滝壷の流れは何に譬えられるだろうか

面白かったです!
滝壺にいる蓮太郎。彼のところには色々なモノが流れ落ちてくる……。


本作の魅力は、なんといっても舞台の切り取り方だ。劇団の脚本・演出を手掛けていたという筆者の「舞台設定」は極めて洗練されている。
滝からいろんなモノが落ちてくるのだけれど、なかには実際にはあり得ないモノが落ちてくる。あるいは、普通に実際に即して落ちてくる。これらは読んでみてのお楽しみだが、主人公は時に拾ったり、時に地味にスルーしたりする。割と、意外に、スル―する(このあたりめちゃ面白い)。何が可能で何ができないのか、設定の妙が冴えわたる。

そんななかでも、落ちてきたモノたちが、次第に蓄積して物語を紡いでいく。意外なところで、意外なやつがひょっこり現れる。主人公は滝に落ちてくるモノに対して受け身かと思いきや、そのなかでじわり、と自分の色をだして物語をリードする。

出会いがあると同じく、別れもある。河の流れに任せて去っていく。ゆく川の流れは絶えずして、世の中にある人とすみかもまた同じように流れていく。

それでも、本作で立ち現れて去って行った連中は、またどこかで蓮太郎と相見えるような気がするのだ。そんな気がする。これからのあれこれに想いを馳せる。読むと、未来に向けての不思議な余韻が残る。

ぜひ本作を読んで、本作ならではのこうした余韻に浸ってみてはいかがだろうか。