第17話 Hapiness 幸福というもの 加筆修正有2021.2.26/9.15/12.26

17.

" Fate ご縁 2 "



 竜司との別れと入れ違いみたいになってしまい、自分でも

この急展開に驚くばかり。



 人生、生きてるとこんな嘘のようなことが現実になったり

するンだ。竜司との結婚を猛反対されてきてたったの

2~3ヶ月とはいえ、つらいものがあった。


 片や、家族全員が自分を望んでくれている。


 この天と地ほどの差は何の為に我が身に起こっているという

のだろう!などとまで、真剣に考えてしまった。


 まじめに腐らず生きていれば良いことはあるっていうことなのかな。


 それこそ、寂しさに負けて不倫なんてしていたら、こんな

良縁なかっただろう。


 人間まじめにコツコツと。あれっ?

この台詞って某放送局の朝ドラの主人公が確か言ってたよね。


 もしも・・よ、もしもだけど、慎一さんに振られたとしても

この今の幸せな気持ちは忘れずにいよう、そう心に誓った。


 慎一さんとは猫友のままでもよいのだし。

 ガールフレンドにはなれそうかな?


 人から大切にされると心が喜ぶんだな・・

そんな想いに包まれて帰路についた。


 設樂家をあとにした私はその夜、幸せだった。


           ・・・



17-2.


 その後ちょくちょく慎一さんから連絡を貰って何度かデート

をした。

 そしてご家族も含め、家族ぐるみのお付き合いをさせていただいた。


 どんな結婚式がいいだとか、住まいはどこがいいのか、という具体的な

話がご家族から出始めても慎一さんから私へのプロポーズはなかった。


 へっ?と何度か思う事はあったけれど、慎一さんの中でも私との結婚は

決定事項のようだ・・のはず・・・と思いたい。

 うっ、こんなンでいいのか!とは思うけれど私も、あのぉ~

私と結婚するつもりはあるんですよね?なんて今更間抜け過ぎて聞けない。



 だけどウエディングドレスの話になった時、私の選んだドレスを見て

いいね素敵だ、今から楽しみ・・と確かにあなたおっしゃいましたよね!

 その時の旦那様はあなたですよね!

 心の中で突っ込んでみた。



 そのドレスにはこのタキシードが似合うよね?ってあなたが

言う。それを設樂課長がやさしい眼差しで見つめている。


 私が見た感じでは、課長が溺愛するほどには慎一さんのほうは

兄を想ってないと思う。


 でもそれでも課長は弟の幸せがうれしいのだ。



17-3.


 慎一さんは一緒にいてほっとできる人だ。もう側にいるだけ

でそのふんわりとしたやさしい空気にこちらまで溶けてしま

いそう。


 こんなイケメンさんは初めてだなぁ。

 かなり女子にはモテそうなんだけど、課長やご両親の言葉を信じるならば

そっち方面の心配はしなくてよいのだろう。


 イケメンも3日もすれば慣れる?慣れるけど会うたびに頬が緩むわ。

 顔を見て声聞いてるだけで癒されるから。


 私達のデートには時々課長のお子さん達が付いて来ることがある。

 

 子供達のリクエストにより、水族館で催されているイルミネーションを

見に行くことになった。


 広美ちゃん卓也くんそして慎一さんと私は課長の家から

水族館に向かった。

 開演は17時過ぎからだけど、子供達は水族館のほうにも興味があって

13時過ぎに出発した。


 課長と奥さんはまったりお家デートを楽しんでそう!


 なかなかふたりきりになれる機会がないので気持ち、課長が

うれしそうに見えたのはあながち間違ってないと思う。



17-4.


 水族館を出た後すぐにはしゃぎ疲れたのか、子供達は大人

しくなってしまった。


 夜の帳の落ちかかる時間帯になるので大人しくじっといい子で

座ったままイルミネーションに見とれてくれるのは大助かり。


 子供達のことに気持ちを向けていたら、慎一さんが隣でポソっと呟いた。



 「きれいだね~。実はイルミネーション見るの、初めてなんだ」



 「あっ、わたしも」


 何やら辺りは薄暗くなってきて、音楽と共に色とりどりの光の

洪水に包まれて別世界に紛れ込んだような気持ちになる。

 うっとり、その世界に包まれていると・・・・。



 「黒崎さん、僕との結婚を決めてくれてありがとう・・って

本当に僕なんかとでいいんですか?

