雨シチュの恋愛VR(お題・雨)

 傘を忘れた女子高生の私にクラスメイトの男子高生が並ぶ。

「送っていこうか?」

「ありがとう」

 お礼を言って傘に入る。肩の触れ合う距離に心臓が鳴った。


「きゃあ!!」

 夕立の街を女子大生の私が駆ける。髪も服もびしょ濡れ。カフェの軒先で、ハンカチで身体を拭いているとドアが開いた。

「中で雨宿りしませんか?」

 バスタオルを手に青年マスターが顔を出し……。


「何で、同じアバターなのよ!」

 声を上げる私に、さっき相合い傘をした男子高生が手を翳す。手のひらに浮かんだのは私の口座の残高。

「別のアバターを借りるには、金額が足りませんでした」

「この後、OLで『雨に降られた彼氏の部屋でムフフ』VRもしたかったのに……」

「それは、お付き合い出来かねます」

 アバターを動かしている、私の養育AIが顔をしかめる。

 閉鎖空間に限られた資源。厳しい人口管理がしかれたドーム都市では恋愛なんて夢、幻だ。

「貴女に相応しい、素晴らしい遺伝子を持つ冷凍精子を吟味しますから」

 慰めてくるアバターに、私は空を塞ぐような雨を見上げて溜息をついた。

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