ、ユーリ君は少し待っていてくれ」

「名前、名乗ってないですけど……」

「ああ、管理者権限でわかるさ。それよりもそこのカフェで好きな物を頼んでくれ。君達もだ。こっちで代金は持つから」

「お、らっきー」

「そうね。ほら、おいで」

「は、はい」


 そのまま、感じのいいカフェに連れられていく。


「ここにカフェがあるのが不思議そうね」

「ここは復活ポイントやログイン場所だからな。待ち合わせに使われたりするからだ」

「なるほど」


 待ち人が来るまでの時間をつぶす為の施設なんだね。


「注文はどうする?」

「そりゃ、運営持ちなんだから高いのでしょ」

「だな。美味いのを喰いたい」

「ゲームなのに空腹とか味とかあるんですか?」

「ええ、あるわよ。それにステータスを上昇させる効果もね」

「なんで、冒険の必需品だ」

「なるほど」


 話を聞いていると、初心者だという事で色々と教えてくれた。良い狩場や習得するお勧めスキルとか。


「それで、どんなクラスをとったんだ?」

「クラス……職業だね。職業は人形師だよ」

「また不遇職を……」

「不遇職なの?」

「ええ。売っている人形は弱いし、自分で作らないといけないのよね。でも、精工に作れば作るほど強くなるの」

「だが、スキルのレベル上げに高いアイテムを大量に使わないといけないからなあ」

「布、糸、綿だね」

「ああ。戦闘に耐えられる糸とかになるから高価なんだよ」


 まあ、そうなるよね。戦闘って事は剣とかで斬られるんだろうし。モンスターの皮とかで縫った方がよさそうだ。


「自力で作る事は?」

「もちろんできるわ」

「じゃあ、大丈夫かな」

「え?」

「本職なんで」

「そ、そうなんだ」

「じゃあ、強いのを作れるかもな。出来次第で戦闘力とかも変わってくるし」

「確か、評価がB以上で魔法を使えるんだったわね」

「じゃあ、作ってみようかな」


 アイテムから初期装備なのか、裁縫セットと材料の布とかを取り出す。


「あ、どうせならこれを使え。要らない余った皮だ」

「いいの?」

「どうせ端材だからな。小さすぎて使えん」

「じゃあ、こっちも何か上げるわ」

「ありがとう。今度お礼するね」

「むしろ、ここの高級料理が食べられたんだからそれで十分だな」

「そうね。ドロップアップ200%上昇に攻撃力と防御力が150%上昇。19800もする料理なだけあるわねー」

「効果時間は大丈夫なの?」

「3時間持つからな」

「後1時間くらいならね」

「それぐらいなら余裕かな」


 メニューのスキルから人形作成を選択すると、手動マニュアル自動オートのモードを選べるみたいで選択肢がでてきた。もちろん、手動モードに選択して作っていく。


「速っ!?」

「うわぁっ、これがプロ……」


 作るのは簡単なぬいぐるみだ。怜奈が好きなうさぎのぬいぐるみを作る。作りながら人形作成の説明を見ていくと、追加で素材を混ぜるといいみたいだ。入れられるのは水系や宝石系など様々な物がいれられるようだ。その中に血液も含まれている。なので、金竜である自分の血を混ぜよう。


「あの、ナイフとかあります?」

「ああ、あるぜ。ほら」

「借ります」


 ナイフで腕を刺す。自分がやったからか、簡単に刺さった。少しピリッとして痛い。


「何してんだ!?」

「大丈夫?」

「ええ、大丈夫です。血も素材に出来るみたいですから」


 血をぬいぐるみにかけていく。内部にも染み込ませる。傷は直ぐに再生した。次に爪を切って入れてみる。


「痛いだろ……」

「痛そうね」

「苦痛耐性あるので平気です。それにすぐ直るので」


 元から竜種には再生能力も与えられているみたいで、回復が早い。一分もすれば完全に治ってしまった。爪も混ぜて続きを行う。




 ※※※




 40分くらいでぬいぐるみが出来た。評価はBで、スキルに竜の腕ドラゴンアーム竜の吐息ドラゴンブレスが追加されていた。攻撃力は200で防御力が100。耐久力が100。