 実はまだ信じられなくて。

 黒崎さんからは直に何も・・言われてないので心配になります。

 両親と兄貴たちの勘違いで話を進めているんじゃないかと」



 えーーっ、慎一さんの言葉にびっくりポンです。




2021.10.08-13/9



17-5.



 「慎一さん?」



 私は言葉に詰まって彼の目を見た。


 あまりのことにじーっと見つめてしまったみたいで、思わず慎一さんが

オロオロしてしまった。




 「えっ!やっぱり勘違いですか?」



 「ひとつ、質問していいですか?」


 「・・・・・」




 「そのプロポーズというものは、男性がするものと思ってきたので

私のほうこそ、この結婚に自信がありませんでした。


 設樂家の皆さんからは具体的に慎一さんとの結婚を考えて下さいとお話が

ありましたけど、いつ慎一さんからそのお話が出るのかと、ずーっと私も

モヤモヤしてました。


 今のお話だと、私のほうからのプロポーズを待ってたってことなんで

しょうか?』




 「あーっ、えーっと、すみません!」



 慎一さんに謝られてしまった。


 「学生の頃から、自分から付き合ってくださいとか一度も形式ばって

言ったことがなくて・・。前の結婚の時も付き合ってるうちに元の奥さんが

ブライダルの本を見て結婚時は教会がいいなぁ~って。


 それでふたりでそのままいろいろな教会に行って、気が付いたら

結婚してたみたいな?よく考えてみたら、いつも知らない間に話が

進んでるっていうか。


 そうだよねぇ~!プロポーズは男性からが定番ですね。


 気の利かない意気地のない男でごめんね。

 黒崎さん、僕と結婚していただけませんか?

 あっ、すみません、こんなところで。


 それに指輪も・・ご、後日改めて・・・」


しどろもどろ。



 「プッ」



17-6.


 ちょうどいい具合に広美ちゃんと卓也くんが帰ろうと言い出したので

私達はひとまず今の会話をそのままに、お子ちゃま達の相手をして

その日のデートを終えようとしていた。


 子供達を課長の家の前で降ろし、慎一さんは私を自宅まで送ってくれた。

 車を降りる直前に私はプロポーズの返事をした。



 「蒸し返すようで申し訳ないですけど、私からのプロポーズを待ってた

なんて夢にも考えてなくて、もう驚いてます。フフフ」



 「あっ、笑いましたね、笑いましたねっ」

 ちょっと拗ねた慎一さん。



 「いえっ、驚いただけですってば・・はははっ。

 あっ、ごめんなさい、笑うつもりはなかったンだけど・・クスっ。


 ほんとに茶化してごめんなさい。

 さっきの件ですけど、お受けします。


 慎一さんと楽しい家庭を築けたらと思います。

 どうぞ宜しくお願いいたします」




 「お~! ありがとう」



 慎一さんが手を握ってくれておでこに親愛のキスをしてくれた。

 私は少し恥ずかしげに微笑んだ。


 イルミネーションデートはとても楽しかった。


 その夜布団の中の私は天にも昇りそうなくらい、しあわせだった。



 この先のことは、きっと設樂家の皆さんがソツなく結婚までの

道のりを・・・


 石ころが転がっていればそれを拾い

危ないガラスが落ちていれば取り除いてくれ

ハリウッドスター達が年に一度集った時に歩く王道のロードよろしく

私が躓いて転んでも痛くないようなりっぱなふわふわの絨毯を敷いて

くれて、導いてくれることだろう。




 夫ができるだけでも有難いことなのに、たくさんの愛するべき

家族が出来るのだ。


 どこにでもあるというものではないこの素敵な御縁を私はいつまでも

忘れず大切にしていこうと思った。


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