第13話

 僕はヴァルドレット皇国 皇太子カシア・シン・ヴァルドレット。

 

 皇太子ってことは次期皇帝だよな。


 メフィア!ヴァルドレット皇国ってどんなところなんだ!   俺は皇太子という言葉に少しだけ押されながらもメフィアに一番聞いておくべきことだけは聞くことが出来た。


《はい、主様マスター

 ヴァルドレット皇国はこの大陸に現存する国家で一番古く、そして一番大きい国でもあります。

 ちなみに今主様がいらっしゃる国、バイストン王国はなんの代わり映えもしない150年前に建国された国家です。

 しかし、たまたまですが龍脈という魔力溜まりの直上に立地しているため今回の勇者たちを召喚することができたのです。


 話を戻しまして、 一番古い国家ということでヴァルドレット皇国の歴史はこの世界の歴史と絡むところが多々あります。少しだけ長くなるかも知れませんが話さしてもらいます。


ヴァルドレット皇国の建国の祖として世間一般で知られているのは 第一代皇帝シン・ヴァルドレット です。この皇帝は大陸に住まう数多の種族を纏めあげ、魔王や悪魔達が治める大陸 いわゆる魔界からの侵略者の侵略を阻み、英雄と讃えられこのヴァルドレット皇国を建国しました。しかし、25歳の若さで死に至りました。


さっき、私は魔界と言いました、しかし、現在の人々は魔界があることを知りません、それ以前に自分達のすむ大陸以外には世界にになにもないと思っています。なぜでしょうか?


理由は単純です。シン・ヴァルドレットが当時この大陸に生きる全ての生物の記憶から、魔界についての記憶だけを抜きとったからです。そのため、この大陸に住む魔人族にも他の大陸の記憶はありません。彼らはここを故郷だと思っています。それほどの大規模な記憶の改変は彼の超人的な肉体にも多大なダメージを与えて彼の寿命を何十年と縮めました。その影響か彼は25歳という若さで死に至ったのです。


 彼が人々の記憶から魔界の記憶だけを抜きとった理由は、彼自身が魔族とヒューマン族との混血ハーフだったからです。混血ハーフは、地球のハーフと同じ意味ですが、魔人族とヒューマン族との混血ハーフは産まれることが全くといっていいほど有りませんが、魔人族の屈強な肉体、膨大な魔力が、ヒューマン族特有の元素親和力に導かれ、果てしないほどの身体的強化を施します。


 シン・ヴァルドレットの生きていた当時からヒューマン族は人族至上主義の考えを持ち、魔人族を嫌悪していました。そこでシン・ヴァルドレットはヒューマン族のこの考えを魔人族との混血ハーフである自分が無くし、世界に住む人間種として魔人族とも手を取り合わせるのを目標とし、それをヴァルドレット皇国を建国することで実現しました。彼の血筋は子孫へと受け継がれています。


 その途中でシン・ヴァルドレットは自身の目標の実現に人々の記憶に悪として記録されていて邪魔な魔界という存在をこの大陸にすむ人間種の記憶から消しました。


 これが魔界が知られていない理由です。しかし、魔界と魔王という存在が消えたわけではありません。》


 メフィアは普段と違い抑揚のない静かな声で淡々と説明してくれた。


 メフィアにも感情はあるのかな…?


「それで、なんでヴァルドレット皇国の皇太子ともあろうお方がなぜこんなところにいるんだ?」


「あれ?あんまり驚かないんだね。それに、僕がこの街にいる理由かい?

そんなの城から逃げ出してきたんだよ。


            ……嘘だよ!

この国に視察できたのさ。」


 驚かないのはな…。この世界に来ていきなり驚きの連続だったからな。


「ほー!視察できたのか。視察なら王城にいるべきじゃないのか?」


「王城での用事はもう終わったのさ。そして ついでだからこの国の冒険者ギルドの依頼をひとつこなして帰ろうと思っていたのさ。

 冒険者と依頼の質はその国の国力を表すとも言うからね。

 それにしてもこの僕に敬語を使わないか………。     君おもしろいね!

 名前は何て言うんだい?それと、一緒にクエストに行こう!」


 ここで名前を言ってしまってもいいんだろうか。  まぁ、王国にバレてしまってもそんなに問題にはならなさそうだから、言ってもいいかな。

この皇太子フランクすぎないか?もうちょい気を付けた方がいいような気がするぞ。


 もしかしたら偽物かもな… 一応気を付けておくか。白とシャルティも一緒なんだからな。


「おれは、東堂蒼太だ。ランクはBランクだ。」


「トードー ソウタかい?倭州の出身かな。

 倭州の出身の者の名前は言いにくいね、ソータでいいかい?」


 なんだよ、人の名字をドードーみたいに言いやがってよ。


「まぁそれでいいよ。でもトードーじゃなくて、トウドウな。

 で、カシア・ヴァルドレット、めんどくさいな、カシアでいいか?」


「それでいいよ。僕のことをカシアって呼ぶのは、お父様以外ではいなかったけど、これで増えたね。」カシアは微笑んでいた。


「で、カシアは一応は冒険者として登録くらいはしてるんだろ?一応きくが、ランクはいくらなんだ?」

 あまりにも低いと一緒にクエストにいけないからな、聞いておかないといけないよな。


「僕かい?僕のランクはAランクだよ!

