紅梅マルメラード

みんなもともと生死

第1話 高鳴りは4分前

退屈に過ぎる日を、あてもなく阪井ミキトは持て余していた。

カップラーメンは食い飽きたし、家には誰もいない。

母親と二人で暮らすミキトだが、朝から夜まで

働きづめで、一人遊びをしてきた彼には

どうやって人と接していいかわからないことが多すぎて、

誤解されてばかりで、学校に行くのも苦痛になり始めてた。

駅前の牛丼屋で明太マヨ牛丼を食べよう!

一気に全力疾走で、店を目指して向かう。

右300m先からどよめきが聞こえてきたので、

ミキトは何事かと視線をスプリントさせた。

街中でハイテンションに喋りながら、

クルクルミラクルに踊る少女がいた。

「はっーい!みんな、見えてるー?私だよ、

もえもーだっよー!この前ね、

カレー焦がしちゃったら彼が

ハリセンでぶん殴ってきたのー。

彼はモニターに写ってる存在だから

痛くなかったけどー。テラ二次元!!」

「うわー、痛い子がいるよぉ」

「しっ、目を合わせたら、アへ顔になるかもですよ」

「危ないキャラもたいがいにしやがりやがれですの」

「あれ、彼女にしろよ」

「いくら女ならだれでも良くなってきてるおれでも

勘弁だわ」

学校にいないタイプの変人だと、ミキトは思った。

「おわわっ!?」

目の前に、電波ガールが立ちふさがってきたので

ミキトは小走りな足を止めざるを得なかった。

「ぴーぽーぴーぽー。素敵なポリスレディな

あたいが恋の職質始めちゃうぞー」

ぴろり路りん!

効果音は野次馬のスマホからであった。

決して、電波っ子が口ずさんだわけじゃない。

「もっしもーし。ボーイよ、ボーイさん。世界のなんとかで私ほどフェロモンムンムンなもんおはなーい」

「すいません、邪魔なんで、早くどいてもらえますか?

本物の警察官に君が職質されたくないなら」

「ああーん、ひどいよー。カズ君たらひどいよー。

私たち熱海で1泊2日でのろけた仲じゃん!」

「知るか!タミフル飲ませようか?僕は明太牛ドン食べたいの」

「なになに?壁ドンしてくれるって?」

「腹パンしてやろうか?この小娘風情が!」

前途多難なミキトは悟った。これは牛丼食えないパターンだ。

最悪、俺まで職質されるかもと。

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