第44話 ドラグニアでの朝食

「おはよう。皆、元気そうだな」


「天士様! 昨日は私、夜中ずっと温泉にいたのですが、いらっしゃなかったのですか!?」


「あ、ああ、オレは温泉早めに入ってすぐに出たからな……。ひょっとしてそのあとにミーティアが入ったのかな?」


「そ、そんなー! 朝までずっと温泉に使ってゆでダコになっていたのにー!」


「ですから言ったでしょう……。天士様はもう上がったのではないかと……」


「それを言うならあなただって、ずっと温泉に浸かっていたじゃないですかー!」


 翌朝。オレとリーシャは朝食が用意されているという一階の食堂ルームへと向かった。

 そこではかなりの広さの部屋で様々な朝食がバイキング形式で取れるようになったいた。

 そこにミーティアとイノもいたのだが……なぜだか二人共、顔だけでなく体中真っ赤にして、すごいホカホカの体温で朝食を見繕っていた。

 今の会話から察するに二人共、オレが入ってくるのを待って、朝まで温泉に浸かっていたのだろうか……?

 それはなんというか……ちょっと気の毒というか。うん、なんというか……。


「よお、昨日はよく眠れたか?」


「君は……ディアーナか」


 そこには昨日、例のドッチボール対決にて練習試合をしたドラコ三姉妹の長女ディアーナの姿があった。

 彼女はオレの姿を見ると、すぐに話しかけ、その後なぜだか顔を赤くしてそっぽを向く。


「フルネームはよせよ。私に勝ったんだから、ディアって呼び捨てにしてくれ」


「そうか? じゃあ、ディア」


「お、おう! なんだ!」


「いや、特に用はないけれど……」


 ディアという愛称で呼ぶとなぜだか嬉しそうな顔をオレに向ける。

 その後、オレはリーシャと共に朝食を選び、そのまま近くの席に座るのだが、


「えっと、なんでディアも一緒に?」


「べ、別にいいだろう。たまたま私が座るところにお前がいたんだよ」


 いや、今明らかにオレが座ったと同時にすかさず隣に座ったよね。

 ちなみにすぐ後ろでは「あー! 私が天士様の隣を狙っていたのにずるいですよー!」「で、出遅れました……」と泣いているミーティアとイノの姿があった。


「それよりもどうだ? 今日よければ城の色んなところや街の色んな場所をお前に案内したいんだが時間空いてるか?」


「ん、まあ、特に用事はないけれど……」


 そう言ってオレは隣のリーシャを見る。

 リーシャは「好きにしていいんじゃねえのか?」とオレに答える。

 まあ、ここにいる間、特にする用事もないし、この国の住民であるディアが案内するというのなら、それに従った方が色んな場所を見せてくれて面白そうだ。


「そ、そうか! じゃあ、このあとすぐにでも行かないか?」


「え? まあ、朝食を食べた後ならいいけれど」


「よ、よし! 分かった! それじゃあ、私は準備してくるから、この食堂の前で待ち合わせな! すぐに戻るから、お前もすぐに食べ終われよ!」


 そう言って慌てた様子でディアは朝食を書き込みと、ダッシュでいなくなる。

 なお、その際慌てて食べた食べ物が喉に詰まったのか、途中胸を押さえながら喉のあたりを叩いていた。

 だ、大丈夫なんだろうか……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転移した先は地球人のスペックがチートすぎる世界でした 雪月花 @yumesiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