猫アレルギー

@boko

第1話猫アレルギー

カーテンの遮断さえ通り抜けて私の顔に日光の光が当たる。

まどろみの中でも眩しさは睡眠の邪魔をしていることを理解している私は無意識の内に掛け布団で自分の顔を覆う。

暗闇が再び睡魔を呼び寄せるがジリリリと大きな音を鳴らしながら目覚まし時計が自分の存在を強調してきた。

苛つきを覚えながら時計の頭に付いているボタンを叩くと音は止み、目を擦りながらいつもの様にゆっくりと布団から出る。

頭が働いていないがいつもの様に寝ぼけ顔で私は階段を降りるが、いつも聞こえる母親の声がなくテレビの音だけが下の階で響いている。

だが寝起きの脳は働かない。私は違和感を覚えずそのまま階段を下ると扉の端っこに灰色の毛が生えた尻尾がフラフラと揺れている。

いつもの私ならそんな見慣れた猫の尻尾など気にもしないのだが、なぜかそれを見た時私の胸の奥が少し苦しくなった。

幸福感少々。同時に苦しさが大量。それを見ているだけで胸の奥が締め付けられる様な気持ちになる。

これは恋…?いや、見慣れた猫をこんないきなり意識するなんて可笑しい。でも尻尾を見ただけで私の心拍数は上昇し、なんだか恥ずかしい気持ちになってきた。

無意識の内に段々と呼吸が荒くなっていく。顔も熱を帯びてくる。

なぜか悶々としてくる気分いつの間にか私は発情していた。

荒くなる息を制御しながらゆっくりと一階のリビングに向かう。

中に入ると母親は顔を赤らめながら倒れながら痙攣をしており周囲には黄色い液体がある。その眼球の黒点は上を向いており、舌はだらしなく垂れ出ており幸せそうな表情である。

驚いた私は母に近づこうとするがそのそばである物が目に入る。

それを見た時私は軽く達してしまいその場で崩れ落ちる。

「ミニァウ。」小さな口を動かしながら鳴く猫の声を聞いた私は心地よさと共に快楽に包まれその場で達してしまった。


いつも通り目覚まし時計の音で私の一日は始まる。

日光の明るさは私の気分を高揚とさせてくれる。

さぁ、今日も1日が始まる。昨日の残り物である味噌汁を温め終えるとそれをお椀に入れ、炊飯器のご飯を茶碗に装う。

朝ごはんを食べ終えた私はいつもの様に顔を洗い、歯を磨き出勤の準備を始める。

青く輝いている空、眩しい日光。素晴らしい人生を歩んでいる事を実感しながら家の鍵を閉める。

歩いているといつもと何かが違う事に気がついた。平日なのに人をあまり見かけないのである。

疑問を感じつつもいつも通り駅に向かっている途中道端に倒れている女性を見つけた。

驚いた私は一呼吸置いた後倒れている女性の元に近づく。

目でわかる程女性の全身から力は抜けきっており、顔が紅潮して荒い呼吸を繰り返している為、腹部が一定のリズムで上下運動を繰り返している。

更に女性に近づく為に足を前に出すと水たまりを踏んだ時の音がした。

天候は曇りも一切ない晴れ模様なのに水たまりがあるのは可笑しい、疑問を覚え、下を見ると黄色い液体が女性の周りに広がっていた。

これはもしやと思っていると不快な臭いが私の鼻に入ってきた。

尿だ。この女性、全身の力も入らずに顔を紅潮させながら洗い呼吸を繰り返しておまけに尿を漏らしている。

『これは私が思った以上にこの女性は恐ろしい病気にかかっているのではないか?救急車を早く呼ばなければ。』そう考えた私はカバンから携帯電話を探していると背後から声が聞こえた。

「ミニァウ。」聞き覚えのあるその声はいつもなら何も感じはしないのだが、なぜか全身に電気が流れたような不思議な感覚が私を襲う。全身の神経は敏感になりその場で立っていることが出来なくなってしまった私は尿に顔を突っ込むように倒れていた。

全身が性感帯になったような皮膚に触れる空気すら快楽の原因になってしまう。

顔が火照っている。ムラムラと性欲が急に吹き上がってくる。気持ち良さと一緒に吐き気すら襲ってくる。

無意識の内に荒くなっていく呼吸を制御できず私の脳はこの倒れている女性をいかに犯すかを考え始めていた。

どうせ意識は無い。やるなら今しかない。冷静さを失っている彼はそこが道路という事も外だという事も忘れていた。

 ただ、自分の性欲を満たす為に犯すことだけを考えていた。自分がそれを行う事で今まで築いてきたものが崩れていくのも完全に頭の中にはなかった。

 その姿は人間ではなくただの飢えた野獣である。荒い息を出しながら彼は女性の下半身にそれを入れようとする。

 「ミニァウ。」再び聞こえた声で彼は射精をしていた。

小ぶりのそれは小さい耳と大きな瞳をこちらに見せながら近づいてくる。

全身が綺麗な毛で覆われたそれは尻尾をくねくねと動かしながら小さな四本足を使い近づいてくる。

一歩、また一歩と近づいてくるたびに今まで味わったことのない快楽が彼を襲ってきた。

あまりの気持ちの良さに彼はそのまま意識を失ってしまった。



これが各国で突然発生した猫アレルギーです。従来の猫アレルギーと違い触れると肌がアレルギー反応を起こし異常な痒みに襲われたりはせず、その声、その姿を見るだけで快楽が襲い掛かってくるのです。

これにより目の前にある辞書の様な分厚い書類でも足りないくらいの事件が発生しました。あなた達の目の前にある資料は事件を厳選してさらに簡潔に記されております。


 発生者は確認できるだけで人類全員。感染原因不明、要は何もわかっていないという事です。

 …あぁ、一つだけ解ったことがあります。虎やライオン、豹等のネコ科の生物には反応しないのですよ。


これによって人類が行った事は全世界の猫駆除。ただ一部の国がそれを実行せずに保護した。

 日本では違法猫AV(アニマルビデオ)が流通し混乱に陥った。

上流貴族の間では情事を行う際に猫が使われ通常以上の快楽を覚える行為が繰り返されていたが警察も動くことは無く逮捕者は出なかった。

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