「出来ました。評価はBで、スキルもありますね」

「おぉ……」

「凄いわね」


 テーブルに置いた黒い兎のぬいぐるみは立ち上がって挨拶をする。マリオネットコントロールを使ってみたけれど、ちゃんと思い通りに動かせるようだ。


「あ、MPってどうなるんですか?」

「主人と共有だな」

「なるほど」

「しかし、これほどの人形なら、店で売ると高値で引き取ってもらえるかもな」

「でも、現実だと数千から万単位で売れますから、それ基準になるかも知れませんね」

「高い!」

「そうね。まあ、このゲームはゲーム内通貨を現実の通貨に交換できるから、現実と同じくらいになるでしょうね。少しは安くなるかも知れないけれど」

「まあ、その辺は応相談ですね。一番の目的は生きた人形を作る事ですから」

「そうなんだ……」

「が、頑張ってね」

「はい!」


 そんな事をしていると、白衣の男性がこっちにやって来た。


「待たせてすまない。原因がわかった。どうやら、キャラクターメイキングを担当したものが、君のデータを見て入れられたデータの方を入力ミスと判断したようだ。それが原因で女性になったようだね」

「ああ、なるほど」


 つまり、何時も通り勘違いされてしまったのか。それなら、まあ嫌だけど納得できる。


「キャラクターメイキングって、一人一人が担当しているの?」

「いや、ほとんどは自動だが、特別な種族などはこちらで担当している。彼の場合はたまたまだが」

「そうなんだ」

「えっと、それで治ります?」

「ああ、直に治すよ」

「じゃあ、どうせならもっと男らしく……」

「すまん、それは無理だ。性別を弄るくらいの小さな事は出来ても、アバターの外見を作りなおすとなるとアバターメイキングを最初からやり直す事になる。それは止めておいた方がいい。その種族もかえることになる」


 やり直すとなると、金竜が無駄になるんだね。それは嫌だな。


「そうね。せっかくその容姿なんだから、そのままがいいと思うわ」

「そうだぜ」

「まあ、今更だからいいけどね。わかりました。性別だけお願いします」

「ああ、それじゃあログアウトしてくれ。修正が終わればメールで知らせる。それとお詫びとして何かをあげよう」

「なら、人形に意思を込める方法が欲しいです」

「ふむ。いいだろ。AI作成ツールを渡そう」

「やった」

「ただし、身体はそちらで用意してほしいのだが、構わないか?」

「もちろんです」


 それから、ログアウトしようとすると、付き合ってくれたお二人に止められた。


「どうせなら、フレンド登録しようぜ」

「そうね」

「あ、ごめんなさい。妹達の後でならいいけれど、その前だと凄く五月蠅いので……」

「あー」

「そっか。なら、明日の夜にどう?」

「大丈夫です。ボクはユーリです」

「俺はグレンだ」

「私はアイラよ。明日の夜9時にここに集合で」

「わかりました」

「おう」


 約束を取り付けたのでログアウトして二人のおやつを用意して待つ。



 ※※※



「ただいま~」

「ただいま戻りました」

「お帰り。おやつにプリンがあるよ」

「やった! あ、食いだめしてお兄ちゃんがやってた奴やるから、邪魔しないでね!」

「私もしますので、お願いします」

「怜奈も?」

「修正される前にやっておかないと駄目ですからね」

「わかった。明日は休みだから好きにしていいよ」

「わ~い!」

「終ったら、金竜のユーリに連絡して。それがボクのキャラだから」

「わかりました。では、いきます」

「いって来る!」

「いってらっしゃい」


 二人が消えた後、少ししてからパソコンを見ると運営からメールがきていた。性別の変更が終わるのが、残り後1時間後の17時30分のようだ。それにAI作成ツールがついてきていたのだが……開けてみるとほとんど意味不明な記号と、0と1などの数字の羅列だった。


「わかるかぁっ!」


 下の方に説明分があり、プログラム言語を勉強しましょう。そう書かれていた。仕方ないので勉強するとしよう。これも意思ある人形のためだから頑張るとしよう。


「お婆ちゃん、僕等の夢はもう少しかかりそうです」


 仏壇に報告してからネットでプログラム入門の本を取り寄せていく。







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