第28話 ヤマトの回想 1

 俺は強い。

 そうだ、強くあれば良い。


 親は知らない。

 おそらくこの呪われた目を嫌って、俺を捨てたのだ。

 

 いっこうに構わぬ。


 この呪いも、使いようによっては便利なものだ。

 強く、強くあれば良い。そして月を目指すのだ。到達する。あの光の先へ、先へ、先へ……向こう側に至る。


 それで、幸せになる。

 ヒトとして成功する。


 呪いのせいで、女は寄ってこぬ。

 というか、下手をすれば死ぬ。失神したり吐いたりするのはまあ、普通だ。

 

 だからか、とてつもなく嫌われる。

 女に嫌われるのは分かるが、俺の呪いにやられた女に関係がある男からも目の敵にされる。


 基本、俺には賞金が掛かっている。

 俺は賞金首なのだ。


 いっこうに構わぬ。


 強くあれば良い。俺の首を狙ってくる奴は返り討ちにしてやれば良い。

 

 ……だが。


 塔に挑むには、定説では複数人で挑むのが正解とされている。そして、ほとんどの者はそうしている。


 俺と組んでくれる者はいなかった。

 そもそも俺はヒト付き合いが、上手くない。

 呪い付きで、賞金首、おまけに愛想が悪い。

 これでは命懸けで挑戦し、助け合う仲間が出来るはずもなし。


 いっこうに構わぬ。


 俺は強かった。

 この目の力もある。

 大抵の女形の敵は倒せるか、倒せなくても弱体化する。

 塔には意外と女形の敵が多い。

 動物系の敵は、メスの方が強いし数も多い。呪いは何故か植物系の敵ほぼ全てに効く。

 他の者が立ち入れぬ、厄介な毒虫が巣くって居る階層なども、俺なら大丈夫だ。

 虫もメスが多いらしい。

 

 女形の敵で俺の目が効かぬ奴など、亡霊系か人形くらいか。

 まあ、俺よりはるかに神格が高い貴人たちにも効かぬが。御前様などに敵対することはないので気にすることはない。


 そうだ、この目のおかげで魔力も見える。

 見えれば、切ることも出来る。

 術を切れる剣士など片手で数えるくらいしかおらん。

 

 俺は強かった。

 順調に塔を上っていった。

 勝てない敵もいたが、その場合はなんとか逃げて対策を練った。

 罠を使って、弱点を探って、自分を鍛えて、もっと強く、強くなって、もっと先へ、先へ、先へ。

 

 順調だった、俺は強かった。

 

 ……あの試練に気付くまでは。


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