〈機械仕掛け〉は謡う

やー、面白かった。

本作は古参兵《ベテラン》の〈俺〉と、その軍事作戦行動上のパートナーである<機械仕掛け>との交流を描く作品。〈機械仕掛け〉はartificial intelligenceすなわち人工知能で、両者は協力して任務を遂行していく。

まず本作を貫いて面白いのが多用される「ルビ」だ。初めはその量に驚くくらいなのだけれど、発想豊かな「ルビ」が登場し、また物語の中で確かに意味をもって配置されている。創意工夫された「ルビ」の多用、見ていて本当に楽しめた。これはぜひ一見していただきたい。

本作では、人工知能〈機械仕掛け〉の出生の由来が明らかにされていく。〈機械仕掛け〉は可愛らしいAI。「彼女」は何を考え、どう行動していくのか。軍人の<俺>や、その他の登場人物とのかかわりのなかから描かれる。

AIって、自我があったとしても、どこか融通がきかなかったり、人間に反旗を翻すパターンが多い。本作ではそうはならず、AIが人間と交わり成長したり、周囲に馴致していく(もちろんこれにはそうなりうる理由があるのだが)。こういうスタイルの小説って今まであまり読んだことがなく、そうした点が楽しめた。身近に感じられるAI、という感じ。

本作は3部構成の第2部にあたるという。第2部を読んでから第1部を読んだが、そのような順に読んでも問題ないだろう。

来るべき第3部も楽しみにしています。