5番塔四業三階層 土塊の庭

第35話 連隊

 月ちゃん達が増えました。

 

 月ちゃん、ハナちゃん、風子ちゃん、チョウちゃんの同じ姉妹シリーズをそれぞれ三体買ってもらいました。


 月光石が高く売れたから、ヘビさんの店にあった人形を全部大人買い。

 一度やってみたかったの大人買い。


 それで月隊、花隊、風隊、チョウ隊が出来たのです。

 各隊長は当然先に買った月ちゃん、ハナちゃん、風子ちゃん、チョウちゃんにやってもらいます。それぞれに部下が三人つく感じかな。


 これで、全部で16人!


「やふー!」

 なんかすごい。

 ちなみに私が連隊長です。隊長と、連隊長は何が違うのでしょう?


「や、やまとさま? あの、この娘は一体、なのでしょうカ?」

 ヘビさんが、ヤマトに言う。


「何とは?」

「い、いえ、何故死なないのでしょうカ?」

 ヘビさんは体を震わせている。

 寒いのかな?


「ふ」

 ヤマトは鼻で笑って答えない。


「あ、イエイエ。とんだご無礼を、ご勘弁下さい。ただ、もし宜しかったら一つだけ教えて頂きたい」

 ヘビさんがヤマトに擦りよる。

 やたらとクネクネしてるから見ていて面白い。


「何だ?」


「もしや、何処ぞの街へ攻め入るつもりで?」

「ふ。そんな訳なかろう。戦争をするつもりはない」

「ふ、フシャシャシャ。それを聞いて安心致しました、何せ商売に関わって参りますので」

 ヤマトとヘビさんは二人でフフシャシャ笑ってる。

 これがきっと悪い笑いだ。

 二人とも見た目は悪人っぽいから、寄って笑うと更に悪くなる。

 

「ねー、ヤマト。お腹すいたよ」

 私は空腹です。

 ヤマトに養って貰わなければ。


「おう、すまぬなヒナミ。では、帰るか」

「うん! かえろー」


「お帰りですか、本日は大変よい月の光で御座いました。またのお越しをお待ちしております」

 ヘビさんがペコリとお辞儀する。

 

 ヘビさんの店を出る。

 私の後ろに月ちゃん達がゾロゾロとついてくる。道行くが私達を見る。

 

「なんか目立ってる?」

「……これだけ呪物兵器を連れて目立たん訳がない」

「ふーん?」

 月ちゃん達は目立つのか。お高いからかな?

 ん……じゃあ今の私って高級ブランドに身を包んで、お付きの人とかがいるセレブりちぃーな感じなの!?


 とても気分が良いです。


「これで良い車があれば完璧!」

「何だ、ヒナミ。車が欲しいのか?」

「あったら良いなーって思うよ」

 まあ無理は言いません。こっちには絶対無いだろうし。


「では、ついでに買っていくか」

「え? あるの車!?」

「車くらいあるに決まっておろう」

 江戸時代にまさかの車……。なんかミスマッチ。

 

 でも、ヤマトの運転する車に乗せてもらうのも良いかもしれない。

 月明かりの中のドライブ。

 ハンドルを握るヤマト、助手席には当然私。静な夜に、小粋なラジオの音楽。

 

 …………ぉおお。良いムードでは!?

 二人の気持ちは高まっちゃうのでは!!


「着いたぞヒナミ」

 考え事をしてたら車屋さんに着いたらしい。


 ワクワクしながら、ニューカーを品定めしようとする……と。


「へ?」

 

 これって何だろ。えっと、時代劇で見るあれだ、大名行列の殿様が乗ってるヤツ。

 カゴって言うのかな、あれ。

 当然タイヤは付いてなくて、四角い箱の下には何もありません。

 あえて言うなら、人が持てるように持ち手の柱みたいなものがある。


 どう見ても人力で動きますね、これ。


「ヒナミは体力が無いと常々考えておったが……これがあれば大丈夫だろう」

 ヤマトが、にこやかに言う。


「あー、うん、そーだねー」

 私は、これじゃないと思いながら言った。


「嬉しいかヒナミ! これで楽になるだろう。持ち手は人形どもにさせれば良いしな!」

 ヤマトはとても嬉しそうだ。

「うん、私もうれしいよー」

 私はヤマトにソンタクした。


「俺がヒナミの体に合う車を選んでやろう」

「わーい」

 私は両腕をあげて見せる。


「あ、でもでも。私とヤマト二人が入れるくらいの大きさが良いんじゃない?」

 密室で二人きりというのも良い感じ!


「いや、そんな大きさはいらんだろう。そもそも俺が車に入る必要はないしな」

「……き、休憩の時とか」

「外におらんと危なくてかなわん。不要だ」

「で、ですよねー?」


 ヤマトは店に入っていく。

 店の外には私と月ちゃん達が残された。

 

 

 ……しばらくして、私は自分専用のニューカー(人力)を手に入れました。

 

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封鎖月面のぐうたら姫 ユーアート @yuato

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