まぁ、ソロって言うわけではないんだけどね。皇太子という立場上一人でクエストには行けないからね。」カシアは少しだけ悔しそうだった。ていうか、カシアってAランク冒険者なのか、俺より上なんだな。


「なら、俺が行けるクエストは全て行けるんだよな。なにに行こうか?

 今ここにあるA.Bランクの適正クエストは、3つしかないんだよな…。」そう言って、俺達とカシアはクエストボードの方へと足を向けた。


・ジャイアント フライの群れの討伐 

適正ランク;Cランク

目的地;スラジ洞穴

報酬;ジャイアント フライ1体につき15,000ゴルド

備考;



・タイラントワームの群れの討伐と交易路の周辺の安全確保 

適正ランク;A

目的地;サラハ砂漠

報酬;タイラントワーム1体につき40,000ゴルド

備考;隊商の保護は追加報酬有り



・ゴブリンの集落の壊滅 

適正ランク;B

目的地;タンナ森林

報酬;ゴブリン1体につき500ゴルド

備考;上位種がいる可能性が高い



《 巨大蠅ジャイアント フライは名前の通り巨大なはえです。蠅だからと言って侮ってはいけません。この蠅は毒を持ち1メル近い体長を持つにも関わらず、高速で空を飛び回ります。そのため、単体でもCランクに分類されています。

 

 巨頭蚯蚓タイラントワームは、砂漠などのの乾燥し、高温な気候の土や、砂に潜伏し、エサが通りかかったら、地中から一気に飛び出し捕食します。この習性を持つため時々、砂漠を通行する隊商を襲い冒険者ギルドに討伐依頼として舞い込みます。土にほとんどの期間潜伏しているため皮膚が固く生半可な攻撃ではダメージを与えることができません。そして、巨体を生かした攻撃を繰り出してきます、このため単体でもBランクに分類されています。


 ゴブリンは単体ではEランクに分類されますが、大体の場合群れをつくっています。その群れに所属するゴブリンの数は一定では有りませんが、今までに20,000を越える数のゴブリンの集団が確認され厄災と認定されました。


 厄災とは、ヒューマン族やエルフ族などの人間種の生活文化を破壊しえる可能性を持つ魔物やその集団のことです。


 このことを踏まえ、今あるクエストの中で1番主様と、カシア様に合っているクエストははタイラントワームだと思われます。》


 メフィアがこういってるんだから、そうなんだろうけどなぁ…。

 俺ミミズとか嫌いなんだよな。


「カシア どのクエストが良いと思う?」一緒にいくのはカシアだからな、カシアの良いと思うクエストに行くのが1番いいんじゃないかな。


「そうだなぁ。僕が良いと思うクエストはねぇ。タイラントワームかな?

 タイラントワームはBランクでもきちんと準備をして、慎重に戦えば手傷を負わずに倒せるといわれているからね。」


 そ、そうか…。ミミズかぁ


忘れてた!シャルティと白の冒険者登録に来たんだった。


「すまん! カシア!

この2人の冒険者登録に来たんだった。少しだけ待っててくれるか?」


「いいよ!ここで待っとくね。」


  俺たちは人が少なくなっていた受付へ向かいシャルティと白の冒険者登録を終わらした。2人ともステータスの欄を書かずに申請したためFランクからのスタートになった。


 2人の冒険者登録が終わりカシアと合流し、俺たちは臨時パーティー申請をし、承認されたため、臨時パーティーを組むことになった。そして タイラントワームの群れの討伐 をしにサラハ砂漠へと出発した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 一方そのころ王城のとある一室で ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 


「姫様はどこへいかれた‼」


 豪華な部屋一杯に男の荒れた声が響いた。


「あのお方は御自身のヴァルドレット皇国の皇太子という立場をわかっていらっしゃるのか!?」


「お前たち、今すぐ探しにいけ!多分冒険者ギルドにおられるはずだ!姫様は冒険者がお好きたがらな。見つからねば、最強と称されるヴァルドレット皇国近衛騎士団の名折れだぞ!」


「「「「「ハッ!!」」」」」

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転移した俺のステータスが破格なんですけど… すだちの気持ち @sudacher

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