第三話 新ルールがいっぱいいっぱい

 11/28 全員へ

 先日(11/25)行われた「棚卸し」の結果について

 ①結果

 前回の棚卸し日(8/6)から11/25までの111日間で発生した品減り金額は244千円でした。

 一日平均で2,119円となる。

 これは、毎日2,200円相当の商品が無くなっているということです。



 棚卸し、というのは簡単に説明すると、「店にある品物の記録上の在庫と、実際の在庫数があっているかを確認する」作業で、数ヶ月に一度、専門の業者さんを頼んで調べてもらうのね。

 近隣の店の品減り金額の平均は二十万程度というし、確かにこの額は多い方なのかも知れない。

 でも、店舗ごとの客数や売り上げを比較考慮した上での数字では無さそうだから、ほかの店と比較して本当に多すぎるのかどうかは、よく判らない。

 もちろん、不足が起きるのはそれなりの理由があるよね。報告の下にも考えられる要因が幾つか書いてあった。

 お客の万引き、従業員の商品持ちだし(「内引き」といいます)、ルーズな検品、レジの登録漏れ、打ち間違い、FF(ファーストフード)商品の鮮度落ち品の廃棄登録忘れ・・・

 確かに、気をつけなきゃいけないと思える点は多い。と思ったのも途中までで。



 そこで、次のようなルールを作ります。

 A.棚卸し(三ヶ月毎)時の品減りが20万円を越えたら、その越えた分は従業員全員で均等負担(出勤日数比)してもらいます。

 B.その反面、10万円を下回ったら報奨金 平均3,000円/人(出勤日数と品減り額に応じて)進呈します。


 以上の通り、

 ・万引きされたら

 ・ルーズな検品をしたら

 ・廃棄品をおろそかにしたら


 すべて、自分の懐(=サイフ)がいたむと思って仕事に当たってください。





 この『ルール』で、すべてが吹っ飛んでしまった。

 最後にはすべて「罰金」で締めくくるのは何?

 なんだかはっきりとはいえないけど、おかしいよ。絶対に考え方が違う。


 感じている「おかしさ」を上手く表現できないでいる間にも、オーナーはおかしなルールをある日突然決めていく。




 ・棚掃除を1勤務時間に一段。できなかったら一回ごとに500円罰金。

 ・就業時間の5分前に来ないことが4回続いたら、遅刻したと見なして時給を減額(11/3)

 ・明らかに偽札とわかるようなものを受け付けた場合は、個人負担もあり得る(11/22)

 ・制服の下からシャツが見えていた場合、警告なく時給を減額する(12/3)



 なんだろ、この突っこみどころ満載の新ルール。

 警告がなかったら、何が悪いのかもわからないから、状況は改善されないんじゃないの? 

 どうしたの、お金お金お金。

 確かに、早めに来るのも大切なことだし、身だしなみも大事だし、清潔感もコンビニには不可欠

 でも、すべてがいきなり、この一・二ヶ月の間に立て続けに決められて、最後には罰金でどうこうという話にすり変わってる。

 これは、従業員の意識レベルをあげようという以外の所に目的があるんじゃないかと、疑いたくなってくるよね。


 それにね。

 十二月になってまた新たに、へこみ缶が、保管棚の中に紛れ込ませてあったのを見つけ出したことに対して、



 こういう卑劣な行為に対しては、倍額の罰金を今後課させてもらいます。(申し出がない場合は全員が対象になります)

 ※正直で善良な皆様へ。

 このルールにすれば、当人だって二倍の罰金を支払うよりも買い取った方がマシだ、と

いうことで買い取ってくれるようになると思います。これでも卑劣な行為をするバカな者がいたら、申し訳ないけど罰金をかぶってください。



 ……正直な人が、一番負担の多くなる罰則を経営者が推奨するようじゃ、みんなのやる気がなくなっちゃうよ?

 そんなの公然と認めてしまっていいの?

 まじめに働け、責任は果たせ、といってるそばからこういう理不尽を通そうとするのでは、説得力がないよ。

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